2017年9月1日金曜日

2017年ネパール通信19  余話6 春の花、いろいろ



2017年ネパール通信19  余話6

春の花、いろいろ

 

1)はじめに
 今春の写真データ・ベース(2752枚)*にはいろいろなネパールの表情が写されていますので、ヒマラヤ地域の環境課題に関連する興味あるテーマを選び、これまでに「ヒマラヤ展望率」、「何を食べていたのか-ネパール効果-?」、「カトマンズ・ポカラ間の河川環境の変化」について報告してきました。今回のテーマは「春の花、いろいろ」で、写真データ・ベースの中から150枚の花に関する写真をピック・アップし、ネパールの各地域に見られる春の花を紹介するとともに、ヒマラヤの高山植物の絶滅リスクに関与する山火事や違法採集による外国での売買、また放牧活動による高山地帯への人為的植物の侵入の影響について考えてみました。なお、「春の花、いろいろ」の写真表示(写真5-16)は撮影順ですので、特定の花の記述にあたっては写真番号の引用が前後することもありますのでご承知おきください。
 さらに、今後はネパール・ヒマラヤの「トイレ・ゴミ事情」や「交通事情」、「物価の変化」などのテーマについても取り上げてみたいと思っています。
*2017Nepal
http://glacierworld.net/gallery/Nepal_B/2017Nepal/index.html

 写真1 ポカラの火炎樹

 

  ポカラの初夏、緋色の火炎樹(写真1)が満開の季節を迎え、女性たちは緋色などの赤色のサリーを身にまとい、通りを闊歩します。ポカラの代表的な木の花を朱色の火炎樹とすると、カトマンズは紫色のジャカランダ(写真2)でしょう。火炎樹はマレーシアやベトナムなどの赤道に近い熱帯地域の花で、ポカラはカトマンズよりも600mほども低く、より暖かく、熱帯的な気候なので、火炎樹に適しているようです。カトマンズの女性たちがジャカランダの紫色を好むのに対して、ポカラでは、原色に近い熱帯的な赤系統の色が好まれるのは、女性たちが着るサリーの色にも気候・風土が反映しているのでしょうか。  

 

 写真2 カトマンズのジャカランダ

 

 写真3 ランタンのシャクナゲ

 

  ヒマラヤ山間部の春の花の代表といえば、国花にもなっているシャクナゲ(写真3、写真9の#034-037、040-042、045-写真10の#051、053-059、写真11の#062-068)です。シャクナゲは標高が高くなるにつれて、赤からピンクや白に変化するようです。ネパールのシャクナゲは、幹の太さが1mほどもあり、高さが10mを超えるものが沢山ありますので、正に国花にふさわしい威風堂々の花です。一方、高くなるに連れて、小さくなるなるのがサクラソウです。富士山よりも高いランタン谷のキャンジン(3897m)付近で見られるサクラソウの花は1cmほどの大きさで、茎がほとんどなく、花が地面から直接咲いているように見えます(写真4、写真10の#052)。低地のサクラソウは茎が10cmほどもある(写真9の#043)のですが、茎のないのはヒマラヤ高地の厳しい環境への適応型なのでしょう。


 写真4 ランタン谷のサクラソウ(下の杖の黒テープ間隔は10cmです)

 

  2)春の花、いろいろ

 

  写真5 春の花、いろいろ  1  ; 撮影(2017/03/11 at 11:10)-(2017/03/19 at 13:26)

 

 カトマンズでは紫色を使った広告をよく見かけます(写真5の#001)。ネパールの大企業である通信会社の看板が紫色に統一されているのもそうですし、春に咲くジャカランダの紫の影響があるのかも知れません。さて、カトマンズ大学のキャンパスも春爛漫で、杉並木の大学本部前にはサクラが満開を迎え(写真5の#002-009、写真6の#022-024,027)、名も知らぬ高木(写真5の#010-013)や桃など(写真5の#014-015、写真6の#016)が花を咲かせます。また、春はタンポポ(写真6の#017-021)やシャガ(写真6の#025-026)の季節でもあり、キャンパスを色とりどりに飾ってくれました。

