2013年8月6日火曜日

Gyajo Glacier

国際山岳博物館展示


Eco-Tour (5)  Gyajo Glacier


1970年以来、ギャジョ氷河を調査しています。1980年代までは前進と後退をくりかえす動的平衡状態でした(文献1)が、それ以降現在まで、ギャジョ氷河は全体的に薄くなり、著しく縮小しています。そして、1980年代までの氷河状態から、1990年代以降は雪渓状態に遷移(文献2)し、末端部には氷河湖が拡大しています。

文献
1)Fushimi, H., Ohata, T. and Higuchi, K. (1979)  RECENT FLUCTUATIONS OF GLACIERS IN THE EASTERN PART OF NEPAL HIMALAYAS. SEA LEVEL, ICE, AND CLIMATIC CHANGE, IAHS, 131, 21-29.
2)伏見碩二, 瀬古勝基, 矢吹裕伯  (1997)  ヒマラヤ寒冷圏自然現象群集の将来像―生態的氷河学と自然史学の視点からー.  地学雑誌, 106, 2, 280-285.












文献1)a

文献1)b


文献2)
 Comparison between the structure of Gyajo glacier in 1970 and 1995.

(1970年と1995年のギャジョ氷河の構造比較図)
ギャジョ氷河は1980年代までは前進と後退をくりかえす動的平衡状態、言わば健康的な氷河状態でしたが、1990年代以降は急激に融解がすすみ、1995年には氷体が3つに分かれ、末端には氷河湖ができ始めました。3つに分解した氷体は氷崖で仕切られ、氷河流動を止めた雪渓状態になっている、したがって、1980年代までの健康的な氷河状態の時は、質量収支の平衡線高度は氷河の中央部分<5400m)にありましたが、1995年には氷河の上部(5800m)以上に上昇ている、と解釈できました。

上記のギャジョ氷河の構造図は1970年に行った現地調査の報告(文献3)によっている。
文献3
ON PREFERRED ORIENTATION OF GLACIER AND EXPERIMENTALLY DEFORMED ICE. 1972, JOURNAL OF GEOLOGICL SOCIETY OF JAPAN, 78, 12, 659-675.

また、次に述べるギャジョ氷河などのミクロな構造要素の結果に、クンブ地域の氷河変動をまとめた報告(文献4)もある。
文献4
東部ネパール・ヒマラヤの氷河構造と氷河変動. 1982, 名古屋大学理学博士論文, 登録番号論理博第360号, 219p., 10表 , 120図 .


気泡と透明氷が互層する氷河氷の Bubble Foliation 構造

ギャジョ氷河の各種構造図

ギャジョ氷河上流部Firnで観察された細粒氷の結晶構造

ギャジョ氷河下流部末端近くで観察された粗粒氷の結晶構造

ギャジョ氷河上流部の細粒の結晶方位分布(左)と下流部の粗粒の結晶方位分布(右)

一軸および二軸圧縮実験による結晶主軸方位分布の定方位性(左は融点、右は-5°C 実験)



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