2014年5月27日火曜日

ネパール2014春調査報告 9

ネパール2014春調査報告 9

国際山岳博物館の展示更新

                    写真1 スモッグにかすむ朝日のマチャプチャリ峰

                         写真2 ポカラ周辺の山火事

   6月からはじまる雨期を前にしてヒマラヤ上空の雲がふえてきました。山の姿は相変わらず霞んでいるというより、スモッグで良くは見えません(写真1)。スモッグはインドやバングラデッシュから来るのと、ネパールの自動車の排気や山火事の煙(写真2)で、上空3000mほどまではスモッグの層で覆われています。このように、ヒマラヤの空の状況は良くないのですが、一方地上では、美しいショウガの花が咲きはじめました(写真3)。地元の人は、ファンカ・フルと言います。ファンカは扇、フルは花です。良い香りのこの花を扇状にかざり、女性が髪の毛にかざすのです。ちょうど、日本女性のカンザシのようです。

                         写真3 良い香りのするショウガの花

アンデスの山岳民族の展示も

                           写真4 展示会場(パノラマ)

   さて、国際山岳博物館の展示更新(写真4)ですが、新しい展示がくわわりました。それは、前便でお伝えしたICIMODの会議(資料1)の参加者を通じて、アメリカ人の文化人類学者Dr. Johan Reinhardから次のようなメイルが来たことがきっかけでした。

While in the museum a few months ago, I noticed that the Andes range, which is the world's longest mountain chain and has the highest mountains outside of Asia, was not represented. I have traveled throughout much of the Andes for over 30 years (and have climbed over a hundred peaks), and thus I have several thousand images that I would be happy to make available to the museum. Since I am an anthropologist, there are also many images of local inhabitants and their cultures.
(意訳:数ヶ月前に博物館に行きましたが、アジア以外で最長の山脈で、高山でもあるアンデスの展示がないことに気づきました。私は30年以上アンデスを旅行し(100以上の山頂に登り)、数千枚の写真がありますので、博物館で使ってもらえれば幸いです。私は文化人類学者ですので、住民や文化についてのたくさんの写真があります。)

そこで、「国際」と銘うっている山岳博物館としてはアンデス山脈を無視することはできませんので、Johan Reinhardさんの写真データベースの中からとりあえず10枚を選び、アンデスの展示を加えることにしました(写真5左)。

                 写真5 新たなアンデス(左)とナムチェ・バザール(右)の展示

主な内容は、アンデスのインカの山岳民族は氷河の聖地への巡礼をするとともに、死後は高山の頂上付近に運ばれ、高山の低温条件下でミイラ化している実態をDr. Johan Reinhardが調査していることです。ヒマラヤとは大きく違う山岳民族の信仰と山地の環境とのかかわり方に見学者が関心をよせていました(写真6。たしか、これらのいくつかの写真はナショナル・ジオグラフィック・マガジンで見たような記憶があります。

ただ、温暖化が進むとすると、融解・再凍結の上限高度が上昇し、従来の寒冷な高山環境が変化しますので、微生物などの高地への移動とともに、アンデス高地の貴重なミイラなどの遺体の分解が進み、保存状態が悪くなることが予想されます。このことは、1920年代のエベレスト隊で亡くなったマロリー氏やヒマラヤの他の遭難者の遺体の保存状況も今後は変化していく(資料2)ことを示しています。

                     写真6 アンデスの展示に興味をしめす見学者

資料1
http://hyougaosasoi.blogspot.jp/2014/05/2014.html
http://glacierworld.weebly.com/201424180261491249312497125401252335519266198.html
資料2
http://hyougaosasoi.blogspot.jp/2013/12/blog-post.html
http://glacierworld.weebly.com/2201324180311793551926619260533489220313354411.html

ナムチェ・バザールの1970年から現在への変化
従来のほとんどの伝統的な家は新築し、34階建てのホテルとなりましたので、あたかもカトマンズの繁華街、ターメルのようなたたずまいになっている(写真5右)ことに、見学者たちも驚いていました(写真7)。しかし、ここにも問題があります。それはトイレで、たれ流しのため汚水が地下に浸透し、やがては町の下部にある飲料水源の湧水の汚染をひきおこすことが心配されます(資料3)。

