またトラ(3)-トランプ氏の復帰直後の大統領令―
マッキンリーはデナリ、エベレストはチョモランマだ!
1) はじめにー北米最高峰デナリをマッキンリーに名称変更するー
米共和党のドナルド・トランプ氏が第47代大統領に就任すると、「掘って、掘って、掘りまくれ」の方針で地球温暖化対策のパリ協定からの再離脱など、バイデン前政権の政策をひっくり返す数多くの大統領令を矢継ぎ早に署名した(写真1左;資料1)。「米国第一」のスローガンを掲げ、「数百万の犯罪外国人を送り返す」や「性別は男性と女性のみ」をはじめ、「パナマ運河の管理権やグリーンランドの獲得に向け、軍事力の行使を排除しない」(資料2)発言にも現れているように、相手の事情を顧みない一方的なトランプ節全開の大統領令からは大国の「寛容さ」は微塵も感じられないばかりか、予想されていたことではあったが、その数40ともいわれる大統領令が伝えられると、そこまでやるのかと唯々驚かされたのであった。しかも、最後のおまけは、大統領令に署名したペンを会場の聴衆に向かって、さも得意げに投げる彼の姿(写真1右;資料3)だった。それは、政治家の風貌というよりも芸能人のパフォーマンスに似ているように思われた。
写真1 (左)トランプ氏復活初日に出された大統領令(NHK)と(右)大統領令に署名する際に使ったペンを支持者たちに投げるトランプ米大統領(ロイター)
資料1
トランプ新大統領始動 大統領令次々署名 パリ協定離脱など
2025/01/21
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250120/k10014698441000.html
資料2
トランプ氏が記者会見、グリーンランドやパナマ運河の獲得に軍事力行使の可能性排除せず
2025/01/08
https://www.cnn.co.jp/usa/35228004.html
資料3
この世は私のためにある
2025/1/23
https://mainichi.jp/articles/20250123/ddm/002/070/028000c
今回のブログでは、トランプ氏が「北米最高峰デナリをマッキンリーに名称変更する」とした大統領令を主に取り上げる。というのは、彼と同様な関税政策を進めたかつてのマッキンリー大統領の名前を復活させようとするもので、北米最高峰デナリの名前関する地元住民の崇拝の念を無視していると思われるからであり、そのことは世界最高峰の地元名であるチョモランマがエベレストと一般的に呼ばれている風潮にも通じるので、是非とも再考してほしいとかねがね考えているからである。
今回のブログの内容は以下の通りです。
1)はじめにー北米最高峰デナリをマッキンリーに名称変更するー
2)デナリとチョモランマの山名について
3)まとめーマッキンリーはデナリ、エベレストはチョモランマだ!ー
4)追記―ボトム・アップ思考ー
5)追記の追記―トランプ氏の挙動とその影響―
2) デナリとチョモランマの山名について
A) 北米最高峰デナリ
日本人にとってデナリ山は国民栄誉賞を受賞した冒険家の植村直巳さんが亡くなった山として知られる。1984年2月13日、北米最高のデナリ峰への冬季単独登頂に成功後、消息を絶った植村さんの遺品には 「親愛なるナオミ・ウエムラへ!デナリへ登るナオミを神が守りたもうことを」(資料4)の言葉が刻まれていたことが示すように、デナリの名称は「高きもの」や「偉大なもの」を指すアラスカ先住民の言葉である。デナリ山はマッキンリー第25代大統領(1897~1901年)の名前にちなんで呼ばれていたところ、オバマ第44代大統領が2015年に地元アラスカ州の求めに応じて正式名称にしたのである。ところが、今回のトランプ氏の大統領令でそのデナリ山の名前を再びマッキンリーに戻すというのだ。
資料4
「親愛なるナオミ・ウエムラへ…
2025/01/22
https://mainichi.jp/articles/20250122/ddm/001/070/085000c
写真2 (左)北米最高峰デナリ(NatGeo)と(右)世界最高峰チョモランマ(GoogleEarth)
