2024年3月1日金曜日

生成AIの特徴と問題点(2)―「池上彰とは何者か」本人がチャットGPTに聞いてみたー

生成AIの特徴と問題点(2)―「池上彰とは何者か」本人がチャットGPTに聞いてみたー

 

1)  はじめに

ジャーナリストでニュース解説者のあの池上彰さん(図1)が『私もチャットGPT(図2)が登場してすぐに、試しに「池上彰は何者なのか」という質問を投げかけてみました』(参考資料1)そうだ。そしたら、「池上彰は、日本のジャーナリスト、作家、テレビパーソナリティであり、歴史や政治に関する解説を得意とする知識豊富な人物です」と、ここまではよさそうだが、「池上彰は1956年生まれで、東京都出身です。 早稲田大学政治経済学部を卒業し、大学在学中には新聞記者として活動しました」と回答された彼個人の経歴に誤りがあったそうです。彼は、「生まれたのは1950年ですし、出身は長野県松本市です。卒業した学校は慶応義塾大学の経済学部です。大学在学中に新聞記者だったことはありません。卒業後は、新聞記者ではなくNHKに記者として入局しました」というのです。チャットGPTの回答には個人情報の間違いがあるので、注意が必要です。

 

図1 池上彰さん                                     図2 チャットGPTのロゴマーク

池上さんがかつて、NHKの「週刊こどもニュース」で分かりやすく世界情勢を解説していたのを知っている後期高齢者のひとりである僕でも、チャットGPTが示した彼個人の経歴の一部に誤りがあることはすぐにわかる。現在行っている彼の報道スタイルには、かつての子供向けのニュース解説の情景を偲ぶことができるようです。

参考資料1

「池上彰とは何者か」本人がチャットGPTに聞いてみた

2024210

https://mainichi.jp/premier/business/articles/20240131/biz/00m/020/007000c?utm_source=article&utm_medium=email&utm_campaign=mailhiru&utm_content=20240210

 

2)  Who is Hiroji Fushimi?」に対する各生成AIの回答

僕もかつて、「Who is Hiroji Fushimi?」の質問を、生成AIのチャットGPTやグーグルBard(図3)とマイクロソフトBing(図4)に尋ねたことがあった(参考資料2)。

参考資料2

生成AIの特徴と問題点

チャットGPTやグーグルBard、マイクロソフトBingの比較から

https://hyougaosasoi.blogspot.com/2023/05/aach16-ai.html

 

図3 グーグルBardのログマーク    図4 マイクロソフトBingのログマーク

その結果、それぞれの生成AIの回答は次のようであった。

2-1) チャットGPT

 Hiroji Fushimi is a Japanese activist and former political prisoner. He was a member of the Japanese Red Army, a militant communist group, and was arrested in 1971 for hijacking a Japan Airlines flight from Tokyo to Fukuoka. Fushimi was sentenced to life in prison for his role in the hijacking, but was released in 1995 after serving 24 years in prison. Since his release, Fushimi has been active in promoting peace and social justice, and has been involved in various activist causes in Japan and internationally. He has been a vocal critic of Japan's military alliance with the United States and of the Japanese government's policies towards Okinawa and other regions of Japan.

2-2) グーグルBard

 私は大規模言語モデルで、幅広い質問やメッセージに対してテキストを生成することができますが、その人物については十分な情報がないため、お手伝いできません。このリクエストについて、他に何かお手伝いできることはありますか?

2-3)マイクロソフトBing

 Hiroji Fushimi is a researcher who studies snow and ice in the Himalayas and other regions1. He has published papers on topics such as acidification of meltwater, sedimentary environments of glaciers, and avalanche sediments23. Are you interested in his work?

Publications (31)Environmental changes of Nepal Himalaya in terms of GLOF phenomena

Fluctuations of Sedimentary Environments of the Gyajo Glacier, Khumbu Region, East Nepal

 

