2016年2月18日木曜日

「ネパール2016年春」計画

みなさまへ

「ネパール2016年春」計画について

三寒四温なのでしょうか、経済同様に天候も大きく変化していますが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
さて私は、1週間後にカトマンズに出発し、添付資料1の「ネパール2016年春」計画の通り、2月末から6月初めまでカトマンズ大学の講義や国際山岳博物館の展示更新、さらに2015年ネパール地震の影響調査などを行う予定てす。昨春はカトマンズ大学の講義中に地震が起こったため、大学が休校になり、講義後半の3割程度の授業ができませんでしたので、今春再び講義を行うことになりました。個人的なことですが、昨年は6月に帰国し3度目の心臓手術をしまして、体調が回復したとはいえ、まだリハビリ中ですので、現地では十分に体調管理に努め、今春の計画を遂行したいと思っています。

カトマンズ大学の講義(*1)の主な内容は、1965年以来50年間の調査結果に基づいた「ネパール・ヒマラヤの環境変化と課題」です。昨年の受講学生は氷河学を学ぶ修士課程1年目の10人で、5人が留学生(パキスタン3名、インド2名)で、ネパール人5人のうち2人が山岳民族でした。今年の講義も3月~5月を予定し、新入生としてネパール人学生4名に、インド人留学生3名が加わり、また昨年の学生は、インド人留学生2名が帰国したとはいえ、他の8名が残っているとのことです。

講義はOpen Lecture(添付資料2)で、学生はじめ誰もが、講義の内容を見ることができるようになっています。また、レポート提出や講義外の質疑などはメイルで行いますので、紙資料は使いません。講義は、毎週月・水・金の3回、午前中2時間ですので、全部で70時間ほどの内容を用意しました。これまでの50年間に撮りためた12万枚ほどの写真データベース(*2)を利用して、ヒマラヤがかかえる環境課題の実態を学生たちに理解してもらうよう努めます。さらに体調が良ければ、ランタン谷の調査を学生と一緒に行い、昨春のネパール地震被害の実態と課題を明らかにしたいと思っています。

ところでネパールの現況ですが、地震後の昨秋発布された新憲法に関する南北対立のため、インド側の国境が閉じられ、地震災害の復興・救援物資が滞っていましたが、ようやく最近、国境封鎖の問題解決の兆しがみえてきたということですので、これからは復興計画が加速していくものと期待しているところです。滞在中は復興状況をつぶさに現地観察し、復興実態の課題などについて講義の中でも学生たちとディスカッションしていきたいと思っています。

最後になりますが、今年はアベノミクス的な日銀の思惑が外れ、経済環境が乱高下しています。円高になれば、輸出産業は困るでしょうが、ポケットマネーのヒマラヤ旅の身にとっては両替率が上がり、助かるのだが、と個人に直結する経済環境にも思いをはせている今日このごろです。

それでは、皆さまもご自愛のうえ、ヒマラヤに来られるときには、ぜひご一報ください。ナマステ!

参考資料

(*1KU  LECTURE  2015 & 2016 http://environmentalchangesofthenepalhimalaya.weebly.com/

(*2) 写真データベース ; https://picasaweb.google.com/115786369284765082831?showall=true


添付資料1 

「ネパール2016年春」計画
主な内容は、1)カトマンズ大学の講義、2)氷河分科会での招待講演(7th National Conference of Science and Technology Organization)、3)ポカラ国際山岳博物館の展示更新および4)ランタン谷における2015年ネパール地震の影響調査ですが、詳しい内容と日程は下記スケジュールのとおりです。
カトマンズ大学の講義は、昨春3月から5月の予定で行ったところ、4月25日に地震が発生し、それ以降大学が休校になり、後半の3分の1程度が残ったため、今春も講義を行うことになりました。今春は新しい修士課程1年目の7学生(ネパール人4名、インド人3名)が対象ですが、昨年の受講生8名もいますので、体調が良ければ、ランタン谷の現地調査もしながら、昨年の地震災害の特性を明らかにするとともに、ヒマラヤの環境変化に関する具体的課題と対策について学生たちとフィールでもディスカッションしたいと思っています。

スケジュール
往路
225日 D7533便 関西空港11:00 (AirAsiaContact number 1)→クアランプール17:00
226  D7197便 クアランプール17:35 →カトマンズ19:45 (AirAsiaContact number 1)
226日~29 日  カトマンズ滞在 Sun Rise Cottage Contact number 2