                      写真7 ナムチェ・バザールの展示を見る見学者

資料3
http://glacierworld.weebly.com/4imja-glacier-lake.html

                      写真8 マチャプチャリ研究の展示にふれる見学者

  今回印刷をし直し、色落ちを防ぐとともに、手などでふれても(写真8)、画像に傷がつきにくいラミネートで加工した展示ポスターの内容は下記の通りです。

更新した従来の展示

温暖化とGLOF
温暖化とGLOF(氷河湖決壊洪水)
    なぜ、ネパールの大規模氷河湖は決壊しないのか
マディ川氷河湖洪水
2012年セティ川洪水

マチャプチャリ研究
大気汚染と視程(Air Pollution and Visibility
雪型(Snow  Shape
雲の形成(Cloud Formation

エコツアー
ポカラのグランドキャニオン(Grand Canyon of Pokhara
ダンプス(Dhampus
ツラギ氷河湖(Tulagi Glacier Lake
イムジャ氷河湖(Imja Glacier Lake
ギャジョ氷河(Gyajo Glacier
アンナプルナ・ベース・キャンプ(Annapurna Base Camp
プーン・ヒル(Poon Hill

グーグル衛星画像解析
カトマンズの住宅開発と地滑り(Housing Site and Landslide in Kathmandu
世界のトップ(Top of the World


                写真 9 国際山岳博物館を訪ねて来てくれたソナム・フティさんと友人たち

最後に
  うれしいことに、5月27日午後、シェルパ女性の氷河研究の学生、ソナム・フティさん(資料4)が友達とともに、ポカラ周辺の地質巡見の途中にもかかわらず、山岳博物館を訪ねてくれました(写真9)。彼女たちとはカトマンズ大学で会うことになっていましたが、聞いてみると、彼女たちの大学と帰国直前のぼくの予定がかみあわず、カトマンズで再会する折り合いがつきそうもないので、今日は彼女の方から山岳博物館によってくれ、今回最後の再会の機会を作ってくれました。彼女たちの指導教官である古い友人のリジャン・バクタ・カヤスタさん(資料4)にも是非再会したいと思っているところです。
資料4
http://hyougaosasoi.blogspot.jp/2014/05/2014.html
http://glacierworld.weebly.com/201424180261491249312497125401252335519266198.html


2014年5月18日日曜日

ネパール2014春調査報告 8

ネパール2014春調査報告 8 -ICIMOD会議-


           写真1 会議終了後のスナップ(中央の白いズボンの人がコンビーナーのサムジワール・バジラチャリャ氏

 昨日カトマンズでのICIMODの下記会議を終え(写真1)、ポカラに戻ってきました。5月13日~16日までの4日間の会議中は午前9時~午後5時までICIMODのカンチェンジュンガ会議室で缶詰状態になり、100名ほどの出席者がら50ほどの報告を聞く、かなり忙しい日々を過ごしました。


Second International Conference on
Cryosphere of the Hindu Kush Himalaya: State of the Knowledge
And Hindu Kush Himalayan Cryosphere Data Sharing Policy Workshop
http://www.myrepublica.com/portal/index.php?action=news_details&news_id=74679


全体的な印象
 会議の第1印象は衛星画像解析やモデリングなどの研究報告が多く、現地調査の研究成果が少なかったことです。広域的なデータをまとめるには前者の研究は欠かせませんが、グランド・トゥルースとしての後者の研究がないと、前者は砂上の楼閣になってしまう可能性があります。具体的には、氷河(インベントリー・流動・質量収支含む)や岩石氷河、凍土、氷河湖決壊洪水、水文循環に関する前者の研究でも、詳細な時空間的な変化をまとめているのは良いのですが、例えばツラギ氷河の流動にしても、数年前から氷河末端が氷河湖の底に座礁し、末端が静止しているのにもかかわらず、氷河流動を報告している(発表資料)ので、大いに気になりました。前者の研究が多くなっていることを考えると、後者の研究の重要性とともに、今回の会議の基本的な共通テーマが「データ・シアリング」であるのですから、両者の協力・情報交換がますます必要になってくることでしょう。

発表資料
Umesh Haritashya (Univ. of Dayton)
The Global Land Ice Measurement from space Project (GLIMS): Current Status of the Database; and SERVIR Himalaya: Update on Growth of Glacial Lakes and Unstable Landscape. 