トランプ氏は1月20日の就任演説で、マッキンリー大統領を「関税と才能を通じて米国の財政を豊かにし、(彼は1901年に暗殺されたため、当時の副大統領から大統領に昇格した)後任のセオドア・ルーズベルト第26代大統領がその資金でパナマ運河建設などの偉業を成し遂げることができた」(資料5)とたたえた。トランプ氏はマッキンリー大統領を繰り返し称賛しており、手本の一人にしていることがうかがえる。トランプ氏が就任演説で「米国の黄金時代」の始まりを宣言したのには、関税によって米国を豊かにしたマッキンリー大統領が念頭にあったようで、「北米最高峰デナリをマッキンリーに名称変更する」大統領令に結びついたのではなかろうか。そして、ルーズベルト大統領時代のパナマ運河建設から「パナマ運河の管理権を獲得する」という一方的な大統領令へと展開していったことをうかがわせる。さらに想像をたくましくすると、2度にわたり暗殺に見舞われたトランプ氏であってみれば、暗殺されたマッキンリー氏に憐みの感情を抱くことは必然であろうし、大統領就任演説でも暗殺未遂事件に触れ、「米国を再び偉大にするために神に救われた」と主張したのであろう。もともと「関税男」を自称するトランプ氏であってみれば、彼の手本とするのは高関税政策を用いた「保護主義のナポレオン」とも呼ばれたマッキンリー大統領であり、そのため、トランプ氏はデナリをマッキンリーに再改名することで、トランプ氏自らが今後行うであろう各国に対する関税政策をバック・アップしたいと考える彼一流の狙いがあるものと推測する。
資料5
トランプ氏、手本はマッキンリー大統領 1890年代関税と領土拡張
2025/01/25
https://mainichi.jp/articles/20250125/k00/00m/030/073000c?utm_source=article&utm_medium=email&utm_campaign=mailyu&utm_content=20250125
写真3 (左)マッキンリー第25代、(中)オバマ第44代、(左)トランプ第47代各大統領(Google)
B) 世界最高峰チョモランマ
ネパールと中国のチベット自治区にまたがる世界最高峰チョモランマは現地名で「大地の母神」を意味するとのことだが、一般的にはエベレストと呼ばれている経緯(資料6)は、長くなるが、次の通りである。
1856年3月、インドの測量局長官アンドリュー・スコット・ウォー氏は当時無名だったピーク15の標高が8840mであることが判明し、おそらく世界最高峰であるという書簡をイギリスの王立地理学協会に送付した。この書簡の中で、ピーク15の名称を「地方での呼び名は数多くあるだろうから、どれか一つを選ぶのは難しいので、尊敬する前長官のサー・ジョージ・エベレスト大佐 (Colonel Sir George Everest)の名前を最高峰の名称にする」ことを提案した。しかし、エベレスト氏自身は「すべての地形に現地での呼称を採用するよう」に主張していたことに加えて、彼の名前がヒンディー語のインドの人々には難しい発音であるので反対し、王立地理学協会にその旨を書き送ったが、1856年9月の王立地理学協会が「エベレスト」の名称を受け入れ、インド政庁も承認したとのことである。
ピーク15の名称については、ネパールに駐在した外交官ブライアン・ホジソン氏が1856年に「デヴァドゥンガ」(Devadhunga) だと唱え、1907年にはインド測量局の技師ナタ・シン氏が「チョー・ルンブ」(Chho Lungbhu) と呼んでいることを記録している。1909年にはエベレスト登攀のための情報収集をしていたグルカ連隊の将校チャールズ・グランヴィル・ブルース氏がクンブ地方の出身のシェルパから「チョモ・ルンモ」(Chomo Lungmo) という名前を聞いている。他にも19世紀の終わりには「チョモカンカル」(Chomokangkar) というのが山の名前であるといわれたこともあったが、インド測量局は一貫して「エベレスト」の呼称を使い続けた。1950年代に入って中国政府がチベット名「チョモランマ(Chomolangma、珠穆朗瑪)」を採用し、その意味は「世界の母なる女神」であるという。さらにネパール政府は1960年代から「サガルマータ(世界の頂上)」という名称を提唱している。
資料6
https://ja.wikipedia.org/wiki/エベレスト
3) まとめーマッキンリーはデナリ、エベレストはチョモランマだ!ー
