2015年3月14日土曜日

2015年ネパール春調査(3) 国際氷河会議の終了とカトマンズ大学の講義開始

2015年ネパール春調査(3)

国際氷河会議の終了とカトマンズ大学の講義開始


国際氷河会議の終了

(写真1) 国際氷河会議は氷河学会主催でICIMODなどが共催しましたが、会議の進め方や運営スタッフはじめ、はては懇親会に至るまで、ICIMODの強力な援助があったため、有意義な国際会議になったと感じました。

(写真2) 会議では、2時間ほどの各セッションが終了するとテーブルごとの参加者のまとめを提出し、翌日には運営委員から全体的な集約と課題の整理が発表されました。この進め方のため、参加者全員が問題点を共有することができました。多彩な参加者をまとめていくこのような方法をとった運営委員の努力を高く評価したいと思います。

(写真3) 「アジア高地の氷河科学の将来とは?」といった大きなテーマに関して、たとえば次のようなさまざまな問題点がだされました。
・氷河のマスバランス(質量収支)の地域的違いの原因はなにか。
・気候変化に対する各地域の氷河の応答特性を明らかにする必要があるのではないか。
・今後のブラック・カーボン(黒炭の粉のような物質)の研究の進展が望まれる。
・観測体制のネットワーク化とデータの共有化が必要になる。
・氷河環境の変化与える人々、政策、経済へのインパクトはどうなるのか。
・はたして、インダス河とガンジス河の将来はどうなるのか。
・・・・・などなど

(写真4) 3月5日は満月で、ヒンズー教のホーリー祭り。いわゆる色かけ祭りといわれ、町の通りでは色水をかけあったり、顔に色を塗りたくったりする無礼講の日でした。参加者のなかにもホーリー祭りを楽しんでポスター会場にきた人もいました。ぼくなぞはその二の舞になりそうになりましたが、額の赤い印(ティカ)だけで勘弁してもらってきたしだいです。

(写真5) 天気の良い日の昼食は、ソメイヨシノが咲きはじめた会議会場の Yak & Yeti ホテルの庭園で行われました。このソメイヨシノは幹の直径が3040cmもある大木でした。

(写真6) ホーリーの日に、ICIMOD主催の晩餐会が Yak & Yeti の庭園で行われました。その際に撮りましたICIMOD所長のデービッド・モルデンさんとのスナップです。(右が門田さん、左がぼく)

(写真7) 晩餐会では、若い氷河研究者が表彰され、国際氷河学会記念の帽子を贈られました。(右から2番目が国際氷河学会事務局長のマグナス・マー・マグヌッソンさん)

(写真8) 晩餐会で乾杯の音頭を取るICIMOD所長のデービッド・モルドンさん。(背景に満月が昇る)


カトマンズ大学での講義開始 

(写真9) カトマンズ大学での講義用のホームページ。
 *http://environmentalchangesofthenepalhimalaya.weebly.com/

(写真10) カトマンズ大学講義の受講生たちはマスター・コース1年目の学生です。

(写真11) 干場さんのSmart IT Lectureの教室風景。

(写真12) 受講生たちとともに。

(写真13) 晴れた朝には宿舎からランタンからクンブ地域のヒマラヤの山々が見わたせる。大学はカトマンズ盆地東の峠にあり、晴れた日には爽やかな峠の風が吹きます。

(写真14) キャンパスの西側からは、ガネッシュやマナスル山塊のヒマラヤが望まれます。

(写真15) 懐かしのマナスル三山。だが、これらの素晴らしい展望もスモッグで覆い隠されるようになるとは。そのことは、次に報告します。

(写真16) キャンパスには長さが1mちかくもある、ぼくにとって珍しい鳥が、研究室の窓のすぐ外側に訪れてくれます。


2015年3月3日火曜日

「ネパール2015年春」調査(2) 「アジア高地の氷河に関する国際シンポジウム」はじまる

「ネパール2015年春」調査(2)

