2024年12月1日日曜日

「またトラ」と地球環境

「またトラ」と地球環境

1)    はじめにー「またトラ」再現―
 「またトラ」が現実になってしまった。「トラ」とは、アメリカ前大統領のトランプ氏(写真1の左)のことである。大接戦の予想に反し、トランプ前大統領は選挙人数で過半数の270を大きく超え、一般投票でも対立候補のカマラ・ハリス副大統領を圧する結果となった。「またトラ」の「トランプ・リスク」については、前回のブログ(資料1)でふれたように、「アゼルバイジャンの首都バクーで2024年11月11日から開かれた国連の気候変動枠組み条約の締約国会議COP29はファイナンス(資金)COPと呼ばれ、気候変動に脆弱な途上国が対策を進めるために必要な資金を国際的にどのように集め、配分するかについての合意を目指しているが、資金目標で何らかの合意につなげたとしても、2024年11月5日のアメリカ大統領選挙でトランプ前大統領がホワイトハウスに戻ることになれば、COP21のパリ協定から離脱したかつての彼が行った対応と同様に、COP29の新協定を再びほごにするのは確実だ」(資料2)との「トランプ・リスク」があるように、「またトラ」の出現が地球温暖化対策へどのような影響をあたえるかが気がかりだ。
資料1
大西洋の南北循環の停止と地球環境への影響
https://glacierworld.net/home/ecological-effect-of-atlantic-ocean-flow/
資料2
COP29につきまとうトランプ氏の影
2024/10/18
https://mainichi.jp/articles/20241017/k00/00m/030/171000c?utm_source=article&utm_medium=email&utm_campaign=mailasa&utm_content=20241019
 「またトラ」のもともとの「もしトラ」のニュアンスも、「不法移民が犬や猫を食べている」などと事実無根の人種差別的発言をするトランプ前アメリカ大統領が再選されることを心配する意味が込められていたが、今回の大統領選を見ると、アメリカの西岸と幾つかの州を除き、東岸から中央部の多くの州がトランプ氏を支持した共和党のシンボル・カラーの赤(写真1の右)に染まり、「またトラ」が実現した。つまり、選挙結果を左右すると言われた7つの激戦州すべてでも勝利した「レッド・ウェーブ」である。しかも、同時に行われた議会選挙においては上院で共和党は過半数に早くも達し、ついでに下院も制したので、共和党が大統領と上下両院を制する「トリプルレッド」を獲得した。アメリカでは議会に立法権と予算編成権があるとともに、上院は閣僚や大使、連邦最高裁判事の人事承認権を握るので、トランプ氏は「トリプルレッド」によって議会のチェック機能は弱まり、選挙戦で彼が訴えた「アメリカ・ファースト」(米国の内向き化)のさまざまな方策を実現しやすくなった。これで、トランプ氏による大統領権限の強化がますます大幅に進むのは確実だろう。
 そこでトランプ氏は「米国はわれわれに前例のない強力な使命を与えてくれた。我々は新たな高みに達した。米国に関するあらゆることを修復していくのだ」と選挙の過半数が判明する最終集計が済む前の2024年11月6日16時43分に早々と勝利宣言した(写真1の左)。この「またトラ」出現の影響は、トランプ氏が第47代アメリカ大統領に就任する2025年1月からは、世界各国との政治や経済、さらにロシア・ウクライナやイスラエル・パレスチナ戦争などの多方面におよぶであろうが、「またトラ」が現実化した今、特に地球環境へどのような影響をあたえるかを考えてみた。
  
写真1 (左)2024年11月6日16時43分に早々と勝利宣言したトランプ氏(NHK TV);(右)共和党が制した赤色の各州のレッド・ウェーブ分布(NHK)

2) 権威主義的な独裁者の「またトラ」
 トランプ氏は新政権の2期目の人事について何よりも忠誠を求めていることを明らかにしている。1期目で自身に背を向けた高官らに苦しめられたトランプ氏は、人事決定がおそらく1期目の最大の誤りだったと振り返っている。そこで政権の幹部人事の任命について、トランプ氏は議会や通常の閣僚承認プロセスを回避しても構わないとまで明言している。毀誉褒貶の多いトランプ氏は重罪で有罪評決を受けている(注)が、最高裁も現在では保守派が圧倒的多数を占めており、トランプ氏の2期目では高等裁判所が却下した訴訟をひっくり返す可能性がある。また、最高裁が大統領に在職中の公的な行為について免責を認める判断を下したことを受け、今回の勝利により、トランプ氏は直面しているほとんどの訴訟を説き伏せることが可能になるとみられる。従って、トランプ氏がホワイトハウスに戻れば、2021年1月6日の議会乱入事件で逮捕・訴追された関係者を恩赦にするとともに、彼にかけられた4件の事件についても大統領権限で訴追を取り下げるか恩赦をあたえるとも伝えられる。敵味方を区別し、分断を深刻化させているトランプ氏は公開、非公開の場を問わず、報復することで頭がいっぱいになっているようだ。彼は怒りを募らせ、それをほとんど隠そうともしていない。「トリプルレッド」になった2期目はトランプ氏が提案する極めて過激な措置を阻止する手だての多くは存在しないことになる。トランプ氏は、ロシアのプーチン氏や中国の習近平氏などと同様に、権威主義的な独裁者の地位に上りつめたかのようだ。

米共和党のトランプ次期大統領が不倫相手の口止め料を隠すために業務記録を改ざんしたとされる事件を巡り、東部ニューヨーク州の検察は2024年11月26日に予定されていた量刑言い渡しの延期を認める方針を示した。2029年の大統領任期が終了するまで裁判を停止する選択肢も示す一方、訴追手続きの取り下げは否定したが、トランプ氏の弁護団は、「大統領の統治能力への妨害を避けることが必要だ」として、評決の無効を申し入れていた。AP通信によると、検察側は19日に裁判所に提出した書類で、大統領の任務の遂行は妨げられてはならないという憲法上の要請と「何人も法を超越しない」という法の支配の原則が相反する点を考慮する必要があるとし、任期終了後まで裁判を凍結することも選択肢だとした。さらに、不倫の口止め料捜査を担当した司法省のスミス特別検察官は、2025年1月のトランプ氏の大統領就任前に辞任する方針と報じられている(資料3A)。この事件のほか、トランプ氏は①20年大統領選の結果を覆そうとした事件②大統領退任後に機密文書を持ち出した事件③20年大統領選でジョージア州当局に干渉した事件の三つで起訴されている。①②の連邦法違反事件は、「憲法により大統領の在任中の訴追、起訴は禁じられている」とする従来の司法省の立場から、大統領に就任すれば訴追手続きが取り下げられる見通しだ。すると、トランプ氏はSNSに「私は粘り強く闘い、あらゆる逆境に負けず、そして勝利した」(資料3B)と投稿したのを見るにつけ、あたかも何をしても罰せられないかのような大統領の権威をかざして傍若無人にふるまう「またトラ」の出現で、米国の民主主義が重大な試練に直面し、これまで民主主義国だと思われてきたアメリカの三権分立がゆがめられていると感じるのは、はたして僕だけなのだろうか。ヨーロッパや中東地域などでの戦争(注)、地球温暖化、感染症対策などの国際協調でしか対処できない課題は山積するので、日本を含む民主主義国は、予断を許さぬ米国の動きを念頭に、多国間の協調体制をさらに強固にする必要がある。トランプ氏を巡っては、保守派優勢の連邦最高裁判所が2024年7月、大統領在任中の公的行為に「免責特権」が適用されると判断した。大統領は「法の上に立つ王」なのだろう。アップルのクック、メタのザッカーバーグ、グーグルのピチャイ、マイクロソフトのナデラ、アマゾンのベゾス各氏もトランプ氏にすり寄っている(資料3C)のがなげ悲しい。
資料3A
トランプ氏「不倫口止め料」裁判 量刑言い渡し延期認める NY検察
2024/11/20
https://mainichi.jp/articles/20241120/k00/00m/030/007000c
資料3B
検察がトランプ氏への起訴取り下げ求める 議会乱入事件など
2024/11/26
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241126/k10014649551000.html
資料3C
教皇の指輪とトランプ氏
2024/11/29
https://mainichi.jp/articles/20241129/ddm/002/070/042000c