15世紀末のコロンブス以来、ヨーロッパ人が到達した大西洋の対岸にある土地は、アメリゴ=ヴェスプッチ氏によって「新大陸」であると証明され、その名によって1507年に「アメリカ大陸」といわれるようになった。アメリカには北アメリカと南アメリカがあり、合衆国のみがアメリカではない。なぜなら、北アメリカにはカナダやメキシコなどがあり、南アメリカにはブラジルやチリなどもあるからだ。だから、トランプ氏のスローガンである「MAGA;Make America Great Again」のアメリカは全アメリカのことではなく、明らかに合衆国のことであるので、彼の「アメリカ第一」は「合衆国第一」のことである、と解釈できる。従って、トランプ氏の「メキシコ湾をアメリカ湾に」との主張であるが、「アメリカ湾」ではなく「合衆国湾」のことになる。これもトランプ氏一流の新参者の一方的な言いがかりのように思われる。世界地図を見ると、メキシコ湾は日本海や地中海よりも大きいので、湾というよりも海と呼ぶのにふさわしいようだ。
さらに、メキシコ湾周辺の合衆国の各州の歴史を振り返ると、テキサス州は1845年に、カリフォルニア州は1850年に、そしてニューメキシコ州は1912年に、いずれもメキシコから合衆国に併合されており、かつてはそれらのメキシコ領土だった州が囲んでいた地域に「メキシコ湾」の呼称をあたえていたことは歴史的に正当性があることは自明であろう。トランプ氏の「メキシコ湾をアメリカ湾に」や「カナダを51番目の州に」などの一方的な主張は新たな合衆国の侵略性を示すものに他ならないと思うのだが、どうだろうか。これらがはたしてトランプ氏が唱える「常識の革命(Revolution of Common Sence)」なのであろうか。トランプ氏の常識は国際的な一般常識とはかなりかけ離れているようだ。
「領土とともにその土地古来の名称には不可侵の原則」があると考えたい。新参者はそれを一方的に犯すことはできないのではなかろうか。従って、「高きもの」や「偉大なもの」を意味するデナリや「大地の母神」を指すチョモランマの神聖な山に対する地元の人たちの思いをないがしろにすることはあってはならない。北米最高峰のデナリや世界最高峰のチョモランマにはもともと地元名があり、新参者がそれらを一方的によそ者のマッキンリーやエベレストに置き換えることはできない。だから、今回のブログの結論は「マッキンリーはデナリ、エベレストはチョモランマ!」だ。
かつてはしばしば洪水に見舞われた琵琶湖の「ビワ」は、もともとの住民であるアイヌ系の縄文人の言葉では「水が出る、湿った土地」の意味があるといわれ、2000年9月の東海地方の洪水被害をうけた西枇杷島町の「ビワ」と共通性があると思われる(資料7)。楽器の琵琶と果物の枇杷を当て字にしているが、語源は同じであろう。それにしても文字を持たなかった先住民の表現を生かして「琵琶湖」と名付けているのは評価できるが、漢字ではなく、カタカナの「ビワ湖」で良いのではないだろうか、との思いがある。つまりかつての住民は、われわれが失いかけている地域環境の特徴を把握し、かつそれへの心構えをしていたことを示しているようだ。寺田寅彦(1934;資料8)が「昔の人間は過去の経験を大切に保存し蓄積してその教えにたよることがはなはだ忠実であった。過去の地震や風害に堪えたような場所にのみ集落を保存し、時の試練に堪えたような建築様式のみを墨守して来た」と述べているように、地域環境と共存してきた住民の伝統の知恵を忘れてはならない。
資料7
琵琶湖水位考
https://glacierworld.net/regional-resarch/japan/biwalake/lake-biwa/
資料8
寺田寅彦(1934)天災と国防
https://www.aozora.gr.jp/cards/000042/files/2509_9319.html
世界最高峰の名前としては、前述したクンブ地方の出身のシェルパの「チョモ・ルンモ」(Chomo Lungmo)とチベット名「チョモランマ(Chomolangma、珠穆朗瑪)」は、前者は南側のネパールから、そして後者は北側のチベットから眺めた地元住民の尊称で、それぞれの名前には共通性が高いと解釈できる。当時の測量局長官のエベレスト氏は「すべての地形に現地の呼称を採用する」と主張していたので、彼の主張に反して後任のウォー長官によって彼の名前が世界最高峰につけられ、おそらく彼は当惑したかもしれない。そこで、エベレスト氏の意を生かして、ネパールの鎖国が解け、前記の現地名「チョモ・ルンモ」と「チョモランマ」が判明した時点で、イギリスの王立地学協会は世界最高峰の名前を再検討すべきであったのではなかろうか。