                                         写真2 リジャン・カヤスタ先生と学生のソナム・プティさん

現地調査
 そんな中で、友人であるカトマンズ大学のリジャン・カヤスタ教室の学生たち(写真2)が、われわれの仲間が1970年代に調査していたダウラギリ峰北部にあるリッカサンバ氷河や1980年代のランタン地域にあるヤラ氷河の現地調査を続けている報告(発表資料)を聞き、なつかしいと同時に、大いに頼もしく感じました。彼らは近々それらの氷河の1970年代・19809年代からの変化をまとめた報告書を出版する、とのことです。大いに期待したいと思います。彼らの話にもうひとつつけ加えたいのは、学生のなかに、クンブ地域のクムジュン村出身のソナム・プティさんがいることです。ハクパ・ギャルブさんが言うには、「彼女はシェルパの氷河研究者第1号」とのことですが、ハクパさんこそ、1970年代にわれわれの研究を支えてくれた、その第1号であったのではないか、とぼくは思っています。

発表資料
Rijan Bhakta Kayastha (Kathmandu Univ.) Glaciological Research in Lantang and Hidden Valleys, Nepal.

   写真3 雪渓化したクンブ地域のギャジョ氷河(上:1970年8月、下:2009年5月)

ネパールの氷河台帳
  今回の会議でSamjwal Bajracharya(ICIMOD)が報告した「Decadal glacier change in Nepal Himalaya 」は注目を集めました(資料1)。これはランドサット衛星画像を解析したネパールの3800ほどの氷河台帳で、各流域ごとの氷河分布が明らかにされています。例えば、ネパールの氷河の80%は標高4500m~6000mに分布している(写真4)事が報告されました。これらは低位置氷河で、ぼくが今回の会議でも発表したクンブ地域の低位置氷河であるギャジョ氷河は、温暖化の影響をうけ、急速に融解・縮小したため、氷河から雪渓に変化してしまいました(写真3、資料2)。地球温暖化が進めば、高位置氷河も解けるのにくわえて、ネパール氷河の少なくとも80%の低位置氷河が消滅してしまうことを示しています。このことは、ネパールだけでなく、下流域全体の水文環境に大きな影響をあたえることでしょう。今回の会議の最終日には、ICIMODが精力的にまとめたネパールの氷河台帳が参加者に配布されました(資料1)。ただ、彼らの氷河台帳では高度3000m以上の氷河を記載しているので、ぼくが調査したアンナプルナ南面の標高2500mのガプチェ氷河は見逃されています。ガプチェ氷河は小さいとはいえ、雪崩涵養型で、最近末端が融けてできた氷河湖に大規模雪崩が直接落下すると、鉄砲水のように氷河湖決壊洪水が発生するので、小さな氷湖ですが、要注意です(資料3)。

    写真4 ネパールの氷河の80%は標高4500m~6000mに分布している ( Samjwal Bajracharya ;;ICIMOD)。

資料1
Glacier Status in Nepal and Decadal Change from 1980 to 2010 Based on Landsat Data (2014)
Bajracharya, S. R.; Maharjan, S. B.; Shrestha, F.; Bajracharya, O. R.; Baidya, S.
http://lib.icimod.org/record/29591
資料2
ヒマラヤ寒冷圏自然現象群集の将来像―生態的氷河学と自然史学の視点からー. 1997, 地学雑誌, 106, 2, 280-285.
資料3
2012年ヒマラヤ・フィールド報告
−セティ川洪水とマディ川氷河湖決壊洪水の原因−
雪氷研究大会(2012・福山)要旨