アメリカのバイデン大統領はイスラエルとレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの戦闘をめぐり、イスラエル・レバノン両政府がアメリカの停戦案を受け入れたと発表した。イスラエルとヒズボラの間で停戦が守られ、中東の緊張の緩和につながるかが焦点となる。停戦は現地時間の2024年11月27日午前4時、日本時間の27日午前11時から始まるとしている。
資料3D
イスラエルとレバノンが停戦合意 バイデン大統領が演説で発表
2024/11/27
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241127/k10014650721000.html
 トランプ氏が権威主義的な独裁者の性格を持っていることは、“「もう一つの事実」波紋 就任式「参加者最多」、大統領顧問が擁護”のタイトルで報告された資料4にも表れている。2017年1月20日のトランプ米大統領の就任式の参加人数を巡り、「過去最大の聴衆だった」としたスパイサー大統領報道官の発言を、コンウェー大統領顧問が22日のNBCテレビ番組で「もう一つの事実だ」と説明し、擁護したことが波紋を呼んだ。政権に批判的な米メディアは「『もう一つの事実』は事実でなく、うそだ」と激しく反発した。就任式参加者数について米メディアは直後から、過去最多の180万人だった2009年のオバマ前大統領の就任時に比べて少なかったと報道した。これを受けスパイサー氏はホワイトハウスで記者団に対し「メディアは不誠実」と敵意をあらわにし、史上最大説を強弁した。ところが、NBCのインタビューで「大統領はなぜ報道官にうそをつかせるのか」と問われたコンウェー氏は「代替」や「もう一つの」を意味する「alternative(オルタナティブ)」という言葉を使い、「スパイサー氏はメディアの報道に対して、もう一つの事実を示していただけ」と反論したのである。スパイサー氏は記者会見で、「史上最大の聴衆」はインターネット中継などを見た人を含めたものだと主張を修正したが、コンウェー氏の「もう一つの事実」発言は、米メディア以外も巻き込んで、インターネット上で話題になり続けた。米国の辞書出版社、メリアム・ウェブスターはツイッターで「事実とは、客観的な現実として提示される情報のこと」とコメント。写真2の左を見れば、トランプ前米大統領の就任式の参加人数が写真2の右のオバマ前々大統領就任時に比べて著しく少なかったことは歴然としている。英BBCテレビは「事実認識の共有なしに、民主主義は機能しない」と伝えた。はたして、2期目のトランプ氏の就任式では参加人数をどのように発表するのであろうか。
  
写真2 (左)2017年1月20日に行われたトランプ大統領(当時)の;(右)2009年1月20日のオバマ大統領(当時)の就任式光景=いずれもワシントンの連邦議会議事堂前で撮影、ロイター
資料4
「もう一つの事実」波紋 就任式「参加者最多」、大統領顧問が擁護
2017/1/26
https://mainichi.jp/articles/20170126/org/00m/030/006000c
 トランプ次期大統領は2024年11月13日、バイデン大統領の招待で、2021年1月の退任後初めてホワイトハウスを訪問したことに、トランプ氏の自己中心的な生き方が表れている。二人が2024年6月28日のテレビ討論会で相対した時は握手しなかったが、今回は大統領執務室で握手を交わし、互いに笑顔を見せる場面がテレビに現れていた。前回の20年大統領選では、落選したトランプ氏が敗北を認めず、対面による新旧大統領の恒例の引き継ぎは行われなかったのをみても、トランプ氏の「アメリカ・ファースト」ならぬ「トランプ・ファースト」の身勝手さがしのばれる。おまけに、このホワイトハウスの訪問前には下院共和党の議員団の会合に出席し、憲法が改正されない限り、2期目が最後となるのを知っていながら、「あなたがたが何かしない限り、もう一度立候補することはない」と身勝手なジョークを飛ばしたというのだった(写真3の左;資料5A)。さらに、ドイツのアンゲラ・メルケル前首相が「Freiheit」(自由)と題した回顧録を出版し、そのなかで、トランプ氏の人物評について「あらゆることを不動産事業家の視点から考え、国と国も競争関係にあると考えていた。協力が多くの人に繁栄をもたらすとは信じていなかった」(資料5B)として価値観が異なるので、関係構築に苦慮したことを指摘している。メルケル氏は、2005年から16年にわたってドイツの首相を務め、ギリシャを発端とするユーロ危機で強い指導力を発揮したほか、人道主義を重んじて、中東シリアからの難民危機などへの対応にもあたったヨーロッパを代表する政治家である彼女の指摘は、まさに「正鵠を射る」の諺のごとしだ。
資料5A
トランプ氏がバイデン氏と会談、笑顔も 政権移行への協力に謝意
2024/11/14
https://mainichi.jp/articles/20241114/k00/00m/030/004000c
資料5B
独メルケル前首相回顧録出版 プーチン大統領 トランプ氏を語る
2024/11/27
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241127/k10014650431000.html
 そのようなトランプ氏はそもそも元不倫相手への口止め料を不正に処理した罪で有罪の評決が出ているとともに、他にも裁判をかかえている被告人である(このような人物が大統領に当選するのはいかにもアメリカらしい。アメリカの憲法では、大統領選の立候補の条件を米国生まれで35歳以上、米国に14年以上在住と定めているのみで、犯罪歴による制限はなく、有罪になっても出馬できるそうだ。また日本では、パワーハラスメント疑惑などをかかえ、兵庫県議会から不信任決議を受け失職した斎藤元彦前知事はSNSや動画サイトを駆使した選挙戦略で劣勢を覆して兵庫県知事選挙で返り咲いたが、それはともかく)剛腕の独裁者で「もしトラ(“虎”)」でもあるエゴ丸出しのトランプ氏は「ディール(取引)」を得意としている(資料6)から、第4章の「備忘録」でも指摘しているように、日本の政局担当者たちは小さな野党同士の内向きの政争に明け暮れないで、小異を捨てて大同につく覚悟で、トランプ氏の強引な「ディール」戦略に大同団結で立ち向かってほしいものだ。
資料6
2期目のトランプ政権、1期目とは全く異なるものになる理由
2024.11.07 Thu posted at 17:01 JST
https://www.cnn.co.jp/usa/35225870.html

3) 「またトラ」の地球環境への影響
A)「掘って、掘って、掘りまくれ」
 米国で共和党のトランプ前大統領の返り咲きが決まり、バイデン政権が推し進めてきた気候変動政策は一変するだろう。「我々は世界のどの国よりも多くの『金の液体』を持っている。サウジアラビアよりも、ロシアよりも多い」。トランプ氏は2024年11月6日未明の勝利演説(写真3の左;資料1)で、インフレ対策として化石燃料の掘削を支援する姿勢を改めて強調した。トランプ氏は選挙戦で化石燃料の掘削を支援する姿勢を改めて強調し、「掘って、掘って、掘りまくれ」(写真3の右)をスローガンに掲げ、石油・ガスのさらなる増産を通してエネルギー価格の大幅引き下げを実現すると主張してきた(資料7)。就任後ただちにパイプラインの承認や連邦所有地での掘削許可などを簡素化する手続きを進め、生産拡大を後押しするとともに、バイデン政権が2024年1月から気候変動に与える影響を考慮して、液化天然ガス(LNG)の新たな輸出許可を一時凍結しているが、トランプ氏はこの措置も撤廃する意向だ。トランプ氏が選挙戦で掲げた公約は、2025年1月の就任初日から大統領令を通じて実行に移し始めることになるであろう。米国の石油・天然ガス生産量は過去最高水準になる見込みだ。
アメリカのトランプ次期大統領は、「国家エネルギー会議」を新たに設け、この会議には、エネルギー開発の許認可や、生産や流通などに関わるすべての省庁や機関が参加し、議長には、全米でも有数の化石燃料の資源を抱える中西部ノースダコタ州のダグ・バーガム知事を起用する。バイデン政権の気候変動対策を大きく転換し、トランプ氏が訴えてきた化石燃料の増産などに取り組むので、化石燃料資源を大量に使用することになり、国連のCOP会議などの温暖化防止の宣言に反して、アメリカは地球温暖化をますます促進させる政策をとることが危惧される。
資料7
「掘って掘って掘りまくれ!」 トランプ氏主張に熱狂する支持者
2024/7/29
https://mainichi.jp/articles/20240726/k00/00m/030/133000c
  