中国政府が世界最高峰の名前として現地名の「チョモランマ」を採用しているのは評価できるが、その中国政府が新疆ウイグル自治区で、少数民族ウイグル族の文化や歴史に由来する地名を党のスローガンのような名前に次々と変更しているのだ。国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」(資料10)は2024年6月、2009~23年の間に新疆ウイグル自治区で変更された村名に関する報告書を発表し、630もの村の名前が宗教、文化、歴史的な理由で変更されていたと指摘した。イスラム教に関連した地名や、ウイグル族によってつくられた国や指導者にちなんだ地名は消え、「幸福」や「団結」「和諧」などの地名が増えたという。地名を変更する理由については、中国民政省直轄の研究所が2021年に公表した「我が国の地名標準化」という通知が関連している可能性が高く、この通知で「民族の団結を阻害するような地名や、国家の指針や政策に反する地名は変更する必要がある」としているためだ。「土地古来の名称には先住者の環境認識の知恵や思いが秘められている」ので、やはり、新参者はそれを一方的に変更することはできないことを繰り返しになるが記しておきたい。
日本でも特に北海道では先住民のアイヌ民族によって名付けられた多くの地名を大和風に一方的に変えてきた歴史があるのは問題があろう。例えば、アイヌの人々が「カムイミンタラ(神々が遊ぶ庭)」(資料9)と畏敬の念をこめて呼んでいた山塊を「大雪山」と漢字名にしているのがその一例である。アイヌ先住民の地名という文化的遺産を勝手に変更することは許されないのではなかろうか。そこで、日高山脈の多くの山名がアイヌ語で「ヒグマの転げ落ちる所」のカムイエクウチカウシ山や「回遊する川」のペテガリ岳のようにアイヌ名をカタカナ表記にしていることを参考にして、「大雪山」などの北海道の大和風地名の再検討については道産子の人たちの知恵の出しどころに大いに期待したい。
資料9
大雪山 〜カムイミンタラ〜
https://www.daisetsu-kamikawa-ainu.jp/story/daisetsuzan/
資料10
歴史的地名を中国共産党式に変えられたウイグルの村 口を閉ざす村人
2025/01/30
https://mainichi.jp/articles/20250129/k00/00m/030/278000c?utm_source=article&utm_medium=email&utm_campaign=mailasa&utm_content=20250131
4) 追記―ボトム・アップ思考ー
山名が「マッキンリーはデナリ」ということは、トランプ氏のようにトップ・ダウン的に一方的に上からの意向で決めるのではなく、また同様に、「エベレストはチョモランマ」の視点も地元住民の尊称を生かそうとするボトム・アップ的な下からの見方であるので、私がこれまで考えてきたボトム・アップ的な下からの見方や現地主義の視点をここで記しておきたい。
私は1995年春、あの阪神・淡路大震災の後、13年間つとめた琵琶湖研究所から新設の滋賀県立大学環境科学部に移った。その際、「私の環境学」の基本として「トップ・ ダウンに流されず、ボトム・アップを重視するユニークな大学」になったらいいなーと考えて、新天地に向うー私の決意―を環境科学部の年報第1号(資料11)で表明した。私の決意の原点は「Think globally, act locally」の従来の標語を逆転させて、「Act locally, think globally」の地元からの行動、つまりボトム・アップを重視する琵琶湖研究所で行ってきた経験だった(資料12)。