氷河湖決壊洪水
 すでにお伝えしましたように、ぼくは「氷河湖決壊洪水問題を報告(写真5、発表資料)し、小さい氷河湖が危険で、ツラギ氷河湖のような大きな氷河湖は比較的安全であることから、大きな氷河湖であるイムジャ氷河湖でUNDPなどが人工的な水路建設のプロジェクトを進めているのは再検討した方が良い」と発表したところ、そのプロジェクトの関係者から反論を受けましたが、よくよく聞いてみると、イムジャ氷河湖の水路建設のプロジェクトは最初に予算ありきのプロジェクトで、日本でもよく問題のなるような政治的判断でプロジェクトを決定したとのことでした。しかし、今回指摘した危険な小さな氷河湖であるホング・コーラ沿いのチャムラン峰周辺の小さな氷河湖の現地調査をICIMODがさっそくとりあげてくれ、今年中には現地調査を実施するとのことで、心強く思ったしだいです。

発表資料
Hiroji Fushimi (JSSI) Why is a large glacial lake safe against GLOF (Glacial Lake Outburst Flood) ?

                                                      写真5 氷河湖決壊洪水問題のポスター


PS
  今回の会議に参加している100名ほどの関係者の旅費や滞在費を賄うのは大変と思われるが、アメリカやノルウェー大使館などが後援しているそうです。日本も、上記のような問題のある援助をするよりも、このような事業への積極的な支援をして欲しい、と感じました。



2014年5月9日金曜日

ネパール2014春調査報告7

ネパール2014春調査報告 7 -マナスル Day -


今日は1956年5月9日、日本隊が8千メートル峰のマナスルに登った日ですので、国際
山岳博物館では朝8時から1時間ほどマナスルモデルの前で、マナスルDayを祝いました。


50名ほどの関係者が集まり、まず1分間の黙黙から始まり、マナスル登頂58年を偲ぶとともに、
関係者の中にはHIV/AIDSの方もいて、近々エベレストを目指すので、協力を求めていました。

今日の会がダウラギリ、エベレスト、アンナプルナDaysとつづく最初の行事です。とりあえず、その時の写真をお送りしますので、ご覧ください。それでは、ナマステ!


PS
安藤久男さんからは早速下記のようなメイルが来ました。

マナスルday、よいイベントだ。ご苦労さん、ありがとう。
今後このようなイベント考えてください。IMMの活性化を!

*写真説明
3枚の写真はいずれも今朝のマナスルDayの会場で撮ったものです。




2014年5月4日日曜日

ネパール2014春調査報告 6

ネパール2014春調査報告 6


                                           写真1 見えますか。スモッグに隠されたマチャプチャリ峰(52日)

                      写真2 トウモロコシ畑の除草をする女性(53日)

最近のポカラはスモッグがひどく、ヒマラヤが良くは見えません(写真1)。豪雨と雹で空がきれいになるのですが、それでは農家の人が大変困ります。今はトウモロコシ(ネパール語でマッカイ)の成長期ですので、農家の人は適度のマッカイ コ パニ(トウモロコシ  雨)を望んでいます(写真2)。ぼくのようなよそ者は豪雨と雹の激しい雨を、地元の農家の人はトウモロコシのためのやさしい雨を望みます。ポカラに居て、うまいこと両立しないのが最近の感想です。ただ、スモッグを減らし、大気汚染さえなければ、両立するような気がします。そこでぼくは、2008年からポカラの国際山岳博物館で学芸員をしましたので、その年の米国オバマ大統領のスローガン「Yes, we can.」をもじって、下記のような展示をおこないました。