写真3 (左)米共和党の下院議員らとの会合で発言するトランプ氏(毎日新聞);(右)「掘って、掘って、掘りまくれ」の石油掘削機(毎日新聞)
 米大統領選で勝利したトランプ氏は次期政権の閣僚・高官人事にさっそく着手している。「官僚機構を解体し、過剰な規制を撤廃し、無駄な支出を削減し、連邦政府機関を再編する道を切り開くだろう」とトランプ氏は電気自動車(EV)大手テスラ社の会長である実業家のイーロン・マスク氏を新設の「政府効率化省」のトップに任命すると発表した。膨大な資金援助をしたとされる選挙の功労者のマスクさんを起用するなどトランプさんに忠実なイエスマンをそろえるようだ。トランプ氏は声明で、「政権の発足初日、ばかげたEV義務化は廃止する。グリーン詐欺は終わりだ」(資料8)と述べるとともに、「私の政権が政府の官僚主義を解体し、過剰な規制に切り込み、無駄な支出を削減し、連邦政府機関を再編する道が開かれるために、マスク氏が第2次政権で新たな政府効率化省を率いる」と発表した。トランプ氏の支持者であるマスク氏が経営するテスラ(EV)は世界中に工場を持ち、宇宙開発企業スペースXや同社の衛星通信サービス「スターリンク」も世界展開しているように、マスク氏の戦略はグローバルなので、トランプ氏の「米国第一主義」とは正反対のように思われる。そうすると、マスク氏のテスラ販売の障害になりそうだが、そこは抜け目のないマスク氏のことだから、EV減税が廃止されれば、テスラが競争で優位に立つとの見方もあるそうだ。だが、トランプ氏はしばしば急に意見を変えることがあるので、マスク氏の影響が今後は試金石になるであろう。それにしても、マスク氏は自らのビジネスに有利になるようにルールをゆがめる利益相反の疑念がある。
資料8
「グリーン詐欺は終わりだ」 トランプ氏は脱炭素を逆行させるのか
2024/11/9
https://mainichi.jp/articles/20241108/k00/00m/030/407000c
 自分に忠実な人物を起用したがるのは政治の常だが、マスク氏以外の顔ぶれをみても、問題がでてきそうだ(資料9)。国防長官には保守系テレビの司会者ヘグセス氏だが、国防政策の経験はない。司法長官のゲーツ元下院議員は性的人身売買で捜査対象になったこともある人物(未成年者との性行為などの疑惑で就任から1週間もたたないうちに辞任に追い込まれ、フロリダ州の司法長官を務めたパム・ボンディ氏が政権の司法長官に指名された)と伝わる。国務長官のルビオ上院議員は対中国強硬派で中国政府に入国禁止の制裁を受けていると聞けば、トランプ氏は中国と話し合う気さえないようだ。安保担当の大統領補佐官に就くウォルツ下院議員はウクライナ支援に懐疑的で、ロシアとの交渉を優先させる構えだ。駐イスラエル大使に指名されたハッカビー元アーカンソー州知事は親イスラエル派で、パレスチナとの「2国家共存」を否定する。そのように全体的に共通するのは、忠実な腹心を重用していることで、司法長官の人事にみられるように、トランプ氏の独断によるミスがまかり通る危うさをはらんでいる。トランプ氏は民主党を敵視しており、リベラル派が裏で統治を支配する「影の政府」が存在してきたとの陰謀論を掲げ、「報復」を訴えてきたので、今回の人事には、その強い意思がうかがえる。「またトラ」の人事は2025年1月以降、共和党が多数を占める上院で審査されるが、適正な人選なのかどうか、民主主義の観点から見極めることを願いたい。
資料9
トランプ氏 次期政権の国防長官にFOXニュース司会者ヘグセス氏
2024/11/13
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241113/k10014636931000.html
 トランプ氏は、バイデン政権が22年に成立させたインフレ抑制法(IRA)に盛り込まれたEV購入者に対する税優遇の見直しも主張しているので、米EV市場の成長鈍化の傾向がすすめば、ガソリン車の需要を高める要因となりそうだ。そこにトヨタにとって明るい材料がでてきそうだ(資料10)。2024年10月の米国自動車販売に占めるトヨタの従来型ハイブリッド車の割合は11.4%と、前年同月の8.7%から上昇した。今後の第2次トランプ政権の下では、米政府がEV推進をあまり重視しなくなる可能性が高いと考えると、トヨタのハイブリッド車への賭けは、完全電動車に投資を集中してきた他社に比べて優位になるとともに、トランプ氏の高関税政策は日本からの輸入品へは脅威となるが、トヨタ車の多くは実際には米国で生産されているので、その障害をかわす可能性があるとみられている。そうすると、トヨタが息をまた吹き返すかもしれないとみられているのだが、そうなると、地球温暖化の防止の動きに背を向けることになってしまうので困ったものだ。
資料10
ハイブリッド重視のトヨタ、トランプ政権発足が追い風に(WSJ日本版)
ウォール・ストリート・ジャーナル日本版
2024年11月9日
https://mainichi.jp/premier/business/articles/20241107/biz/00m/020/018000c?utm_source=article&utm_medium=email&utm_campaign=mailbiz&utm_content=20241112
 かつての中国は世界の二酸化炭素の排出量ではごく一部を占めるに過ぎなかったが、世界の工場、そして最近では強力な技術革新国家へと急速に変ぼうするにつれ、排出量が急増し、今や圧倒的な世界最大の二酸化炭素の排出国になり、世界の排出量の3分の1近くを占める(資料11)。一方、中国は再生可能エネルギーである世界の風力・太陽光エネルギーの約半分を占めているのだ。世界の他の国々よりも多くの太陽エネルギーを生産する能力があり、世界の風力エネルギーの40%以上を生産する。つまり、中国は世界で温暖化を引き起こしているにもかかわらず、世界的な再生可能エネルギー大国でもある。アジア・ソサエティー政策研究所の責任者は、2015年以降、世界の排出量増加の90%は中国が占めており、中国の二酸化炭素の排出量が横ばいになることは「世界の排出量がピークに達し、その後横ばいになることを意味する」と指摘した。「またトラ」でアメリカの石油・天然ガス生産量は過去最高水準になり、二酸化炭素の排出量が増加すると見込まれるなかで、「脱炭素」の世界的課題における今後の中国政策に世界が注目している。
資料11
気候対策の主導権争い、中国が米国を追い抜くこれだけの理由
2024/11/19
https://www.cnn.co.jp/fringe/35226294.html
 トランプ氏は米軍の海外展開を縮小し、同盟国に負担を強いる姿勢を示している。日本もその圧力を避けては通れないだろう。米軍基地がトランプ氏の取引材料となれば、沖縄にとっても何らかの変化があるかもしれない。賛否両論が渦巻くトランプ氏の次期政権は、慣習や固定概念に縛られず、やりたい放題で米国自体を「解体」しそうな勢いだ。「トランプ氏に期待するのは皮肉かもしれない沖縄の現実がある」と「またトラ」に期待する(資料12)沖縄からの報告もされている。そうでもしなければ、長年にわたりにっちもさっちもいかなくなった沖縄の基地問題の現実は変わるまい。沖縄の人たちの「皮肉な期待」に納得する。
資料12
<金口木舌>トランプ氏への「期待」
2024/11/17
https://ryukyushimpo.jp/newspaper/entry-3655366.html