 

  写真6 春の花、いろいろ  2  ; 撮影(2017/03/19 at 13:27)-(2017/03/28 at 07:54)


 写真7 カトマンズ大学キャンパスの梅や桃を食べる子供たち(2017‎年‎5‎月‎29‎日、‏‎16:09撮影)

 

 桃の開花(2017‎年‎3‎月‎19‎日)から2ヶ月ほどたった5月末には実が熟したので、子供たちがねらっていて、得意の木登りをしながら、 取り合っていました(写真7)。また、キャンパスには桑の木が数本あり、4月には実をつけますので、学生たちが口を紫色に染めて、食べていました。

 


 写真8 カトマンズ大学の桑の実を食べる学生たち(2017‎年‎4‎月‎14‎日、‏‎12:28撮影)

 

  写真9 春の花、いろいろ  3  ; 撮影(2017/03/28 at 07:55)-(2017/03/30 at 06:28)

 

 3月末から4月初めにかけてはランタン谷の調査をした時に撮影した低地から高地にかけてのいろいろな花(写真6の029-写真11の075)を示します。ランタン谷の入り口であるシャプルーの名も知らぬ高木の花(写真8の#029-写真9の#031)はポカラでも見た亜熱帯の花です。その高木の10cm以上もある大きな赤い花が音を立てて地面に落ちてくると、子供たちがその大きな花を手にかざして遊んでいました(写真11の#069-070)。ランタン谷を登って行くと、高くなるにつれて、シャクナゲの色が変化します。つまり、低地の濃い紅色のシャクナゲ(写真6の#028、写真9の#032)が、次から次へと桃色から白色のシャクナゲ(写真9の#033-042と写真10の#046-051,053-059)に変わっていきます。まるで、シャクナゲの遷移現象を見る思いです。 香りのないシャクナゲに対して、芳しい香りを放つ高さ1mを越える大型のチンチョーゲ(写真9の#038-039と写真10の#060、写真11の#061)もシャクナゲ林の林床に現れてきます。

 

    写真10 春の花、いろいろ  4  ; 撮影(2017/03/30 at 06:28)-(2017/04/02 at 14:14)

 

 写真11 春の花、いろいろ  5  ; 撮影(2017/04/02 at 14:14)-(2017/04/05 at 07:32)

 

 ランタン谷の調査の最後に低所で見られる濃い紅色のシャクナゲ(写真11の#062-064、067-068) とともに、ところどころ白色がかったシャクナゲを見ながらランタン谷入り口のシャプルーに着き、高木の赤い大きな花を手に持って遊ぶ子供に出会イました(写真069-070)。ランタン谷最後の日は入山時にも泊まったブッダ・ゲスト・ハウスの芝生の庭に咲く赤い花のボトル・ブラッシュ(写真11の#071-074)の木陰で20年ぶりのランタン谷調査の余韻にひたりました。翌日は早朝のカトマンズ行きのバスに乗り、ドゥンチェ手前のバス道の崖に咲き乱れる白いランの花を見ながら、トリスリ川沿いに下りました。4月初めにランタン谷からカトマンズにもどると、松並木に垂れ下がっているノウゼンカズラ(写真12の#076)が、またカトマンズ大学ではヤエザクラ(写真12の#077-079、084-085)が満開でした。大学周辺の田畑には名も知らぬレンゲのような草花(写真12の#080-083)がピンクの小さな花をつけているとともに、青紫のアヤメ(写真12の#088-090)やアザミ(写真13の#091-094)が咲いているのです。また、花ではありませんが、アカメガシワのような赤い花のような木の葉も春を告げているようでした(写真12の#086,写真13の#095-096,写真16の#140-141)。

 

 写真12 春の花、いろいろ  6  ; 撮影(2017/04/08 at 06:18)-(2017/04/20 at 09:35)

 

 写真13 春の花、いろいろ  7  ; 撮影(2017/04/20 at 09:36)-(2017/05/07 at 07:04)

 