そもそも私は、県大への赴任挨拶状で次のように述べた。「この春から、私は滋賀県立大学にきました。新設の大学で、ご覧のように環境の名前が3つもつくところにいます(環境科学部環境生態学科地球環境大講座)。そこで、さらに「環境」を冠した「環境フィールド・ワーク」や「自然環境学」、「環境地学」などを新入生たちとやりますが、いわゆる冠講座的なものにはしたくありません。そのための環境整備の1つとして、サロン・ワーク にはできるだけ力点をおき、自由闊達な根っこの議論をもとに、建設的なる批判精神の酒を発酵・醸造していきたい、と考えています。ぜひとも、私たちのサロンにお立ち寄り、一献を傾け、談論風発していってください。ところで、これまで勤めていた大津の琵琶湖研究所より淀川流域を北進しましたので、「琵琶湖・淀川流域」の上下流(南北)問題ではさらに「北の立場」にも、また「地球環境」ではネパールなどでのこれまでの経験から「南の立場」をも重視し、南北全体を観ていきたい、と考えています。琵琶湖・淀川流域の北の立場は、地球環境の南の立場に通じるのではないか、と見ています」。国際的なシンポジウムなどで、先進国北側の代表が「持続的開発の時代から持続的管理の時代へ」などと発言しようものなら、開発途上国南側の代表は「いぜんとして持続的開発の時代である」 ことを強く主張して、会議は平行線をたどることがあるが、南側も北側も納得できる論理はどのあたりにあるのであろうか。
発展途上国と先進国とで考え方の異なる概念、つまり「持続的開発」でも「持続的管理」でもなく、南側も北側も納得できる概念として「持続的環境」の創造が重要なのではないか、と考えている。企業的発想の「持続的開発」とか、行政的発想の「持続的管理」という概念それ自体は目的ではなく、「持続的環境」を創造するための手段である、と解釈できる。「環境」というのもあいまいさの残る表現だが、ボトム・アップ思考からみると、ヒトだけでなく環境を構成するすべての構成員が持続的であること、それが目的になる、と考えたい。そう観れば、発展途上国の南側も、先進国の北側も「持続的環境」という共通性があるので、歩みよれる地盤ができるのではあるまいか。そのためのひとつの鍵は、前述したように、日本でも去年からはっきりしてきた新潟県や沖縄県などの原発や基地問題などを問う一連の住民投票行動にみられる、民意を実現するためのボトム・アップ方式であろう。今年は、産廃施設問題でゆれる岐阜県御嵩町などでも住民投票が行われることになった。当然のごとく、主人公は、企業的「開発」者や行政的「管理」者というトップ・ダウン的な思考を得意とする人たちではなく、ボトム・アップの発想をする住民なのである。そんなボトム・アップ思考の大切さを、学生とのつきあいのなかで再認識している今日この頃である。
資料11
環境への取り組みかたー私の決意―
https://glacierworld.net/home/my-approach-for-environmental-issue/
資料12
琵琶湖の雪
https://glacierworld.net/regional-resarch/japan/biwalake/
さらに、そのための具体的な教育方針を「私のフィールドワーク」(資料13)と題して表明した。言ってみれば、阪神淡路大震災や能登半島地震などの自然災害の場合でも、住民にとっては、「Think globally.」が最初にくるのでは決して行動指針にはなりえず、まずはボトム・アップを重視する「Act locally」の方針で行くしかない、のである。
ネパール・ヒマラヤ氷河学術調査隊の正式名称は Glaciological Expedition of Nepal である。英語の略称は”GEN”、直訳すると、ネパールの氷河調査隊。GENだけでは見えないけれど、GEとNの間に”of”が入っている。しかし、メンバーが日本からきている隊なので、GE”to”N(ネパールへの氷河調査隊)であって、GE”of”Nでは英語の表現としておかしいという意見もあった。先遣隊メンバーとしてカトマズ入りしたぼくが調査許可を得るために作った当初のGE”to”Nの計画書では、ネパール外務省での2カ月ちかい交渉でも調査許可がもらえなかったのである。外国人によるネパールへの氷河遠征隊というニュアンスが強すぎたのだろうか。調査許可の交渉のためネパール外務省に日参しているうちに、ネパール人とのつきあいも深くなり、それにつれてネパール語もいけるようになると、考えかたもだんだん変わってくる。時は1973年春、ぼくは大学院の学生であった。