B)パリ協定再離脱
 パリ協定を巡り米国はトランプ前政権時代に脱退し、バイデン政権で復帰した経緯があるが、米大統領選で勝利した共和党のトランプ前大統領の政権移行チームは気候変動対策の国際枠組み「パリ協定」から再離脱する準備に入り、エネルギーや気候問題に関わる大統領令などを策定すると報告される(資料13)。バイデン政権が行っている2030年までに温室効果ガスの排出量を50~52%削減(2005年比)し、2050年までに排出実質ゼロを目指すパリ協定に沿った現状の国内目標も、ほごにするとみられる。前述の「掘って、掘って、掘りまくれ」政策で資源の掘削や採掘拡大のため国立公園などを縮小し、公園地域でも「掘って、掘って、掘りまくる」計画を進めているほか、カリフォルニアなどの州で行われている厳格な汚染基準設定を撤回する見通しという。そうなれば、生態系の破壊や生物多様性の減少が懸念されるので、環境保護の重要性を再認識し、持続可能な社会を目指すための努力がさらに求められる。また同時に、大気汚染や水質汚染が悪化する恐れがあることにも留意する必要があるだろう。
資料13
トランプ氏再選 岐路の温暖化対策 パリ協定離脱は禍根残す
毎日新聞 2024/11/15
https://mainichi.jp/articles/20241115/ddm/005/070/093000c
 旧ソ連のアゼルバイジャンで開幕したCOP29は途上国の地球温暖化対策のための資金調達が最重要議題で、中国や中東の産油国など資金力のある新興国を資金のドナー(出し手)側に引き込めるかも争点の一つとなっている。国連気候変動枠組み条約の会議では、先進国と途上国が対立して交渉が難航するのは、現在進行する地球温暖化の原因を作ったのは先進国だとして、途上国側は先進国に対し、温室効果ガス排出を減らすことや巨額の資金支援を求めるからである。COP29には現在のバイデン政権の代表団が参加するが、日本政府の交渉関係者は「米国が会議をリードできなくなり、資金を巡る交渉でドナーに新興国を巻き込むのは容易ではないだろう」と話す。アゼルバイジャンで開催中のCOP29では途上国への資金支援などを巡る交渉が本格化しているが、序盤の首脳級会合は主要国がペルーのAPEC会議やブラジルのG20の首脳会議への参加のため相次いで欠席しており、会議の推進役が会場にはいないので、「陰の主役」はトランプ氏になっている(資料14)。2期目のトランプ氏はかつて地球温暖化は「でっち上げ」と叫び、「パリ協定」から再離脱する手続きを進めているが、メキシコ湾沿岸部に上陸した2024年のハリケーン5件、7月の「ベリール(Beryl)」、9月上旬の「フランシーヌ(Francine)」、8月上旬の「デビー(Debby)」、9月下旬の「ヘリーン(Helen)」と10月上旬の「ミルトン(Milton)」の地球温暖化による災害(資料15)を彼はどのように認識しているのだろうか。最強の勢力を維持してフロリダを直撃した10月のミルトンは竜巻、暴風や洪水によって甚大な被害を与え、11月の大統領選挙を前に現大統領及び両党大統領候補らも被災地域の支援にあたるなどハリケーン対応が選挙戦終盤になって争点化した。とにもかくにも、世界2位の二酸化炭素(CO2)排出大国のアメリカで削減政策が進まなければ、気温上昇を止める世界全体の温暖化防止の取り組みに大きな支障をきたすのは明らかだ。年ごとに巨大化するアメリカへのハリケーン襲来は自然からの報復であり、警告とみなせる。
資料14
COP29「陰の主役」はトランプ氏 返り咲きの影響への質問相次ぐ
2024/11/17
https://mainichi.jp/articles/20241116/k00/00m/030/257000c?utm_source=article&utm_medium=email&utm_campaign=mailasa&utm_content=20241118
資料15
米国:ハリケーン2024 -メキシコ湾岸輸出拠点へのインパクト-
2024/10/24
https://oilgas-info.jogmec.go.jp/info_reports/1009992/1010240.html
  