     "Yes, we can." 富士山が東京から見えるようになったように、努力すれば、マチャプチャリもポカラから見えるようになる。

さて、先日の氷河湖調査でお世話になったジャガート村のチェ・バハドゥール・グルンさん(資料1)が子供さんを連れて、国際山岳博物館を訪ねてくれました(写真3)。子供さんのユケシュさんがポカラの寄宿学校にいるので、見舞いに来たのですが、ぼくには大好きなトンパ(発酵したヒエにお湯を注いでストローで飲む、日本酒の熱燗に似たお酒)とロクシ(自家製の焼酎)を持って来てくれたのです。聞くと、ジャガートの彼の村からポカラまでオートバイで約5時間かかって、リックに担いで来てくれたとのことです。彼は「息子に日本語を習わせて、日本に行ってほしい」とユケシュさんの前で言ってました。息子さんがネパールと日本の将来の架け橋になってくれることを願うのみです。

資料1 2014年春ネパール調査(4) ツラギ
http://glacierworld.weebly.com/20142418026149124931249712540125233551926619412288124841252112462.html

            写真3 博物館を訪ねてくれたグルンさん親子(手前にお土産のお酒:53日)

ところで、来週はICIMOD(総合的山岳開発国際センター)の国際会議で、友人、BajracharyaさんやMoolさんから会議の詳しい内容が届き、参加者は発表内容の要旨を331日までに送ることになっていましたが、55日までに送れば、ポスター・セッションに参加できると言ってくれましたので、大急ぎで下記原稿を仕上げました。ぼくの話の内容は上記資料1と、前にお伝えした「なぜ、ネパールの大規模氷河湖は決壊しないのか」(資料2)で、“大きな氷河湖は比較的安全なので、自然破壊を伴う人工的な水路をを作るような工事はしないこと。氷河湖決壊洪水の危険性が高いのは小さな氷河湖なので、必要な手立てをする必要があること” (写真4)を主張しようと思っています。

資料2 なぜ、ネパールの大規模氷河湖は決壊しないのか
ネパール中央部マナスル地域のツラギ氷河湖の水位低下現象とGLOFリスク低減機構
http://glacierworld.weebly.com/112394123801228912493124971254012523123982282335215271692770327827282461239927770227301237512394123561239812363.html

                        写真4 会議で発表する基本的内容

Why is a large glacial lake safe against GLOF ?
Hiroji Fushimi
Japanese Society of Snow and Ice
1 Preface
Since 1970, I have  been studying glaciers and glacial lakes in Nepal Himalayas and I found that many glaciers are receding and glacial lakes are expanding, and the Mingbo (Nare) GLOF occurred in 1977 when I had stayed in Khumbu (Fushimi et al,1985) . After that, we had experienced the Lagmoche (Digtso) GLOF in 1985 and the Saboi GLOF in 1999 in the Khumbu region and nearby. I must notice that all of them are smaller glacial lake which area is less than 1 km2.and no larger glaciers occurred the GLOF in the region.

2 Why is a large glacial lake safe against GLOF ?
The Tulagi glacial lake is located at the upper part of the Dana Khola, one of the Marshangdi’s tributary river in the west of Mt. Manasulu. The water level of Tulagi glacial lake has been lowered due to erosion at the end moraine and the  erosion rate is about 10 cm/y since the 18th  glacial advance that indicates to lower the GLOF risk. At the same time, the lake level continuously lowers in recent years since 1990’s. I noticed that the same kind of the lowering lake level is occurring in Imja glacial lake.

The end moraine structure of a large glacial lake is strong enough to prevent the occurrence of the GLOF that is completely different from a small glacial lake with steep cliff at the upper part of the lake producing avalanches directly dropping into the lake causing TUNAMI to destroy the fragile end moraine ice-cored and cause the above GLOF in 1977, 1985 and 1999 in Khumbu area and nearby, east Nepal.

3 No man-made canal construction necessary for the larger glacial lake like the Tulagi
The United Nations Development Programme (UNDP) and Nepal made an agreement to implement the Community Based Flood and Glacial Lake Outburst Risk Reduction Project (CBFGLOF) to minimise threats of the Imja glacial lake to nearly 100‚000 people (The Himalayan Times, 2013).