(よし、できるだけ現地主義でいこう。)
ぼくたち、貧乏学生調査隊は、食料や薪などの衣食住をはじめとして、現地のひとびとの協力なしにはやっていけないのだから、好むと好まざるとにかかわらずかなりの部分を現地主義でいかざるをえなかったのである。たとえば薪についても地元の理解が必要で、モンスーン中は「宗教上の理由で煙をだしてはいけない」との申し出があったときも、それでは基地の生活ができないので、地元の村の人びとと何回にもおよぶ協議をおこなったうえで、やっとわたしたちの調査活動を理解してもらったこともあった。英語の表現が少しくらいおかしくとも、GE”of”Nだと、現地主義の感じがでているではないか。GE”to”Nでは、いかにも、よそ者がやっている感じがするし、さらにすすめて、GE”for”N(ネパールのための氷河調査隊)のほうがよかったかな、と考えないでもなかったが---。
ところで、GE”of”Nの計画書にしてしばらくすると、ネパール外務省は許可証をついに発行してくれたのである。そこで、地元の人たちの協力を得ながら、世界最高峰チョモランマのふもとのハージュンに、観測基地を建設した。地元の人によると、地名のハージュンとはシェルパ語で、幸福をもたらす神のすむ平らな土地という意味があるとのこと。ゲン(験、GEN)がよくなりますようにと期待しながら、1973年春、ネパールヒマラヤ氷河調査隊(ゲン;GEN)をスタートさせることができたのであった。
資料13
私のフィールドワーク
https://glacierworld.net/academic-conference/siga-pref-univercity/shiga-univ06/
5) 追記の追記―トランプ氏の挙動とその影響―
立て続けに大統領令を発行するトランプ氏に対しては一方的に攻め立てられる各界から反対する動きが出始めており、今後ともその動きは続くであろう。
まずは就任式翌日の1月21日、トランプ大統領は就任式に合わせた公式行事として首都ワシントンにある大聖堂を訪れた(写真4)際、主教から「性的マイノリティーの人たちの中には命の危険におびえている人たちもいる。移民の大多数は犯罪者ではない。いま、おびえている人々に慈悲の心を持って下さい」(資料14)と諭された。トランプ大統領は、大聖堂を訪れる前日、政府が認める性別は男性と女性の2つの性のみだとする大統領令に署名したほか、不法移民対策のためとして南部国境の非常事態を宣言していて、主教の発言の背景には、こうした政策やこれまでの過激な発言があったとみられる。
写真4 (左)大聖堂を訪れたトランプ大統領夫妻と(左)大統領を諭したマリアン・エドガー・バッディ主教(NHK)
これに対してトランプ大統領は1月22日、自身のSNSへの投稿(写真5)で、主教について「急進左派の、強硬なトランプ嫌いだった。彼女は自分の教会を、品のない形で政治の世界に巻き込んだ」と強く反発し、「私たちの国に入り、人々を殺した大量の不法移民についての言及はなかった。国民に謝罪しなければならない」(資料14)と主教から諭されたトランプ氏は不満たらたらの様子が読み取れる。
写真5 (左)トランプ大統領自身のSNSへの投稿記事(NHK)と(右)チャットGPTによる日本語訳
次いで1月23日、米国で生まれた子供に自動的に国籍を与える「出生地主義」の修正を命じたトランプ氏の大統領令に関して米連邦地裁(資料15)は違憲と判断し、発効の一時差し止めを命じた。トランプ氏が就任初日の20日に打ち出した政策への司法による最初の介入となった。米メディアによると、西部ワシントン州の連邦地裁判事は大統領令を「明け透けな憲法違反だ」と断じた。トランプ氏は記者団に対し「もちろん控訴する」と述べたので、最終判断は最高裁に持ち込まれる可能性が高い。
資料14
トランプ大統領 “慈悲の心”諭した主教に強く反発 謝罪求める
2025/01/23
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250123/k10014700901000.html
資料15
「出生地主義」修正差し止め 米地裁、大統領令「違憲」
2025/01/24
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN23EW40T20C25A1000000/