写真4 (左)2024年のアゼルバイジャンのCOP29の「化石賞」授与風景(NHK);(右)2021年のグラスゴーのCOP26で日本が受賞した「化石賞」(beyond-coal.jp)
 アゼルバイジャンで開かれている気候変動対策の国連の「COP29」会議にあわせ、国際的な環境NGOグループは温暖化対策に消極的だと判断した国に贈る「化石賞」に、日本など、G7の主要7か国を選んだと発表した(写真4の左;資料16)。「化石賞」は、環境NGO「Climate Action Network(CAN)」が、気候変動対策に対して足を引っ張った国に与える賞のことで、気候変動への取り組みが「後退している」ことを「化石」と表現して皮肉ったもので、受賞すること自体が不名誉なことだ。COP29の「化石賞」にG7の国々を選んだ理由については「途上国を支援する資金の目標金額を一切提案せずに会議に臨み、議論の進展を妨害している」として、今回の会議で主要な議題となっている途上国のための資金供与に関して責任を果たしてこなかったためだとしているが、国王のチャールズ3世の影響もあってか、イギリスは環境政策に熱心だし、第4章の(注)で触れているようにスターマー首相自ら会議に参加し、温室効果ガスの排出量を2035年までに81%削減するという新たな目標を発表しているとともに、2024年9月30日にG7で初めて石炭火力発電を廃止したので、化石賞よりも、めざましいリーダーシップをとった国にあたえられる「宝石賞」にふさわしいと考えるがいかがなものであろうか。日本は2014年に条件付きの「宝石賞」を受賞しているが、岸田前首相が外交デビューした2021年のグラスゴーのCOP26(写真4の右)で「化石賞」を受賞して以来、4年連続で「化石賞」の常連国となっているのは、はなはだ残念である。
資料16
COP29 日本などG7に「化石賞」 “温暖化対策に消極的と判断”
2024/11/16
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241116/k10014640221000.html
 COP29は、途上国の気候変動対策を支援するための資金などについて、先進国が主導し、途上国に対する支援の規模を、2035年までに年間2500億ドル、日本円にして38兆円あまりに拡大させるなどとした成果文書の新たな草案が示されたものの、年間1兆ドル(約150兆円)以上を求めてきた途上国側からは、支援の規模が不十分だとする批判が相つぎ合意にはいたらず、会期を延長して交渉を続けることになった(資料17)。また、国際的な環境NGOグループは、温暖化対策に消極的だと判断した国に対して皮肉を込めて贈る「化石賞」に、議長国のアゼルバイジャンを選んだと発表した。その理由として、会議が難航する中、議長国としてのリーダーシップが不足していることや、産油国であるアゼルバイジャンのアリエフ大統領が、石油や天然ガスを「神からの贈り物」と演説で表現したことなどをあげている(資料18)。
資料17
COP29 成果文書の新草案提示も合意できず 会期延長し交渉続く
2024/11/23
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241123/k10014647221000.html
資料18
COP29 成果文書の新草案提示も合意できず 会期延長し交渉続く
2024/11/23
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241123/k10014647221000.html
 国連気候変動会議(COP29)は2024年11月24日、途上国支援のための新たな資金目標として、先進国側が2035年までに年3千億ドル(約45兆円)を出すことで合意した。官民あわせて1.3兆ドル(約200兆円)の投資拡大を呼びかけることも決めた。成果文書では、1)先進国側からの年1千億ドルの資金を35年までに3倍の年3千億ドルに増やす、2)官民含めて35年までに少なくとも年1.3兆ドルの投資を呼びかける、3)途上国も任意で資金を出すことを奨励するなども入った(資料19)。この合意の背景は、途上国側からは「目標額が低すぎる」という声が相ついだが、先進国と途上国双方が地球の未来への危機感を共有し、ともに「気候危機」に立ち向かうほか道はない現実を認識せざるをえなかったとともに、温暖化対策に消極的なトランプ氏が返り咲くことになったので、巨額の資金を拠出してきた米国がCOP29の新協定をほごにする公算が大きいことを考慮すると、先進国側からの資金提供が不十分になる可能性が高いので、途上国側としては目標額を達成できなかったが、しぶしぶと妥協せざるを得なかったのであろう。そこで、従来は途上国側だったが、現在は新興国で二酸化炭素の排出量が1位と3位の中国やインド両国へは、地球温暖の防止への積極的な排出削減や途上国への資金・技術の支援が期待される。
資料19
COP29閉幕、年46兆円超の気候対策支援で合意 「あまりに不十分で手遅れ」と途上国は非難
2024/11/25
https://www.bbc.com/japanese/articles/c748ezg8nj8o
 また、COP29では、極地、山岳地帯、脆弱な低地地域の主要な利害関係者および権利保有者が、雪氷圏の変化とその世界的な影響に取り組み、「雪氷圏からのメッセージ - 変化する雪氷圏での地球規模の影響」と題されたハイレベル会合のイベントが2024年11月12日に開催された。その趣旨として、「All people on Earth depend on the cryosphere. Snow, glaciers, ice sheets, sea ice, and permafrost are significant reservoirs and sources of freshwater, sustaining ecosystems and supporting livelihoods. Approximately 70% of the Earth’s freshwater is stored in glaciers and ice sheets. However, anthropogenic emissions are driving rapid changes in the cryosphere, leading to global consequences including rising sea levels, loss of water resources, accelerated warming, extreme weather events, and significant impacts on biodiversity, ecosystems, and human livelihoods. Coastal regions, low-lying islands, polar and high mountain areas are especially vulnerable.(地球上のすべての人々は、雪、氷河、氷床、海氷、永久凍土などの極地の氷雪圏に依存しています。これらの氷雪圏は、生態系を維持し、生計を支える重要な淡水の貯水池および供給源であり、地球上の淡水の約70%が氷河や氷床に貯蔵されています。しかし、人為的な排出により、氷雪圏は急速に変化しており、海面上昇、水資源の喪失、温暖化の加速、極端な気象現象、生物多様性、生態系、人間の生活への深刻な影響など、地球規模の影響を引き起こしています。沿岸地域、低地島嶼、極地および高山地域は特に脆弱です。;グーグルBardの訳)」(資料20、資料21)との「雪氷圏からのメッセージ」を表明している。「掘って、掘って、掘りまくれ」政策のトランプ政権によって化石燃料の消費量が増大し、温暖化に歯止めにがかからなければ、世界各地の氷河や氷床などの融解が加速することになろう。
資料20
A message from the Frozen World to Global Leaders at COP29
12 November 2024
https://arctic-council.org/news/a-message-from-the-frozen-world-to-global-leaders-at-cop29/
資料21
雪氷圏から世界のリーダーへ、COP29でのメッセージ
2024/11/13
https://kyodonewsprwire.jp/release/202411129814
 ネパールで初めて気候難民が発生したということが2010年6月1日に報告された(資料22)記事を見ても、その影響は雪氷圏の住民に大きな影響をすでにあたえている。その記事は、「Kathmandu, June 1: In the first recognized case of climate change refugees in Nepal, the entire village in Surkhang VDC of upper Mustang, is being resettled in Thangchung in lower Mustang. A total of 150 people of Dhe are being shifted due to the adverse impact of climate change on the livelihoods of the poor in the village. Dhe village has been facing an acute shortage of water for irrigation over the last six to seven years. The irrigated land over the period has also been reduced to less than 50 % and animal husbandary has declined 40 to45 %.」 (グーグルBardによる翻訳;カトマンズ 6月1日:ネパールのムスタン地区上部のSurkhang VDCにあるDhe村全体が、同地区下部のThangchungに移住することになりました。気候変動による村の貧困層への悪影響により、合計150人が移住を余儀なくされています。Dhe村は過去6~7年にわたり、深刻な灌漑用水不足に直面してきました。この期間に灌漑可能な土地は50%以下に減少し、畜産業も40~45%減少しました。)現在はこのような民族移動が起こる時代になっている。さらに地球温暖化が進行すると、ヒマラヤ地域のみならず世界各地の雪氷圏で気候難民が発生してしまうのではないかと心配される。
資料22
Nepal`s first climate refugee village in Mustang
Myrepublica 2010/06/01
https://archives.myrepublica.com/portal/?action=news_details&news_id=19341
 ヒマラヤでは氷河が地球温暖化で解け、湖が拡大し、時として洪水が起こっているので、現在は水資源が豊富な時代のように思われるが、やがては氷河が解け去ると、水資源の欠乏の時代が来る(資料23)。チベット高原の中央部で現在起こっているように、湖がアラル海のように縮小し、水資源がなくなっている。そのような現象は水流が途絶える断流と呼ばれる中国の黄河中流域にすでに表れているのだ。そうすると、ヒマラヤの氷河地域を起源にする揚子江、メコン川、ガンジス川、インダス川もやがてはそのような水資源の欠乏期を迎えることが心配される。ヒマラヤを起源とする川の水量が減るとともに、温暖化で世界の氷河の融解と海水温の上昇で、海水(塩水)が増えるから、アジアの大きな川の水位低下した河口には海からの塩水が入ってくるとともに、地下水にも海水が侵入し、アジアの大河川の河口域では淡水資源が乏しくなるであろう。しかも、南アジアの大河川の河口地域は人口増加の激しい地域だから、億単位の人達の淡水の水資源がなくなり、水資源を求める深刻な環境難民問題が発生することが危惧される。前述したように、ネパールの氷河地域で環境難民がすでに発生し始めているのは、ヒマラヤ地域に起源をもつアジアの大河川の河口地域に起こる環境変化の将来を予告しているとも解釈できる。そのような悲観的な将来を改善するためにも、地球温暖化の進行をくい止めることは喫緊の課題で、ますます重要だ。
資料23
ネパール・ヒマラヤの環境変化
https://glacierworld.net/regional-resarch/himalaya/himalayan-other/nepal-himalaya-ecological-change/
 気候変動によって土地を追われた「気候難民」が、アフリカのモーリタニアなどをはじめ、世界各地で急増している。以前は湖があり、漁業などもしていたというが、干ばつや砂漠化で、見渡す限り土地は枯れてしまったことが原因とされる。そこで、「宇宙移住は人類を救う手段になる」(資料24)。それを提唱するのが、トランプ氏の次期政権の要職に就く米スペースXの最高経営責任者、イーロン・マスク氏だ。地球に住めなくなる将来に備え、火星への移住計画を進めている。スペースXは、火星への飛行が可能な超大型ロケットの開発を進めており、20年後には火星に自立型の都市を建設する計画という。「過去に何度も起こったように、そのうち大きな彗星が地球に衝突し、ほとんど全ての生命が滅びるだろう。宇宙を飛び回る文明になるか、それとも滅びるのか」と、マスク氏は強調する(資料23)のだが、彼が言う「宇宙移住」計画の前に対処しなければならない喫緊の地球の環境課題があり、まずは温暖化問題などに対処しなければならない、と考える。
資料24
大地に住めない「気候難民」が現実に 海上や宇宙に活路はあるのか
2024/11/21
https://mainichi.jp/articles/20241120/k00/00m/040/050000c?utm_source=article&utm_medium=email&utm_campaign=mailhiru&utm_content=20241121
 日本政府は現在、2035年以降を期限とする新しい温暖化対策の議論を進めている。仮に第2次トランプ政権の間に削減のペースを鈍化させるような目標を策定したとしても、将来米国が温暖化対策を再び推進する政権になれば、その政策に再び影響を受けることになる。そこで、環境省幹部の一人は「他国の状況で目標が何度も揺れてしまうと企業の設備投資などのタイミングが難しくなってしまう。『50年までに排出実質ゼロ』という大きな旗を立ててしまったので、今の日本にはもう横を向いている暇はない」(資料8)と話しているのだが、他国の影響に左右されずに、日本なりの主体的な政策を堅持し、邁進してほしものだ。