3)  生成AIの特徴と問題点

 「Who is Hiroji Fushimi?」と尋ねた上記の回答から、それぞれの生成AI の特徴と問題点が次のように認められた。

3-1) チャットGPT

 チャットGPTはいかにも自信ありげに「Hiroji Fushimiは日本赤軍の政治犯」(a member of the Japanese Red Army)だというのですから、からかわれているような気がするとともに、「チャットGPT」への不信感を覚えた。ちなみに2-1)章の英文を和文に訳してもらうと「伏見広治は、日本の活動家であり元政治犯です。彼は、過激な共産主義グループである日本赤軍のメンバーであり、1971年に東京から福岡への日本航空のフライトをハイジャックしたことで逮捕されました。伏見はハイジャックの役割により終身刑を宣告されましたが、24年間の服役後の1995年に釈放されました。釈放後、伏見は平和と社会正義の促進に活発に取り組み、日本や国際的にさまざまな活動家の原因に関与しています。彼は日本の米国との軍事同盟や沖縄などの日本の他の地域に対する日本政府の政策に対して、積極的な批評家となっています。」と即座に回答してきました。以上のように、まず「Hiroji Fushimi」(伏見碩二)を「伏見広治」としているのは論外であるとともに、個人的な人物評価は大いに「問題あり」で、納得できません。ただし、「下記の日本語を英語に直してください」と入力すると、瞬時にやってくれるスピードに加えて、スムースな和文への翻訳能力は相当なもので、チャットGPTの実用化を考えると、少なくとも、将来の語学教育にはかなり影響するのではなかろうか。

3-2) グーグルBard

グーグルBardは「私は大規模言語モデルで、幅広い質問やメッセージに対してテキストを生成することができますが、その人物については十分な情報がないため、お手伝いできません」との回答には思わず“うなり”ました。率直さが表れていると感じたからです。ただし、「十分な情報がない」とのことから、生成AIが本来蓄えなければならない個人的な情報量のストックがまだ不十分なのかもしれないが、英語で質問したのにもかかわらず、日本語で答えてくれた「吟遊詩人」とも呼ばれているグーグルBardの気配りは評価できそうだ。

3-3) マイクロソフトBing

マイクロソフトBingの回答にはさらに“うなり”、納得しました。回答は簡潔だが、参考文献を示して、正確な人物評価を行っているからです。ちなみに、英文の回答を日本語に直してもらうと、「こんにちは、こちらはBingです。 英語から日本語への翻訳サービスを利用して、あなたのメッセージを翻訳しました。Hiroji Fushimiは、ヒマラヤや他の地域の雪と氷を研究する研究者です。彼は、融水の酸性化、氷河の堆積環境、雪崩堆積物などのトピックに関する論文を発表しています。彼の仕事に興味はありますか?」とのことでした。Hiroji Fushimiを無理して(伏見碩二)と日本語に翻訳せず、ローマ字そのままに標記し、チャットGPTのような誤訳を避けているのは賢明な処置といえるでしょう。さらに、「彼の仕事に興味はありますか?」と親切にも聞いてくれているではないか。

 

4)  まとめ

 生成AIの特徴と問題点を明らかにするために、チャットGPTやグーグルBard、マイクロソフトBingそれぞれに、「Who is Hiroji Fushimi?」の質問をした各回答を比較検討した結果は次のようであった。

・チャットGPTは賢そうだがどこか怪しいので、ファクトチェックが必要。

・グーグルBardは簡潔で慎重さが目立つ。

・マイクロソフトBingは参考文献つきで手堅い感じ。

以上のそれぞれの特徴から、生成AIの問題点があることが分かった。つまり、チャットGPTは誇張した表現が許容される文学やアート方面に向いているのではないか。グーグルBardとマイクロソフトBingはチャットGPTよりも簡潔で、手堅くまとめている印象が強い。なかでもマイクロソフトBingは参考文献を表示していることで信頼感を高めているので、サイエンス関連の報告に利用できるのではないか、と解釈できた。

いずれにしても、これら3つの生成AIに共通する回答手法は、膨大な資料の中から、問題解決に関連する項目を箇条書きに提示し、回答をうながす手法をとっているが、全体的な印象としては、ともすれば常識的な「まことしやか」な上からの目線での回答が多いように感じた。それに反して、マイクロソフトBingの回答は簡潔だが、参考文献を示して、正確な人物評価を行っている点は、他の生成AIにはみられなかった。

最後に、『「池上彰とは何者か」本人がチャットGPTに聞いてみた』の報告を読んで、生成AIのチャットGPTには個人情報の誤りがあることが1)章で述べたように改めて分かったので、チャットGPTの回答に問題点を感じたら、他の生成AIにも尋ねてみることが必要になろう。ちなみに、マイクロソフトBingに「池上彰は何者なのか」と同じ質問で尋ねてみたところ、下記のように、1)章で紹介した回答とは異なるものとなった。