There is a possibility that one of the large glacial lake, the Imja, is also taking the same process which I observed in the Tulagi glacial lake, so we must study and make  necessary field observations before making such kind of the big project experienced in the Tso Rolpa glacial lake before. As the ICIMOD (2011) reported “Imja Tso has less likihood of outburst than Tulagi lake”, here I reported the Tulagi is safe agaist the so called GLOF, so  I don’t know why the UNDP and Nepal government made such an above agreement. Such sort of man-made canal construction kills the valuable and prestine Himalayan nature, unless it is truly inevitable.

4 Conclusions and Recommendations
What is the higher risk of the GLOF ?; It is not a large glacial lake, but a small glacial lake.  Relatively larger glacial lakes such as the Tulagi and the Imja are safe against GLOF, however we must be very careful about the small glacial lakes developing, for example, in the Hong Khola near Mt. Chamlang and it is needed a man-made treatment to prevent the GLOF to such small glacial lakes with steep cliff in the upper part of the accumulation area, but not to the large glacial lake. 

5)  References
1) Fushimi et al, 1985 Nepal case study: Catastrophic Flood. Techniques for prediction of runoff from glacierized areas, International Association of Hydrological Sciences, 149, 125-130.
2)  The Himalayan Times 2013 Nepal, UNDP ink deal on cutting flood risk.
http://www.thehimalayantimes.com/fullNews.php?headline=Nepal%2C+UNDP+ink+deal+on+cutting+flood+risk+&NewsID=383913
3)  ICIMOD  2011  Glacial Lakes and Glacial Lake Outburst Floods in Nepal. Kathmandu: ICIMOD.


それでは、久しぶりに、ポカラと違って、水・大気・ゴミ汚染がもっとひどいカトマンズに行ってきます。ナマステ!




2014年5月1日木曜日

ネパール2014春調査報告 5

ネパール2014春調査報告 5 -断層と水の挙動ー

             写真1 Hot SpringSinkholeRainbow Trout Farmingの位置と地質構造図

ポカラ北方のセティ川流域(写真1)で、(1)ディプランの温泉(Dhiprang Hot Spring)が2年前の大洪水で壊滅的被害がでたので、その復興の現状を見届けたいと思い、2014429日に調査した。また「Pokhara Sinkhole」(カトマンズ・ポスト紙;2013126日))が半年ほど前から発生しているという陥没地形の現地を、国際山岳博物館学芸員の赤羽さんに2014425日に案内していただいた。なお、(3)Rainbow Trout Farmingは、ディプランの温泉の調査の折、見学してきた。

                      写真2 Dhiprang Hot Springの位置と地質構造図

(1)    Dhiprang Hot Spring (ディプラン温泉)

          写真3 地元の人が撮ったDhiprang Hot Springに押し寄せるセティ川洪水の第1波

      写真4 赤羽さんが撮った洪水前のDhiprang Hot Spring(セティ川の右岸H1と左岸H2に温泉場があった)

 
 ヒマラヤ山脈の南側に断層帯が東西に走り、そこを深い谷が浸食しているので、花崗岩を熱源とする温泉が東西に分布している。ポカラのセティ川沿いのディプラン(写真1,2)もそのような温泉のひとつである。ところが2年前、地元の方のディプランから撮られた写真によると、2012年5月5日午前9時38分に大洪水が押し寄せ(写真3)、写真中のB周辺の人たちは洪水に飲み込まれてしまった。その洪水前に現地を訪れた国際山岳博物館学芸員の赤羽さんの写真を見ると(写真4)、セティ川を左岸から右岸側のディプランに渡る吊り橋(A)の上流側の右岸にH1、左岸にH2 の温泉がわいていたのが分かる。ところが、2年前の洪水(参考資料1)で、両岸の温泉(H1とH2 )とともに、Bの施設も全滅したのである(写真5)。

参考資料1
調査報告  セティ川洪水とマディ川氷河湖洪水
http://glacierworld.weebly.com/312475124861245124029279462770012392125101248712451240292770327827282462794627700.html
セティ川洪水

http://glacierworld.weebly.com/5124751248612451240292794627700.html

           写真5 洪水直後のDhiprang Hot Spring(写真3C地点近くまで洪水が押し寄せた)