C)「気候正義」
 先進国の日本でも温暖化の悪影響が顕在化しているが、途上国ではさらに深刻だ。気候変動の影響で深刻化する干ばつや洪水などの被害は、世界中の人々に同じようにもたらされるわけではない。インフラなどが脆弱な途上国は、温室効果ガス排出量が少ないのに大きな被害に見舞われやすい。同じ国の中でも貧困層にその影響が集中したり、世代間での不公正もある。気候変動を人権問題と捉え、脆弱な人々に被害が集中するような不均衡な状態を正しながら、気候変動の問題を解決していこうとする考え方は「気候正義」(資料25)と呼ばれる。アゼルバイジャンの首都バクーで開催された国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議(COP29)は、途上国が被害対策や温室効果ガス排出削減を進めるための資金調達の方向性が最大の焦点だ。COP29では、世界全体の対策を加速させ、気候正義の実現につながるような強力な合意が期待される。中国や中東の産油国など資金力のある新興国を資金のドナー(出し手)側に引き込めるのも争点の一つとなっている。
資料25
気候変動「仕方ない」で終わらせない 足元の危機に声上げる若者たち
2024/11/10
https://mainichi.jp/articles/20241108/k00/00m/040/234000c?utm_source=article&utm_medium=email&utm_campaign=mailasa&utm_content=20241111
 国連環境計画(UNEP)によると、2022年末までに世界で提起された気候訴訟は2180件もある。その多くはパリ協定(2015年)採択以降で、「国や企業の温室効果ガスの排出削減目標の強化や気候変動対策の実施を命じる判決」(資料26)も現れている。ヨーロッパ人権裁判所は2024年4月、「スイス政府の気候変動対策が不十分だとするスイス市民の訴えについて、私生活をめぐる権利が侵害されているとして認める判決を言い渡した。その上でスイス政府は、状況の改善のため具体的な対策を検討しなくてはならないとしている。政府の気候変動対策が人権に関わるとする判断をヨーロッパ人権裁判所が示したのは初めてで、原告側は画期的」(資料27)だとしている。さらに、南太平洋の島国ツバル(写真5の左)は気候変動と国際法に関する小島嶼国委員会(COSIS)の議長国で、国際海洋法裁判所において、2024年5月、「各国は気候変動から海洋を保護する義務を負う」との勧告的意見を勝ち取り、同裁判所が気候変動関連で判断を示したのはこれが最初とのことである(資料28)。
資料26
気候訴訟―司法を通じて気候変動問題を解決する
2024/08/06
https://kikonet.org/content/36073
資料27
欧州人権裁判所 “スイス政府の気候変動対策 不十分”初判断
2024/04/10
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240410/k10014417311000.html
資料28
領土沈んでも国として存続を、水没危機のツバルが国際社会にアピール
2024/09/27
https://jp.reuters.com/world/environment/markets/global-markets/SJ73X5VZZFPP5I4U2JH5VYXPS4-2024-09-27/
  
写真5 (左)南太平洋の島国ツバルの人口の集中するフナフティ環礁の航空写真。2024年9月6日撮影(ロイター/Kirsty Needham);(右)「明日を生きるための若者気候訴訟」と書かれた横断幕を持って名古屋地裁に入廷する原告ら=名古屋市で2024年8月6日午後1時3分、田中理知撮影
 日本では、全国の10~20代の男女16人が2024年8月6日、気候変動の悪影響は若い世代の人権を侵害しているとして、二酸化炭素(CO2)排出量の多い火力発電事業者10社を相手取り、CO2排出を削減するよう求めて名古屋地裁に提訴した(写真5の右;資料25)。政府や企業に気候変動対策の強化を迫る訴訟が国際的に相次いでいるが、弁護団によると日本で全国規模の集団訴訟が起こされたのは初めてで、原告は「名古屋市の中学3年の男子生徒や、東京都や奈良県などの大学生ら14~29歳の若者16人。一方、被告は東京電力と中部電力が折半出資する発電会社JERAや東北電力、関西電力、九州電力、神戸製鋼所など国内で火力発電事業を行う企業計10社。訴状では、19年度の被告10社のCO2排出量は、日本のエネルギー起源の排出量の約3割に当たると指摘。排出量の多い石炭火力発電を50年まで運用し続けようとしており、今後も地球温暖化に有害な影響をもたらしていくとして、平均気温上昇1.5度未満を目指すため、CO2排出量を19年度比で30年までに48%、35年までに65%削減」(資料29)することを求めている。はたして、日本の裁判所はどのような判決を出すのだろうか。ヨーロッパをはじめ世界的にくだされている気候変動対策の強化を迫る判決の影響が日本にもおよぶのかどうか、を刮目して待っている。
資料29
「気候変動、若者の人権を侵害」 CO2排出削減求め16人が提訴
2024/08/06
https://mainichi.jp/articles/20240806/k00/00m/040/331000c

4) 備忘録ーCOP29とAPECやG20会議、さらにトランプ氏への対応―
   それにしても、どうして、地球環境がテーマのCOP29会議(写真6の左)がアゼルバイジャンで開催されている時期に、ペルーの経済問題中心のAPEC(アジア太平洋経済協力、Asia Pacific Economic Cooperation)会議(写真の左)とブラジルのG20(主要20カ国と地域)の首脳会議が同時期に開催されたのであろうか。気候変動対策を話し合う国連の会議COP29で、イギリスのスターマー首相(注)は二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量を2035年までに81%削減するという新たな目標を発表した。多くの国に先駆けて削減ペースを加速させ、この分野を主導するねらいがあるとみられる。2035年までの新たな削減目標は来年2月までに国連に提出することが求められているが、目標を発表したのは、UAE=アラブ首長国連邦とブラジルに続いてイギリスが3か国目で、日本は現在、検討中だということだが、石破首相も出席し、国別の二酸化炭素排出量のランキング5位の日本の責任ある立場を表明してほしかった。ちなみに、排出量の1位は中国、以下2位アメリカ、3位インド、4位ロシアである。両会議とも、せめて二酸化炭素排出量のランキング1位から5位の各国首脳は少なくとも参加して、重要な課題に責任がある立場からそれぞれの国の決意を表明する貴重な機会だと思う。決意表明がない国は例の「化石賞」に推薦されてしまうのであろう。従って、せめて会議の日程が重なりあわないようにどこかで調整する必要があるのではないか。COPは国連が主催しているので、APECなどの他の重要会議の日程と重ならないよう、それぞれの日程調整を国連あたりでできないものだろうか。
(注)
イギリスのスターマー首相だけは、COP29 に引き続き、APEC とG20両会議にも出席している。イギリスは、気候変動対策や環境保護に積極的に取り組む国として知られ、2021年10月に発表した「ネット・ゼロ戦略」では、2035年までに炭素排出量を1990年比で78%削減し、2050年までに「ネット・ゼロ」にすることを明言している。
 ブラジルで開かれているG20(主要20か国)の首脳会議で、議長国のブラジルは「地球規模の課題の根底には不平等があり、われわれはあらゆる次元の不平等の解消に取り組む」などとする文言を盛り込んだ首脳宣言を発表した(資料30)。その中で、特定の国名はあげず、「すべての国はいかなる国の領土の保全と主権や政治的独立に対して、領土獲得を目的とした武力による威嚇や武力行使を控えなければならず、民間人に対するあらゆる攻撃を非難する」と指摘するとともに、気候変動対策については、産業革命前に比べて世界の平均気温の上昇を1.5度に抑えるよう努力することを目標に掲げた「パリ協定」をめぐって、「目標を再確認し、努力を追求する決意を繰り返し表明する」としている。前者がロシアのプーチン氏、後者がアメリカのトランプ氏の政策に反対していることは、誰が見ても明らかだ。
 米国の次期大統領に決まったトランプ氏は米国第一主義を掲げ、多国間主義や価値・原則を軽視し、保護主義に傾斜する可能性が高く、トランプ氏の大統領就任を前に、反保護主義のトーンは薄まったが、G20の首脳宣言では「多国間主義への強いコミットメント」を再確認。「国際社会が直面する課題は多国間での解決策と、グローバルガバナンスの強化を通じてのみ対処できる」と表明し、第2次トランプ政権をけん制している。バイデン米政権は東南アジアや南米などの新興国を自陣営へ引き込もうと、2022年にインド太平洋経済枠組み(IPEF)を立ち上げ、自由や平等、民主主義などの価値観やルールに基づく国際秩序の浸透と拡大を図ってきた。だが、多国間協調を嫌うトランプ氏は1期目の政権発足初日に環太平洋パートナーシップ協定(TPP)を脱退し、IPEFも即時廃止する意向を示している。そこで、中国の習近平国家主席は、APEC首脳会議で演説し「アジア太平洋の協力は、単独主義や保護主義の台頭といった試練に直面している」と懸念を表明した。保護主義に走るトランプ政権に代わり、中国が巨大な経済圏をリードしようとの思惑が透ける(資料31)。約2カ月後に迫った第2次トランプ政権の始動は、既存の国際秩序を一変させる危うさをはらみ、国際協調の危機が指摘される中、日本はどんな役割を果たせるのだろうか。
資料30
G20 首脳宣言発表「あらゆる次元の不平等解消に取り組む」
2024/11/19
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241119/k10014642641000.html
資料31
G20、多国間主義に力点 新興国、トランプ政権にらみ
2024/11/20
https://mainichi.jp/articles/20241120/ddm/003/030/098000c
  