1月26日、南米のコロンビアが不法移民の強制送還を目指す米軍機の着陸を拒否したが、トランプ米大統領がそれを理由に25%の関税を課すと宣言したので、困ったコロンビアは一転して着陸許可を出した(資料16)そうだ。トランプ流が早くも成功を収めたので、トランプ政権は犯罪者や麻薬の流入が続いているとして、米国と国境を接するメキシコとカナダに2月1日からそれぞれ25%の高関税を課すと脅している。またロシアのプーチン氏は「米国は先進国。前の米大統領選でロシアが米国有権者の選択を左右していると真面目に受け止めている米国人など居ないはずだ。大国らしく、堂々と振る舞うべきだ」と諭したのに続き、中国共産党政治局員兼外相の王毅氏も1月24日の電話協議で、米国のルビオ新国務長官に「大国は大国らしい振る舞いを」と注文をつけたそうだ。
ドイツのアンゲラ・メルケル前首相が「Freiheit」(自由)と題した回顧録を出版し、そのなかで、トランプ氏の人物評について「あらゆることを不動産事業家の視点から考え、国と国も競争関係にあると考えていた。協力が多くの人に繁栄をもたらすとは信じていなかった」(資料17)と述べ、彼とは価値観が異なるので、関係構築に苦慮したことを指摘している。メルケル前首相が指摘する相互の協力が多くの人に繁栄をもたらすこと、まさに「Make America Democratic Again」になることをトランプ氏に理解してもらうとともに、「またトラ」と地球環境(資料18)で述べたように、地球温暖化の進行で「南太平洋の島国ツバル」や「ネパールの環境難民」などの世界中の人々に被害が発生している不条理な状況を正すことを目的として、すでに逮捕状がだされているロシアのプーチン氏やイスラエルのネタニヤフ氏、そしてミャンマーのミン・アウン・フライン司令官のケースと同様に、地球温暖化をいとわずに貿易戦争に邁進し、環境弱者に深刻な影響をさらにあたえる可能性が高いトランプ氏の強者の論理の不当性を国際刑事裁判所などに訴える局面に来ていることを改めて確認するとともに、「またトラ」から「まだ(Make America Democratic Again.)トラ」になることを再び希望しておきたい。
資料16
米国は「バナリパ」か
2025/01/30
https://mainichi.jp/articles/20250130/ddm/002/070/040000c
資料17
独メルケル前首相回顧録出版 プーチン大統領 トランプ氏を語る
2024/11/27
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241127/k10014650431000.html
資料18
「またトラ」と地球環境
https://glacierworld.net/home/trump-and-global-environment/
PS
トランプ大統領は1月29日、反ユダヤ主義的な行動をした留学生は国外に追放する大統領令に署名した(資料19)そうだ。イスラエルによるガザ地区への攻撃に抗議してデモに参加した留学生も対象になるので、大学や学校での表現の自由を制限することになるとして波紋を呼んでいる。また同日、教育に関する大統領令にも署名し、多様性に関する授業など「急進的で反米的な思想教育」を行う学校には拠出する資金を削減するとし、教育現場の萎縮につながるという反対意見も出ている。これらの個人の思想や教育の自由を制限する彼の政策を診ても、第4章の追記―ボトム・アップ思考ーで述べたように、地域住民の見方(現地主義)を重視する私の視点とは基本的に異なることがますます明らかになってきた。
「追記の追記」のこの章でPS(追伸;Postscript)として続けて書くのは同語反復になるので、どうかとも思うが、トランプ氏の連日の問題挙動からは依然として目が離せないので、やはり、トランプ氏の今後の動向にも注目していくことにする。
資料19
トランプ氏 “反ユダヤ主義の留学生は国外追放” 大統領令署名
2025/01/30
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250130/k10014707821000.html
0 件のコメント:
コメントを投稿