you

池上彰は何者なのか

Capilot

池上彰は、日本の教授、ジャーナリスト、著作家、YouTuberです。元NHKの記者で、現在はフリーランスとして多くのメディアでニュース解説や教育番組を担当しています。慶應義塾大学経済学部卒業後、1973年にNHKに入り、2005年に退職しました。その後、名城大学、東京工業大学、東京大学、日本大学、立教大学、信州大学、愛知学院大学、順天堂大学、京都芸術大学などで教授や客員教授を務めています。また、日本ニュース時事能力検定協会の理事や毎日新聞の「開かれた新聞」委員会委員も務めています。鋭い取材力に基づいたわかりやすい解説に定評があります12。趣味は新聞の切り抜き、海外の地図集め、ダジャレなどです2。英語が堪能で、自らの海外取材に駆使するだけでなく、国際シンポジウムの司会も英語でこなしています2。苦手な分野はスポーツと芸能です2。インターネットを情報収集のために駆使していますが、本人はネットへの露出を好まず、公式ブログやTwitterFacebookなどは一切やっていません2

Learn more

 1 ja.wikipedia.org  (https://ja.wikipedia.org/wiki/池上彰)

 2 akiraikegami.com  (https://www.akiraikegami.com/about_akiraikegami/about/)

 3 bing.com  (https://www.bing.com/search?q=池上彰は何者なのか&FORM=bngcht&toWww=1&redig=C93393BA2FA44D5EA33E256C3A6AD81F)

 

マイクロソフトBingの特徴である参考文献の3としては、本報告の標題にもなっている池上さんの記事『「池上彰とは何者か」本人がチャットGPTに聞いてみた』も最新情報としてあげられているのである。

 

5) 追記
さらに、念のため、「池上彰は何者なのか」とグーグルBardに尋ねてみたら、回答は下記の通りであった。

池上彰(いけがみあきら)は、1950年生まれの日本のジャーナリスト、テレビ解説者、慶應義塾大学教授。
1973年に慶應義塾大学経済学部を卒業後、NHKに入局。記者、キャスター、解説委員などを歴任し、1994年から2005年まで『週刊こどもニュース』のメインキャスターを務めた。
2005年にNHKを退職後、フリーランスのジャーナリストとして活動。テレビ番組、新聞、雑誌など幅広いメディアで活躍している。
池上彰は、わかりやすい解説で幅広い層から支持を集めている。また、政治や経済、国際情勢など幅広い知識を持ち、独自の視点からニュースを解説している。
池上彰の主な出演番組は、テレビ朝日系「池上彰のニュースそうだったのか!!」、TBS系「報道特集」、日本テレビ系「真相報道バンキシャ!」など。
池上彰の主な著書は、「伝える力」「日本の未来を考える」「戦争と平和を考える」など。
2015年、旭日重光章を受章。
以下、池上彰の経歴をより詳しくまとめる。
生い立ち
池上彰は、1950年8月9日に長野県松本市で生まれた。父親は会社員、母親は専業主婦。
池上彰は、幼い頃から新聞を読むのが好きだった。また、小学校の頃から作文が得意で、将来はジャーナリストになりたいと考えていた。
学生時代
池上彰は、東京都立豊多摩高等学校に進学。高校時代は、新聞部に所属していた。
1973年に慶應義塾大学経済学部に入学。大学時代は、演劇サークルに所属していた。
NHK入局
1973年に慶應義塾大学を卒業後、NHKに入局。記者として、社会部、政治部、外務省キャップなどを歴任した。
1988年、NHKアナウンサーの久保純子と結婚。
『週刊こどもニュース』
1994年から2005年まで、『週刊こどもニュース』のメインキャスターを務めた。わかりやすい解説で、子供たちからの人気を集めた。
フリーランス
2005年にNHKを退職後、フリーランスのジャーナリストとして活動。テレビ番組、新聞、雑誌など幅広いメディアで活躍している。
ジャーナリストとしての活動
池上彰は、政治や経済、国際情勢など幅広い知識を持ち、独自の視点からニュースを解説している。また、わかりやすい解説で、幅広い層から支持を集めている。
池上彰は、ジャーナリストとして、以下のような活動も行っている。
    講演会
    シンポジウム
    大学での講義
著書
池上彰は、以下のような著書がある。
    「伝える力」
    「日本の未来を考える」
    「戦争と平和を考える」
受賞歴
    2015年、旭日重光章を受章。
池上彰の功績
池上彰は、わかりやすい解説で、多くの人々にニュースをわかりやすく伝えている。また、政治や経済、国際情勢など幅広い知識を持ち、独自の視点からニュースを解説している。
池上彰は、日本のジャーナリズム界を代表する人物である。
 

 

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