 4月末から5月初めはポカラの国際山岳博物館で展示更新をするために、カトマンズから往復のバス旅をしましたので、その途中で見られたいろいろの花(写真13の#097-写真15の#123)を紹介します。カトマンズでは象徴的な春の花であるジャカランダが満開でした(写真13の#097-098,写真14の#117-写真15の#123)。カトマンズ・ポカラ間の中間地点、トリスリ川とマルシャンディ川が合流するムグリン周辺には火炎樹の朱色の花が(写真13の#099-102,写真14の#108-113)、カトマンズ・ポカラ間のバスを運行しているグリーン・ライン会社のレストランには前述の火炎樹の他にもランの花(写真14の#114-116)が咲いていました。ポカラを代表する春の花である火炎樹はまだこれからの感じでしたが、青紫のアサガオや朱色の草花、桃色のオシロイバナのような花も春の季節を迎えていました(写真13の#103-写真14の#107)。

 

写真14 春の花、いろいろ 8  ; 撮影(2017/05/07 at 07:04)-(2017/05/08 at 10:25)

 

  写真15 春の花、いろいろ  9  ; 撮影(2017/05/08 at 10:26)-(2017/05/26 at 10:50)

 

 カトマンズ大学周辺の並木では、木の花か葉か一見不確かでしたが、枝枯れではなく、一部分が黄色に変わっていました(写真15の#124-126)。カトマンズ大学のキャンパスは花盛りで、淡いピンクから濃いピンクのクロッカスのような花(写真15の#127-128,132-133)がそこかしこに、宿舎近くには白系統のアジサイ (写真15の#129-131,134-写真16の136)が雨期の近いのを知らせるように咲きはじめました。大学キャンパスの高木の白い花としては、茶花のような花(写真16の#137-138,144-145)とタイサンボク(写真16の#139)が咲き、大学キャンパスの垣根の花としては、ジャスミンのような芳しい香りを放つ白い花(写真16の#142-143)や色とりどりの小さな花が密集する名も知らぬ花(写真16の#146-147)がありました。最後になりますが、カトマンズでは盛りを過ぎたジャカランダ(写真16の#148-150)が夏の入道雲のもとで紫の花を咲かせていて、大学キャンパスでも季節が春から夏へと移り変わっていることを告げていました。

 

 写真16 春の花、いろいろ  10  ; 撮影(2017/05/26 at 10:51)-(2017/05/31 at 11:34)

 

3)高山植物の絶滅リスクへの人為的影響

 

写真17 ネパール中部ツラギ氷河湖周辺のエーデルバイス群落

 

  ネパール中部でもツラギ氷河湖周辺などには象徴的な高山植物であるエーデルバイス群落などが見られます(写真17)。しかしながら、その地域には人為的な大規模山火事(写真18)が蔓延しているのです。このため、貴重な高山植物なども山火事で絶滅するリスクが高いのではないか、と心配です。ネパール中部ツラギ氷河湖周辺のエーデルバイス群落周辺の森林の一部はすでに森林火災の影響を受けており(写真17の右上や写真18)、村から離れた森林は放牧地の拡大などのために、ブータンやモンゴル同様、人為的森林火災が頻発しています。モンゴルでは林床にブルーベリーの灌木が生えており、根が深くまで達しているので、山火事で地表面が熱せられても、翌年は山火事の灰を肥料にして成長し、多くの実を結ぶので、放牧地の拡大の目的に加えて、現金収入用のブルーベリーなどの果実の収穫のために人為的に山火事を起こすのだそうです。しかし、地表面近くに生える高山植物は根が浅いので、山火事の影響は致命的な結果をもたらすのではないでしょうか。

 

写真18 ネパール中部ツラギ氷河湖周辺の山火事景観

 

写真19 ネパール中部マナスル峰南西のツラギ氷河湖周辺のリンドウ(Gentiana)群落

 

 また、ネパール中部のツラギ氷河湖周辺などにも、ヒマラヤの代表的な高山植物であるリンドウが分布しています(写真19)が、違法採集されたリンドウ(Gentiana)が下記のBBCの記事のようにイギリスで販売されている(写真20)、とのことです。このような人為的破壊が拡大すれば、このこともまた、次なる高山植物の絶滅リスクになる可能性があります。