写真6 (左)アゼルバイジャンCOP29会議(毎日新聞);(右)APECペルー会議(NHK)
資料32
「トランプ氏は正論や理屈があまり通用しない」 
2024/11/20
https://mainichi.jp/articles/20241120/k00/00m/020/005000c?utm_source=article&utm_medium=email&utm_campaign=mailasa&utm_content=20241121
 ところで、プーチン氏がCOP29とAPECやG20の会議に参加できなかった理由は、ロシアが占領したウクライナの地域から子どもたちをロシアへと不法に移送したことがプーチン氏の戦争犯罪だとし、オランダの国際刑事裁判所(ICC)が彼に逮捕状(資料33)を出しているからなのだろう。プーチン氏のほかに、ICCの基本的人権や人道主義に関する判決では、イスラエルのネタニヤフ氏(資料34)やミャンマー軍トップのミン・アウン・フライン司令官(資料35)にも逮捕状が出でている。いずれも「いじめ」の構図に共通する強者の論理で、弱者を蹂躙している。これらの判決と同様に、トランプ氏の強者の論理の人権や人道に関するこれまでのアメリカの裁判では、「またトラ」就任で「大統領の任務の遂行は妨げられてはならないというアメリカ憲法の要請」からその行方がうやむやになりそうな感じがしてきた。ところが、そのトランプ氏は新政権前であるが、さっそく、メキシコとカナダに25%、中国に追加で10%の関税(資料36)を課すと一方的に表明した。まさに超大国が高関税で相手国を威圧する身勝手極まりない強者の論法で、貿易戦争(資料37)を招くのは確実だ。トランプ氏による貿易戦争ではまず世界貿易機関(WTO)での検討がなされると思うが、現実的には、アメリカと取引する国々の企業とそこで働く多くの人々に、また彼が行うであろうパリ条約からの再離脱や「掘って、掘って、掘りまくれ」の化石燃料を重視する政策が引き起こす環境危機では世界各地の環境弱者に深刻な影響をあたえることであろう。そのため、強者のトップ・ダウンでなく弱者のボトム・アップの思考(資料38)が必要で、COP29で明らかになった環境危機やこれから深刻化するであろう貿易戦争の課題はボトム・アップの思考を重視してゆくことが求められる。そこでその1手段として、第3章の「またトラ」の地球環境への影響で述べた「南太平洋の島国ツバル」や「ネパールの環境難民」などのように環境危機の影響で脆弱な人々に被害が発生している不条理な状態を正すとともに、またメルケル前首相が回顧録(資料5B)で指摘しているように、貿易戦争に邁進するトランプ氏に相互の協力が多くの人に繁栄をもたらすことを納得してもらうために、すでに逮捕状がだされているプーチン氏やネタニヤフ氏、ミン・アウン・フライン司令官のケースと同様に、弱者に深刻な影響をさらにあたえる可能性が高いトランプ氏の強者の論理の不当性を国際刑事裁判所やヨーロッパ人権裁判所などに訴える局面に来ていると考える。やはり僕は、トランプ氏の強引な強者の論理が我慢ならない。評論家の串田孫一さんはかつて気にくわぬ人がテレビに出てくるとスリッパで画面をたたいた(注)そうだが、僕もそれにあやかりたい気分だ。アメリカ以外の国で行われる彼の裁判ならば、「大統領の任務の遂行は妨げられてはならないというアメリカ憲法の要請」があっても問題なく実行できるのではなかろうか。2019年に「安倍総理大臣からノーベル平和賞に推薦された」とみずから暴露したように、以前からオバマ元大統領が受賞したノーベル平和賞に強い意欲を示しているトランプ氏(資料39)にとっては、このような裁判で彼の強者の論理の不当性を訴えることは平和賞を望んでいる彼の評価を貶めることにはなるであろう。
資料33
プーチン大統領らに逮捕状、ウクライナ侵攻めぐる戦争犯罪容疑 国際刑事裁判所
2023/3/18
https://www.bbc.com/japanese/64985430
資料34
ネタニヤフ氏に逮捕状 国際社会からの重い警告
2024/11/26 
https://mainichi.jp/articles/20241126/ddm/005/070/102000c
資料35
ICC ロヒンギャ迫害でミャンマー軍トップの逮捕状請求へ
2024年/01/28
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241128/k10014651881000.html
資料36
トランプ氏のディール始動 追加関税で影響必至、身構える日本企業
2024/11/26
https://mainichi.jp/articles/20241126/k00/00m/030/283000c
資料37
中国「貿易戦争に勝者なし」 トランプ氏の“一方的”制裁、各国困惑
2024/11/26
https://mainichi.jp/articles/20241126/k00/00m/030/248000c?utm_source=article&utm_medium=email&utm_campaign=mailasa&utm_content=20241127
資料38
環境への取り組みかたー私の決意―
https://glacierworld.net/home/my-approach-for-environmental-issue/
資料39
ことしも話題に アメリカ トランプ大統領
2020/09/30
https://www3.nhk.or.jp/news/special/nobelprize/2020/peace/article_01_05.html

