2013年秋ネパール調査 番外編
メコンの畔にて(PHOTO エッセイ)
2013年秋のヒマラヤ調査を終え、ラオスは中部のビエンチャンと北部のルアンプラバンで下記のことを考えながら、1週間ほどを過ごした。
メコン川は泥の河である。おそらく泥の河だからこそ、人も生物も、何から何まで多様なのだと実感した。 だが、チベット高原東部のメコン川源流域では、氷河に削られた山並みの中をゆるやかな清流が流れる。
チベット高原東南部の峡谷を流れるメコン川(瀾滄江)は、飛行機から見ても、泥の河ではない。
ラオス北部のルアンプラバンで見たメコン川は、圧倒的な泥の河である。メコンの泥は、チベット高原をでてから、土壌浸食などで加えられたのではなかろうか。
比較的大きな運搬船も泥のメコンをひっきりなしに往来する、
泥の河で洗濯する女の右手が舞い、最後には着の身着のままでメコンつかり沐浴した。
男は泥の中で、投網で糧を得る。
泥のメコンで浮きがわりのペットボトルを利用し、さし網をしかける。
女は、男がとったいろいろな魚を朝市で売る。
とりたての魚をレモン(インドのニンブー)をたらして、いただく。
メコン河岸は水位上昇時の泥(汀線)が堆積し、そこで野菜をつくる。
ゆったりと流れるメコンだが、場所によっては岩礁があり、早瀬になる。
泥の河では貴重な建材用の砂利取り舟。
飛行機から見る残照のメコン。
メコン落日。夕涼みがてら、雄大なメコンの夕日と対峙する。人の輪廻転生もまた、ガンジス世界と同様に、メコン世界でも泰然とながれる。
夕涼み客のくわわるメコン河沿いの賑やかなナイト・マーケット。
ラオスでは戦乱で数々のお寺が破壊された(下記参照)が、シーサケート寺院ではかなり保存状態が良く、頭部を欠いた仏もあるが、1万以上の仏像が安置されているという。
添付写真
1) チベット東部(メコン河源流)
2) チベット東南部(瀾滄江;メコン河中流)
3) フェリー・ボート(ルアンプラバン;メコン河下流)
4) 運搬船(ルアンプラバン;メコン河下流)
5) 洗濯する女性(ルアンプラバン;メコン河下流)
6) 投網する人(ルアンプラバン;メコン河下流)
7) ペットボトルの浮きで刺し網漁(ルアンプラバン;メコン河下流)
8) 朝市の魚屋(ルアンプラバン;メコン河下流)
9) 魚料理(ルアンプラバン;メコン河下流)
10) 水位上昇時の砂泥の汀線(ルアンプラバン;メコン河下流)
11) 岩礁のある急流(ルアンプラバン;メコン河下流)
12) 砂利取り舟(ルアンプラバン;メコン河下流)
13) 残照のメコン(ルアンプラバン;メコン河下流)
14) メコン河落日1(ビエンチャン;メコン河下流)
15) メコン河落日2(ビエンチャン;メコン河下流)
15) メコン河落日2(ビエンチャン;メコン河下流)
16) メコン河沿いのナイト・マーケット(ビエンチャン;メコン河下流)
17) シーサケート寺院(ビエンチャン;メコン河下流)
18) 托鉢僧(ルアンプラバン;メコン河下流)
18) 托鉢僧(ルアンプラバン;メコン河下流)
記、
1) メコン河は中国チベットに源を発し、ビルマ、ラオス、タイ、カンボジア及びベトナムを貫流し、南シナ海に注ぐ全長4350km、流域面積795000平方キロの国際的な大河川である。
2) メコン河の年平均流出量は6000億立方メートルもあるが、ローカルな水運や河岸住民の生活用水以外はほとんど利用されていない。そこで、この莫大な水量を有効利用するために、エネルギー開発と環境保全の競合に関する現実的な課題を明らかにし、水資源開発と環境保全との共存をはかりながら、持続的なエネルギー開発の方向性を評価することが重要である。
3) メコン河上流部のチベット南東部では、豊富な水力に加えて、地熱・太陽熱利用などの可能性を秘めているが、自然災害が頻発する地域なので、そのための実態把握・評価が必要である。
4) メコン河下流部の東北部タイでは稲作面積がこの20年間で2倍にも拡大し、また戦乱の続いたラオス、カンボジア、ベトナムでは避難民たちが焼畑を広範囲に行ったため、結果的に森林破壊と農耕地土壌の疲弊をもたらすとともに、土壌侵食を引き起こす要因になっているので、水資源の適切な管理と生態系保全が強く求められる。
5) また、南シナ海の沿岸部では石油資源・領土の国際的な紛争にまで発展してきた地域で、将来の持続的エネルギー開発の観点から熱い視線が注がれている。同時に、その沿岸部を初めとした生態系の悪化が憂慮されている。
6) メコン河全域にわたって、環境保全と持続的開発手法を確立する研究が緊急に求められており、その研究成果は東南アジアをはじめとする各国への国際的な意義は大きい。
7) ベトナム・アメリカの国交回復やビルマの民主化などをはじめとして、メコン河流域の東南アジアが動きだした。長らく続いた戦乱とその後の後遺症から立ち直り、この動きは今後とも加速することだろう。
8) 21世紀初頭には、東南アジアの人口は世界の半分近くをも占める、との推計がある。エネルギー問題とともに環境問題がますますクローズアップされ、地球環境からみても看過できない難局を迎えることだろう。そのための対策の基礎として、環境保全とエネルギー開発の競合に関する実態把握・評価が必要である。
9) さらに地球温暖化などの、地球環境問題が上記難局に加わる。気温の上昇ばかりか、雨の降りかたも変わる。水資源の有効利用にとって、困難な局面を迎えることになる。
10) また、南極などの氷河が解けるとともに水温上昇で、海水面が上昇する。そこで、それらの国々の沿岸域や大河川河口域に洪水や海水浸入(河川水・地下水の塩水化)などの直接的な影響が出るため、水循環に関するモニタリング・システム体制が重要である。
11) 地球環境変動が進行するなかにあって、水循環が影響を与える流域の応答特性を評価し、エネルギー開発と環境保全の競合の実態を明らかにするとともに、環境変動の実態観測・環境影響評価システムを確立し、将来の持続的開発手法を構築することが求められている。
2013.11.25 (ビエンチャンにて)