記

Illegally collected Himalayan plant seeds sold in UK
By Navin Singh Khadka Environment reporter, BBC World Service
http://www.bbc.com/news/science-environment-35699297?error_code=4201&error_message=User+canceled+the+Dialog+flow
Image caption; Gentiana is a favourite among collectors
Seeds of exotic plants illegally collected in the Himalayas are being sold in the UK, the BBC has found.National Himalayan authorities say no permission was obtained to gather and export the plant material.The activity harms the environment and deprives local people of benefits from the trade of plants, they add.Some of the suppliers told the BBC that locals had actually helped them collect the flowers; others said they did not know their activities were illegal.

 (以下省略)

 

  写真20 違法採集されたヒマラヤのリンドウがイギリスで販売されている記事(BBC;2 March 2016)

 

写真21 アンナプルナBC周辺の高山植物群落

 

 次なる第3の高山植物の消滅リスクは人為的植物の侵入です。 モンスーンの雨期のヒマラヤの草原地帯は高山植物の宝庫です(写真21)が、夏の雨期は高所の放牧期間になっているため、多くの家畜と人が高山植物地帯に滞在します。すると、低所の村などに生えている植物の種が家畜や人とともに高山植物地帯に運ばれてきます。そのような人為的植物の代表がスイバ(イタドリ、スカンポの仲間)やオオバコ*で、ネパール中部のアンナプルナ・ベース・キャンプ周辺では、もともとの高山植物が駆逐され、人為的なスイバ群落に占領されています(写真22)。このようにして引き起こされる人為的影響も、ヒマラヤの高山植物の絶滅リスクになっています。

*ネパール2014春調査報告4
4.最後に

http://glacierworld.net/travel/nepal-travel/nepal2014/nepal2014_04tulagi/
「さてもうひとつ最後にあたり環境問題としてつけ加えたいのは、オオバコなどの低地の雑草の高地への移動問題である。アル・バリや、ダナ・コーラ橋とダラムサーラへの途中の崖小屋周辺には米科の雑草やスイバが広範囲に分布を広げて、もともとの植生を駆逐しているのである。このことは、森林火災とともに、ヒマラヤの貴重な自然保護の課題になることであろう。」

  

 写真22 アンナプルナBC周辺の放牧小屋と人為的植物景観

 

2017年8月29日火曜日

2017年ネパール通信18  余話5 ヒマラヤ展望率



2017年ネパール通信18  余話5

ヒマラヤ展望率


 1)ヒマラヤ展望率

写真1  逆光の日の出に浮かび上がるガウリシャンカール峰(写真9の#045;2017/04/24 at 06:01撮影)

カトマンズ大学の宿舎からヒマラヤ連峰のガウリシャンカール峰(7134m)が見える割合をヒマラヤ展望率と呼ぶ(*1)こととし、2017年の写真データベース2752枚(*2)の中で毎朝撮っていた写真112枚を選び(写真1、2、5-12)、2015年と2016年春の同時期のヒマラヤ展望率とを比較した。
(*1)ヒマラヤ展望率
2016年ネパール通信7  最終講義の報告
http://glacierworld.net/travel/nepal-travel/nepal2016/nepal2016_08final-from-ku/
(*2)2017Nepal
http://glacierworld.net/gallery/Nepal_B/2017Nepal/index.html

大学宿舎のベランダからは、晴れれば、北のランタン地域東部のジュガール・ヒマラヤから東のクンブ地域南部のヌンブール峰までが見渡せ、その中央部にガウリシャンカール峰が望まれるのである。日が昇ると、上昇気流でスモッグが舞い上がり、ヒマラヤが見にくくなるので、日の出直前に写真を撮り、2枚をつなぎ合わせて、パノラマ写真(写真5,6)を作成した。
 2015年の3月~5月の68日間でガウリシャンカールが見えた日は26日あったので、ヒマラヤ展望率は38%だったが、2016年の同時期の53日間で見えたのはわずかに4日間にすぎなかった。したがって、2016年のヒマラヤ展望率は8%と低かった。スモッグの影響を受けた2016年の大気汚染がいかにひどかったかを示している。このことは、ネパールにとって重要な観光資源であるヒマラヤを見ることができないことを示し、ネパールの将来の観光産業にとっても大きな課題になるであろう。