         写真6 洪水直後のDhiprang Hot SpringDhiprangへ通じる橋Aまで洪水が押し寄せた)

                   写真7 Dhiprangへ通じる橋Aの基部は修理されていた。

           写真8 Dhiprang Hot Springの右岸H1は再開されていたが、左岸H2は消滅した。

                           写真9 Dhiprang Hot Springの右岸H1

                 写真10  Dhiprang Hot Springの右岸H1の祠にお参りする婦人


 ディプランへ左岸側からわたる橋(A)はかなりの被害をこうむっていた(写真7)が、2年後の今回は修復されていた(写真8)。そして、左岸側の温泉は壊されたままだが、右岸側の温泉は修復されて(写真8、9)、温泉客が温泉わきの祠に瀬ん線香をたき、盛んに拝んでいた(写真10)。おそらくは、自分の健康回復と洪水が来ないことを祈っているのであろう。橋(A)や温泉(H1)が回復してきた(写真11)とはいえ、何回かの洪水流が押し寄せてきた結果形成された河岸テラス(T1とT2)のうち、比高の低いT2が後からの大水によって浸食・除去されている様子が分かる(写真12、13)・

                  写真11  Dhiprang Hot Springの全景(パノラマ写真)

           写真12 セティ川洪水で形成された洪水堆積物の高位段丘(T1)と低位段丘(T2

              写真13 洪水後の増水で洪水堆積物の低位段丘(T2)は浸食されている。

(2) Pokhara Sinkhole (ポカラ陥没地形)

                        写真14  Jumleti Sinkholeの位置と地質構造図

                   写真15 水田に形成した直径2mほどのSinkhole(人物は赤羽さん)

                          写真16 直径10mを越えるSinkhole

                     写真17 表層の礫層が陥没し、Sinkholeを形成する。


Pokhara Sinkhole」(カトマンズ・ポスト紙;2013126日))が半年ほど前から発生しているという陥没地形の事が報告されている現地を、国際山岳博物館学芸員の赤羽さんが連れて行ってくれると言うので、博物館員のラジャン氏とともに2014425日に参加してきた。現地はポカラ北部のセティ川支流カリ・コーラ右岸の河岸段丘(写真14)で、その下流には「Mahendra Cave」や「Bat’s Cave」とよばれる鍾乳洞とおぼしき洞穴があるので、鍾乳洞の陥没災害かと当初は思って行ってみたのであるが、現地で見ると、河岸段丘面のテラス堆積物表層に1m未満の小さいものから、大きいのは10mを越える陥没地形が(写真1516)、いたるところに(一見無秩序にみえるのだが)分布ししている。陥没の原因となる空隙は礫層内にある(写真17)ので、鍾乳洞の陥没地形とは違う、と解釈できた。現地には、かなり立派な3階建の民家が建てられていた(写真18)が、恐ろしくて住民は避難し、無人になっているそうだ。地元の地質屋さんの提言で、地下水を抜くための排水工事がかなり大規模に進められた(写真18)が、陥没地形の発生はさらに続いたために、その工事はやむなく中止され、赤羽さんの話によると、地元の地質屋さんは面目を失ったとのことである。

                      写真18  Sinkhole地帯の民家と水抜き用の溝

               写真19 テラス堆積物の礫層(T)の下に湖成堆積物の粘土層(L)がある。

             写真20 テラス堆積物の礫層と湖成堆積物の粘土層の境に大量の水が流れる。


さて、問題の河岸段丘堆積物は下部の湖底層とおもわれる粘土層の上を礫層が覆い、礫層の上部1mほどが水田・畑地として利用されている(写真19)。永年にわたり、上部礫層表面の水田耕作が維持されてきたなかで、止水面になる下部粘土層と上部礫層の境をかなりの地下水が流れている(写真20)のをみると、上記の地元の地質屋さんの指摘もある程度はうなずけるのであるが、とにかく大量の地下水が上部礫層内を部分的に浸食し、空隙をつくることによって、いたるところに、陥没地形を形成したのではないか、と解釈できた。しかし、なぜ、礫層内をいたるところで浸食するほどの大量の地下水が流れ込んだのか。