「アジア高地の氷河に関する国際シンポジウム」はじまる


写真1 シンポジウム会場
 3月2日、「アジア高地の氷河に関する国際シンポジウム」がはじまりました。会場は、カトマンズでもかなり立派な Yak & Yeti ホテルです。参加者は235名、発表内容(資料1)はチベット高原周辺のヒマラヤ地域がほとんどですが、その他のアジア地域もふくまれています。

資料1
Full programme
http://www.igsoc.org/symposia/2015/kathmandu/proceedings/fullprogramme.html

写真2 ポスターセッションの門田さんとソナムさん
 ポスターセッション1部で門田さんはモンゴルとシベリアの氷河変動をカトマンズ大学学生のソナムさんに解説していました。

写真3 ポスターセッションの朝日さん
 朝日さんはクンブ地域周辺の1970年代からの氷河群変動を写真資料をもとにまとめ、多くの氷河が水平距離で200mほど後退していることを報告していました。

写真4 ポスターセッションの藤田さん
 藤田さんはランタン地域のヤラ氷河の長期的変動を気温と降水量の高度変化から解析し、ビール瓶を片手に報告していました。

写真5 ポスターセッションのジョシさん
 ICIMODのジョシさんはヤラ氷河の1950年代からの変動をまとめていました。1980年代以降の日本人の研究成果も取り込み、カトマンズ大学のリジャンさんたちとも共同研究を進めているのが頼もしく感じられました。

写真6 ポスターセッションのミンマさんとリジャンさん
 カトマンズ大学学生のミンマさんはクンブ地域のイムジャ氷河湖の変動を、りジャン先生のもとでまとめていました。なお彼女は、ぼくが長年お世話になっているハクパ・ギャルブさんの出身地と同じクンデ村の出身です。写真2のソナムさん同様、このシンポジウム後におこなうカトマンズ大学の講義の学生です。

写真7 国際氷河学会事務局長のマグナスさん(右)と編集長のジョーさん(左)
 今回の会議への参加にあたり、マグナスさんには大変お世話になりました(資料2)。偶然なことに、会議初日のテーブルの隣に座っていましたので、お礼がてら、矢吹さんがまとめた1970年代のネパール・ヒマラヤの氷河写真集を国際氷河学会の資料用に贈りました。

資料2
「国際氷河学会カトマンズ会議の報告原稿」を先行公開!
http://glacierworld.weebly.com/26368260322477322577
http://glacierworld.weebly.com/222693855527703278272339820250124591248812510125311247420250356961239822577215782140731295.html

写真8 旧王宮前の交差点
 カトマンズのターメルにあるホテルからYak & Yeti ホテルまでは(心臓障害で早く歩けないので)ゆっくり歩いて20分ほどです。旧王宮前の交差点は相変わらずの混雑です。おまけに、このところの激しい雷雨で、歩道も水がたまり、泥んこ状態です。

写真9 旧王宮の林に集まるカラスの群れ
夕方になると旧王宮の林にはカラスの大群が集まってきます。かつては、オオコウモリがたくさんぶら下がっていました(写真9の左下)が、最近は姿を消しているようです。急速に進む都市化にもカラスは繁栄をきわめていますが、オオコウモリは撤退を余儀なくされたようです。水・大気汚染にゴミ問題をかかえるカトマンズに住む人の将来を暗示しているのかもしれません。しかし、そうなるとカラスの餌もなくなり、カラスも撤退するようになればサイレント・スプリング的な環境になる心配があります。

写真10 レストラン桃太郎の夕食
 やはり日本食が恋しいので、ターメルのレストラン桃太郎によく行きます。そこで、カツ丼や皿うどんなどをよく食べますが、今日は肉と野菜の肉うま煮です。ビールがほしいところですが、ノン・アルコール生活ですので、店の麦茶で我慢しています。