写真2 夕日に輝くガウリシャンカール峰(写真10の#073;2017/05/17 at 18;29撮影)

 写真3 ポカラの国際山岳博物館から見る中央のアンナプルナ連峰、右にマナスル峰、左にダウラギリ峰を望む。

ポカラの楽しみは、晴れた日の早朝、まず8000m峰のアンナプルナⅠとダウラギリが朝日でモルゲン・ロート(朝の赤)に染まり、ついで、アンナプルナⅡやマチャプチャリなどの山々にも日の出の光がとどく変化を見ることである(写真3)。これらの荘厳で勇壮な景観を見ていると、ネパールに来たことを実感する。だが、このような素晴らしい光景に恵まれる機会は実は少ない。2017年は4月30日にポカラに到着し、5月7日のカトマンズへ向かうまでの7日間でヒマラヤが見えたのは5月2日と5月5日の早朝のみであった。また、かつて国際山岳博物館に勤めていた2009年3月から1年間、毎週1回早朝のアンナプルナ連峰の展望の変化をまとめてみる*と、雲の少ない早朝でも、アンナプルナ連峰が一望に見渡せる日は1年のうちでも10週程度と非常に少ないことが分かった。とくに展望が良いのは、雨期明けの10月中旬や冬期の風の強い日に限られる。以上のように、ポカラにきてアンナプルナ連峰が見渡せる確率を展望率とすれば、2割程度なので、従ってマチャプチャリを眺めることができた人は幸運である、といえだろう。
*Holly Mountain
http://glacierworld.net/regional-resarch/himalaya/machapuchare/machapuchare01/

 写真4 アンナプルナ連峰の中央に鎮座するマチャプチャリ峰、左に Ⅰ 峰、右に Ⅱ 峰を望む。

大気汚染が年々ひどくなるネパールは、視程(Visibility)が悪くなり*、カトマンズのようにヒマラヤが見えなくなることで、貴重な観光資源を失っていることを指摘しておく。ポカラで望まれるマチャプチャリ峰を中央にいだくアンナプルナ連峰はまさに神々の座にふさわしいヒマラヤそのもの(写真4)で、カトマンズの二の舞いになってほしくない、強く思う。
*Visibility and Air Pollution
http://glacierworld.net/regional-resarch/himalaya/machapuchare/machapuchare02/

写真5  大学宿舎のベランダから望む日の出直前のヒマラヤ

2)2017年春のヒマラヤ展望率
 はたして、2017年の春のヒマラヤ展望率はどうだったか。 
 大学宿舎のベランダから望む日の出直前のガウリシャンカール峰周辺のヒマラヤのパノラマ的景観を写真5と6に示す。
 
写真6  大学宿舎のベランダから望む日の出直前のガウリシャンカール峰周辺のヒマラヤ

 写真7 ヒマラヤ展望率01(2017/03/15 at 06:37)-(2017/04/09 at 05:47)

 3月15日から4月9日の間(写真7)で、ガウリシャンカール峰を見ることができたのは4月8日と9日の朝焼け時の2日間(写真7の#015、019)だけで、4月13日と4月22日の間(写真8)では雲やスモッグでガウリシャンカール峰を見ることはできなかった。

 写真8 ヒマラヤ展望率02(2017/04/13 at 06:01)-(2017/04/22 at 06:21)

 写真9 ヒマラヤ展望率03(2017/04/23 at 05:49)-(2017/05/11 at 08:05)

  4月23日から5月11日の間(写真9)でガウリシャンカール 峰が見えたのは4月24日と4月26日の朝焼け時の2日間(写真9の#045、051)で、5月12日から19日の間(写真10)では5月17日の夕焼け時(写真10の#073)と5月18日の朝焼け時(写真10の#077)にガウリシャンカール峰を見ることができた。
 
 写真10 ヒマラヤ展望率04(2017/05/12 at 05;36)-(2017/05/19 at 05:24)