                    写真21  Jumleti Sinkhole地帯の山腹を新しい道路が走る。
新聞記事をみると、現地はポカラ北部ののアルマラ(Armala)地区と報道されているが、地図をみると、アルマラはカリ・コーラの左岸で、陥没地形のある右岸はジュムレティ(Jumleti)村にあたると思われるが、そのジュムレティ村の山腹に林道が造成されていた(写真21)ので、もしかしたら、その林道やのり面から雨水が侵入し、大量の地下水を供給したのではないかと考え、村人に聞くと、村の中を通る道が陥没したので、迂回道路つくるために1か月前に造成したとのことであった。陥没地形は半年前から発生しているの、その林道造成は原因にならない・せは、上部礫層を浸食した大量の地下水の供給源は、何なのか。

そこで次に「Engineering and Environmental Geological Map of Pokhara Valley」を見ると、カリ・コーラ周辺には東西・南北性の断層群が分布している(写真14)ので、これらの断層沿いに大量の地下水が浸み込めば、表層の段丘礫層内部を浸食し、空隙を作ることが可能なのではなかろうか、との思いにいたった。ディプランの温泉と共通する、断層沿いの地下水の挙動である。そこで、とりあえず、去年の地震活動の記録を調べると、20130628 2040分と20130307 0149分にネパールのほぼ同じ地域(北緯28.741/東経82.297度と北緯28.758/東経82.294度)でともにマグニチュード5、震源の深さともに約10kmの地震が2回連続して発生しているのである。はたして、この地震が断層沿いに大量の水を供給するようになったのであろうか。ただし、このような断層系はこの地域に数多く見られるので、断層が効いているとしても、なぜジュムレティ村周辺だけに「Sinkhole」が発生したのか、の疑問は依然としてついて回る。このような陥没地形(Sinkhole」)をご存知の方がおられたら、お知恵を拝借したいものである。

(3)  Rainbow Trout Farming (ニジマス養殖)

                    写真22  Rainbow Trout Farmingのアムリット・グルンさん


 現地調査の途中にニジマスの養殖場があったのよることにした。最近のポカラでは、大きなレストランに行くと、ニジマス料理を食べることができるようになった。冷たい川で生息するニジマスだから、セティ川の氷河の水を利用しているのかと思っていたが、そうではなく、セティ川支流の氷河のないブルジュン(Bhurjung Khola)中流で、山腹からの地下水を利用して、ニジマスを養殖しているとのことであった。名古屋や千葉のニジマス養殖で修行してきた場長、アムリット・グルンさん(写真22)によると、地下水だから、水温は17から18度で、年間を通じて一定し、ニジマス養殖には良い環境で4年前に15人を雇用し、養殖事業を開始したとのことであった。この地下水が断層帯からのものであるとすれば、先の「Pokhara Sinkhole」の原因となる大量の地下水起源と関係す可能性も考えられるが、はたしてどうか。
  アムリット・グルンさんは、ポカラに30年以上も住んでいる和田正夫さんをご存知で、ご好意でニジマスを分けていただいたので、その晩は和田さんの家庭で奥さまに料理していただき、塩味で焼いた美味しいニジマスとネパールの伝統的なダル・バート(豆スープとご飯など)をいただくことができた(写真23)。和田さんの広い畑のある庭を眺めながら、「ポカラでの作物づくりにとって、雹が大敵」等の話をお聞きするとともに、お婆さんが作ったすばらしいロクシ〈焼酎〉に酔いしれながら、時折魚が跳ねる目の前の池では、カエルが鳴いてくれるのを聞くのは実に贅沢なひと時であった。

                 写真23 和田さんの家庭でご馳走になったニジマスとダル・バート



次は、5月13日~16日にカトマンズで開かれるICIMODのヒマラヤ地域の国際シンポジウムの内容などについてを報告する予定です。それでは、みなさまもご自愛ください。ナマステ!