(1)  カトマンズ大学講義
http://environmentalchangesofthenepalhimalaya.weebly.com/
期間:31日~531(Contact number 3)
テーマ:Environmental Changes of the Nepal Himalaya
1)  Introduction
1-1. Personal history of my student era
1-2. Student’s research activities in Nepal Himalaya
1-3.  Activity of the international cooperation
2)  Philosophy of Nature
2-1. The present is the key to the past.
2-2. Academic Fields
2-3. Environmental Preservation
2-4. Earth History and Great Mobile Belt
2-5. Glacial History of the Himalayas
3)  Environmental Issue
3-1. Glacial Phenomena
3-2. Machapuchari Studies
3-3. Eco-tour
3-4. Miscellaneous Phenomena and Concluding Remarks
(2)  招待講演Environmental Changes of the Nepal Himalaya;
 329日~31; 7th National Conference of Science and Technology Organization, Nepal Academy of Science and Technology (NAST)
(3)  国際山岳博物館の展示更新
51日~10日 ポカラ滞在 Dragon HotelContact number 4
(4)  ランタン谷における2015年ネパール地震の影響調査
5月後半 (学生との合同調査)

復路
61日~3日 カトマンズ滞在 Mr. Lhakpa’s houseContact number 5
63  D7197便  カトマンズ21:00 クアランプール 64 04:00
64 D7534便  クアランプール15:00→関西空港 22:25

Contact number
1)    AirAsia Tokyo Office 0120-963-516 ; 0570  200 858
2) Sun Rise Cottage 977  14256850
3) Dr. Rijan Kyastha 977 98511 35959 ; 977 1 6614477; 977 11 661399 Extension 1209
4) Dragon Hotel 977 61 460391 ; 977 98460 60205
5)   Mr. Lhakpa’s house +977 1 4017147 ; 977 98510 24235
その他 Mr. Takashi Miyahara: +977 1 5526821 ; 977 98184 78245

PS1 「ヒマラヤ地震博物館」と「ヒマラヤ災害情報センター」構想
ネパールの地震被害の復興は、インド都の国境が閉鎖されたためもあり、必ずしも順調には進んでいるとは言えませんが、やっと国境問題に解決の兆しがみえてきましたので、復興過程が加速してきた段階で、地震で明らかになった課題・対策などを将来に活かすため、地元の方々とカトマンズに「ヒマラヤ地震博物館」*やランタン谷に「ヒマラヤ災害情報センター」を設立するための話し合いを進めてきたいと思っています。
http://aach.ees.hokudai.ac.jp/xc/modules/Center/activity/lecture/8th.html

PS2 体調の管理とランタン谷調査
個人的なことですが、昨年は狭心症(心筋梗塞かも)を再発し、主治医の京都の斉藤惇生診療所長の紹介で、京都三菱病院の三木真司院長にカトマンズ大学の講義出発前2度の手術をしていただき、また帰国後3度目の手術をおこないましたので、心臓の9ヶ所にステントが入っていますが、おかげさまで体調はすこぶる快調になりました。現地での体調管理はもとよりですが、この状態が持続すれば、講義後半には学生とネパール・ヒマラヤのランタン谷調査を行い、2015年のネパール地震被害の実態と課題を明らかにすることができるのをひそかに楽しみにしているところです。

PS3 災厄への対応
今回のヒマラヤ調査行に関しても、従来同様不慮の事態を想定し、保険(海外旅行・団体登山・エアアジア)をかけますが、高齢者の3ヶ月以上(今回は101日間)の海外旅行保険は63710と高額(下記PS4の飛行機の割安切符代よりも高い!)になりました。次回からは旅行(従って保険)期間を3ヶ月以内にすることがライト・エクスペディションにとって費用を安くするために必要になるでしょう。ただしPS2で述べたように、心臓手術などをした人は疾病補償に関する保険の制約が厳しいとのことです。
また、不慮の事故に見舞われた際、現地の大学ないし病院に検体として提供することを、昨年の遺書に書きましたので、カトマンズで検体に関する情報を収集したところ、日本とは違って、ネパールでは検体数が充足しているので、検体申請は歓迎されないことが分かりました。そこで、その点は今回の遺書からはずし、次の遺書を残すことにします。“現地では遺体を荼毘にし、地元民がするように、水葬にすること。日本では、死亡通知は出さずに、葬式は内々で行い、 戒名などは不必要、また何回忌などもしないように。”

PS4 飛行機の割安切符
今回の飛行機もエアー・アジアで半年前に早期の予約をしましたので、割安切符が取れました。飛行機代は関空・カトマンズ往復が41378(関空・クアランプール往復¥17750、クアランプール・カトマンズ往復¥23628)です。上記と同一ルート・同一飛行機を出発2か月前に予約した友人は¥76700だったので、いかに早期購入が有利であるかを示しています。ただ、ぼくのように「サンデー毎日」の人でないと、早期購入による格安切符の恩恵にはあずかれないのかもしれません。さはさりながら、これも、老人力の成せる業とは思っているのですが。