 写真11 ヒマラヤ展望率05(2017/05/19 at 05:25)-(2017/05/25 at 05:26)

 5月19日と5月25日の間(写真11)でガウリシャンカール峰が見えたのは、 5月23日の朝焼け時(写真11の#091)だけで、5月24日や25日(写真11の#095、096、099、100)の陽の出時に逆光の山がシルエットに浮かび上がったが、ガウリシャンカール峰を見ることはできなかった。5月26日から5月31日の間(写真12)では、モンスーンの雨期が近くなったため雲が多く、ガウリシャンカール峰などのヒマラヤを見ることはできなかった。

 写真12 ヒマラヤ展望率06(2017/05/26 at 05:20)-(2017/05/31 at 05:20)

3)まとめ
 2017年3月9日から6月5日までのネパール滞在89日間で、カトマンズ大学の滞在期間が50日であったが、その期間で大学宿舎のベランダからガウリシャンカール峰が見えたのはわずか7日間だけであった。ヒマラヤ展望率に換算すると、14%である。ガウリシャンカール峰の見えるチャンスは1週間で1日ほどであった。春の前半はスモッグで、後半になると雨期に近づくので雲が多くなり、ガウリシャンカール峰をはじめとしたヒマラヤを見ることはかなわないのである。
 ヒマラヤ展望率は、2015年の38%、2016年は8%でしたので、2017年の14%は去年に比べてはやや持ち直した、と言っていいものかどうか判断がつきかねている。しかしながら、1週間に1日しかガウリシャンカール峰などのヒマラヤを望むことができないということは、ネパールにとって重要な観光資源であるヒマラヤを見ることができないことを示し、ネパールの観光産業の将来にとって大きな影響をあたえるであろう。
 ヒマラヤ展望率を低くする要因は雲とスモッグである。モンスーンの雨期近くの雲の発生は自然現象であるが、スモッグは人為的なので、ネパール国内の森林火災や野焼き、車の排気ガスなどの対策の他に、外国起源の大気汚染物質対策としては、インドやバングラデシュなどと協議していく必要があるであろう*。
*カトマンズからポカラへ-スモッグの原因ー
http://glacierworld.net/travel/nepal-travel/nepal2016/nepal2016_07smog/
 

補足
2015年はアラビア海からの水蒸気がインド方面にしばしば侵入し、西部ヒマラヤから中部ヒマラヤのネパールまでが雨や雪にみまわれ、大気中の汚れを落とし、ヒマラヤ展望率が高かったが、2016年はインド・ヒマラヤ周辺の乾燥状態が続き、大気汚染のスモッグが滞っているため、このスモッグの層のなかにあるカトマンズ 盆地などからはヒマラヤが見えなかったのである(*)。だが、スモッグの上限高度3000m以上に登れば、ヒマラヤが見えることになる。ちょうど悪天時の太陽も、雲の上に出 れば見えるのと似ていようか。
(*)2016年ネパール通信2
http://glacierworld.net/travel/nepal-travel/nepal2016/nepal2016_02himalayan-earthquake-museun/
 ネパールでも春は作物を植える時期で、春先の雨は“マッカイ(とうもろこし)コ(の)パニ(あめ)”と言われ、歓迎されているが、去年は連日のように午後 の雷雨がつづき、地元の人々も困りはて、ヒマラヤの天気の異常さに気付き始めた時に、あの2015年ネパール地震が起こったのである*。里の雨は、山の雪で あるから、カトマンズ盆地の砂や粘土の湖成堆積物は水分を含み軟弱地盤化し、ランタン地域などのヒマラヤ山地は豪雪にみまわれていたところ、地震の揺れ で、カトマンズなどネパール中央部の建物は砂上の楼閣となり多くの人命を奪うことになったことにくわえ、ヒマラヤではランタン村やクンブ氷河のベースキャ ンプなどで雪崩が発生して大惨事を引き起こしたのである。
*2015年ネパール地震(1)
http://glacierworld.net/travel/nepal-travel/nepal2015/nepal2015_07earthquake/