評論家の串田孫一さんが、そのナカソネ氏がテレビに出てくるとスリッパで引っ叩くと語っていたことを思い出したけれど、アベ氏やイシバ氏、アソウ氏などのテレビ映像をスリッパで叩いても気がすまない、それほど怒りは沸点に達しています(原文のママ)。
資料40
連帯の意思
2013/12/28
https://ameblo.jp/sanni1132/entry-11737441118.html
 翻って日本の政局をみると、「数は力なり」であると思いあがった与党の自民・公明両党が野党の異論に耳を貸さず、数の力で国会を軽視した時代が長く続いたが、2025年10月の衆議院選挙で与党が議席を減らし、逆に野党が勢力を伸ばしたハングパーラメントになったので、これからは国会での各党間の熟議が必要不可欠になり、与党が謙虚に政治を進めなければならなくなったことは、長く続いた独裁的な政局から、多様な意見に耳を傾ける民主的な政局になったこととして評価できるのではなかろうか、ととりあえずは肯定的にとらえておきたかった。しかしながら、小さな野党の政党同士の内向きの政争が早くも表れ、2024年11月11日に行われた国会での首相指名選挙の決選投票は実になげかなしいものであった。というのは、不倫が明らかになった党首の名前を書いたのは国民民主党、すでに代表を退くことが決まっている人物に投票したのは日本維新の会だった。その結果、無効票が84票も出たあげく、少数与党の第二次石破政権はかろうじて船出をすることができたのである。このような状況からみて、不安定な日本の政局状況の石破さんでは、前述したように、安定した立場に基づいたアメリカ政局を背景にした自己主張の強い唯我独尊的人物で、「正論や理屈があまり通用しない」(資料32)人物のトランプさんにはとうてい太刀打ちできるとは思われないことを、「またトラ」対応のさらなる心構えとしてあえて付け加えておきたい。石破さんは慶応高校時代にゴルフ部員だったからといって、安部元首相とトランプさんとのゴルフ外交(韓国の尹錫悦大統領もゴルフ練習を始めたそうだ)の二番煎じはもとより、またキリスト教のプロテスタント同士だからといっても、「アメリカ・ファースト」を掲げて一心不乱に邁進する2期目のトランプさんにはたして通用するものだろうか。トランプ氏は「正論や理屈があまり通用しない」そうだが、経済を軸に対中関係改善を進め、それを足場にトランプ新政権に正攻法で向き合ってほしいものだ。アメリカの対中包囲網の一環で、日本は防衛費倍増や長距離ミサイル配備を迫られてきたが、トランプ氏がさらなる要求を突きつけてくるのであれば、(考えて見てほしいのですが)、日本の空を日本の飛行機が自由に飛べないことを規定しているアメリカ軍のための日米地位協定は屈辱的なので、石破氏の従来の主張である日米地位協定の改定を、せめてドイツやイタリア同様の内容にするよう開き直ってほしい。石破首相が敬慕する石橋湛山氏は戦後の占領期に蔵相として連合国軍総司令部(GHQ)と対立しても、引かない「心臓大臣」ぶりをみせたように、石破氏の胆力と覚悟に期待するところ大だ。そうしてくれれば、第3章の「またトラ」の地球環境への影響のA)「掘って、掘って、掘りまくれ」の末尾で指摘した沖縄の米軍基地の問題解決にも寄与するかもしれない、と希望的に考えておきたい。さらに加えてその際は、トランプ氏がノーベル平和賞に依然として固執しているなら広島や長崎訪問を心に留めておくこと、および彼を貿易戦争や環境危機の廉でICCなどに訴える輩が日本の一角にいることもそれとなく伝えてほしいものだ。歴代の日本政府は米国の枠組みに追随する傾向が強く、それもこれまでの遠慮会釈的なアメリカ政府への対応なら何とかしのげてきたが、傍若無人のトランプ氏ではそれでは立ちゆかないであろう。そこで、最後に忠告がある。トランプ氏が2024年7月13日に銃撃されて以来ますます厳重になっている警備体制であろうが、大統領再就任の2025年には79歳になるトランプ氏には「もしも」のこと(注)もあるから、老婆心ながら一言、「ニ度あることは三度ある」との諺を肝に銘じておくことを諫言する。

トランプ次期米大統領の政権移行チームは2024年11月27日、閣僚候補や政権の任命者の一部が26日夜から27日午前にかけ、爆弾脅迫などの被害に遭ったと明らかにした。「暴力的で非アメリカ的な脅迫の標的になった」としている(資料41)。
資料41
トランプ次期政権の閣僚候補らに相次ぎ爆弾脅迫、虚偽通報も 米
2024/11/29
https://www.cnn.co.jp/usa/35226715.html

5) 追記―「またトラ」と地球環境に関するAIの解答―
 今回のブログ「またトラ」と地球環境の参考のために、下記3つのAIに、ブログの第1章「はじめに」の末尾に記した「トランプ氏が第47代アメリカ大統領に就任する2025年1月からは、世界各国との政治や経済、さらにロシア・ウクライナやイスラエル・パレスチナ戦争などの多方面にその影響がおよぶであろうが、特に地球環境へどのような影響をあたえるかを考えてください」と聞いたところ、チャットGPTとマイクロソフトBingの両解答ともいわゆる教科書的な解答で、具体性が乏しく、抽象的な内容だとの印象が強いが、「現時点ではそのリクエストには対応できません」と解答したグーグルBardは正直なのだが、「選挙と政治についてしっかり議論できるようになるまで」待つしかない。以上のように、残念ながら3AIともあまり参考にはならなった。それでは、今回のブログの最後として、 3AIそれぞれの解答を記す。
A)    チャットGPT
 ドナルド・トランプ氏が再びアメリカ大統領に就任した場合、その政策が地球環境に与える影響は非常に注目されるテーマとなります。トランプ氏の過去の政策や発言を参考に、以下のような影響が考えられます。
1. パリ協定と国際的な気候協力
    トランプ氏は以前、大統領としてアメリカをパリ協定から離脱させました。再任後、再び同協定に消極的な姿勢を示す可能性があります。
    これにより、アメリカを中心とした国際的な気候協力が弱まるリスクがあります。他国も気候対策に消極的になる可能性があり、温室効果ガス削減の目標達成が難しくなる恐れがあります。
2. 化石燃料産業の推進
    トランプ氏は化石燃料産業の規制緩和を支持してきました。再任後も、石油や石炭産業の振興を優先する政策を取る可能性が高いです。
    これにより、再生可能エネルギーの普及が遅れるだけでなく、二酸化炭素排出量の増加や環境汚染が進む可能性があります。
3. 環境規制の緩和
    トランプ氏の過去の政策には、環境保護局(EPA)の権限を縮小し、多くの環境規制を緩和する取り組みが含まれていました。これにより、企業活動が短期的には促進されるものの、長期的には環境への負荷が増加する恐れがあります。
4. 科学的データや研究への対応
    トランプ氏の政権下では、科学的データや専門家の意見が軽視されることが指摘されました。気候変動に関する研究予算の削減や科学者への政治的圧力が再び起こる可能性があります。
5. 自然資源の利用と保護
    トランプ氏は国内の国立公園や自然保護区での採掘や開発を許可する政策を進めました。これが再開されれば、生態系の破壊や生物多様性の減少が懸念されます。
6. 地球規模の影響
    トランプ政権の政策は、特に途上国に影響を与える可能性があります。アメリカの政策が気候資金や技術支援を減らす場合、途上国での気候適応や緩和策が遅れる可能性があります。
まとめ
トランプ氏の再任による地球環境への影響は、特に温暖化対策の遅れや国際協力の弱体化に直結する可能性が高いです。一方で、世界がアメリカ以外の国や企業の主導による気候行動を進めることも考えられます。環境問題の解決には、長期的な視野と国際的な連携が必要不可欠です。その中で、アメリカの政策が果たす役割は依然として重要です。
B) マイクロソフトBing
 トランプ氏が第47代アメリカ大統領に就任することが確定したようですね1)2)3)。
彼の政策が地球環境に与える影響について考えてみましょう。
トランプ氏の過去の政策や発言から推測すると、彼の政権下での環境政策は以下のような影響をもたらす可能性があります。
1)化石燃料の利用促進: トランプ氏は過去に化石燃料産業を強く支持しており、石炭や石油の利用を推進する政策を取っていました。これにより、温室効果ガスの排出が増加し、地球温暖化が進行する可能性があります4)5)。
2)環境規制の緩和: トランプ氏は環境規制を緩和する方針を示しており、これにより企業が環境に対する責任を軽視する可能性があります。結果として、大気汚染や水質汚染が悪化する恐れがあります4)6)。
3)国際的な環境協定からの離脱: トランプ氏は以前、パリ協定からの離脱を表明しており、再び国際的な環境協定から離脱する可能性があります。これにより、国際的な環境保護の取り組みが弱体化する恐れがあります4)6)。
4)自然保護区の開発: トランプ氏は過去に自然保護区での開発を推進する政策を取っており、これにより生態系が破壊される可能性があります4)5)。
これらの政策が実行されると、地球環境に対する影響は非常に大きく、持続可能な未来に向けた取り組みが後退する可能性があります。環境保護の重要性を再認識し、持続可能な社会を目指すための努力が求められます。

C) グーグルBard
 現時点ではそのリクエストには対応できません。私はできる限り正確に回答するようトレーニングされていますが、間違えることがあります。私が選挙と政治についてしっかり議論できるようになるまでは、Google 検索をご利用ください。