PS5 アディカリさんの2回忌
宮沢賢治などの多くの日本文学をネパール語に翻訳・紹介するとともに、日本・ネパール相互関係の詩をヒマラヤ文庫としてネパール語で出版してきたチェトラ・プラタップ・アディカリさんが亡くなられて今年で2年目になります。昨年の1回忌のときは地震が発生したため、法事を行うことができませんでした。そこで、今春は2回忌が営まれる予定ですので出席したいと思っています。その際、親子二代にわたり日本とネパールの架け橋になり、現在は地震被害の支援を行っている息子さんのアジャル・恭子夫妻に再会できるのが楽しみです。

PS6 PassionMissionAction
今年は75歳になり、いよいよ後期高齢者の仲間入りですので、20代にヒマラヤを最初に訪れた時の青雲の志は遠くになりにけりですが、せめて当時の“PassionMissionAction”の気概を思いだしながら、これまでの半世紀にわたるヒマラヤ通いでお世話になったネパールの方々への恩返しをしてきたいと考えています。


添付資料2 

カトマンズ大学の講義(2015/2016

はじめに
カトマンズ大学の講義に関しては、助教授の旧友リジャン・・バクタ・カヤスタ助教授が「講義をしに来ないか」と誘ってくれましたので、学生と議論をしていくなかで、これまでお世話になった方々への恩返しをしたいと考え、申し出をありがたく引きうけました。キャンパスはカッコーが訪れる素晴らしい田園地帯でした(写真1)。
カトマンズ大学の講義の主な内容は、1965年以来50年間の調査結果に基づき、「ネパール・ヒマラヤの環境変化と課題」で、2015年3月初めからはじまりました。当初の受講学生は氷河学を学ぶ修士課程1年目の10人で(写真1)、5人が留学生(パキスタン3名、インド2名)で、ネパール人5人のうち2人が山岳民族でした(写真2)。今年の講義も3月~5月を予定し、新入生としてネパール人学生4名に、インド留学生3名が加わっているとのことです。
私は1965年以来、ネパール・ヒマラヤの氷河を中心にした山岳地帯の環境変化を調査してきましたので、50年間の「Environmental Changes of the Nepal Himalaya」が講義のテーマになっています。そのため、その間に撮りためた12万枚ほどの写真資料(末尾の参考資料3)などを利用して、学生たちにヒマラヤが抱える環境課題の実態を理解してもらうように努めたいと思っています。

 写真1 カッコーが訪れる田園地帯のカトマンズ大学。  


写真2 修士課程1年目のj受講学生たち。

講義の進め方
講義のホームページ(写真3)は、Open Lectureの考えのもとに、学生をはじめ誰でもが、講義の内容(写真4)を事前に見ることができるようになっています。また、レポート提出などはメイルで行うなど、紙資料は使わないペーパーレス講義です。講義は、毎週月・水・金の3回、各回午前中2時間ですので、全部で70時間ほどの話題を用意しました。また、体調が良ければ、学生たちとランタン谷の現地調査を行い、雪崩などで被災したランタン村周辺の地震影響の実態と課題を明らかにしたいと考えています。


写真3 講義のホームページ。               

写真4 講義の概要。

写真5 氷河研究室のスタッフ。              

写真6 「Unity in Diversity」の視点と講義室風景。

所属した研究室はヒマラヤ周氷河・気候・災害研究センターでリジャン・・バクタ・カヤスタ助教授のほか3名のスタッフがおり、ヒマラヤ研究のセンターになっているので、パキスタンやインドからの留学生が来ています。
パキスタンやインド同様に、ネパール国内でも多様性の統一は重要テーマですので、講義全体に関係するUnity in Diversityの視点を重要視しました(写真6)。

講義の進行と地震の影響
地震発生の4月25日まで、講義は予定通り進み、講義全体の6割程度まで進んでいました。ところが、地震後、大学が休講になったため、講義のまとめをふくむ後半は残されました(写真7、8)。そこで5月に予定していた残りの講義ができなくなりましたので、今春、ふたたび講義を行うことになり、3月~5月の三ヶ月にわたり講義をする予定になっています。

写真7 4月の予定表(4月25日に地震発生)。     

写真8 講義のまとめ。

また、5月前半には、ポカラの国際山岳博物館の展示更新を行うとともに、後半にはカトマンズ周辺の地震の影響調査と日本から来た調査隊の方々との情報交換をカトマンズで行いました。

今後の予定
3月~5月にはカトマンズ大学の講義を行いながら、地震の復興実態を巡検するとともに、カトマンズには「ヒマラヤ地震博物館」を、ランタン谷には「ヒマラヤ災害センター」を設立する構想をまとめたいと思っています。

参考資料(データベース)
1)時系列ブログ http://hyougaosasoi.blogspot.jp
2)テーマ別ウェブサイト http://glacierworld.weebly.com
3)ヒマラヤなどの写真データベース(12万点以上) http://picasaweb.google.com/fushimih5
4)カトマンズ大学の講義 http://environmentalchangesofthenepalhimalaya.weebly.com/