またトラ(2)―またトラからまだ*トラへの期待をこめてー
*まだ(MADA;Make America Democratic Again)トラ
1) はじめに
トランプ氏の最近の発言は目に余る。「グリーンランドを所有するべきだ」(資料1)、さらには「パナマ運河の管理権やグリーンランドの獲得に向け、軍事力の行使を排除しない」(資料2)とも表明しているのだ。まさに、非民主的なやり方でウクライナを侵攻しているプーチン氏のようではないか。その上さらに、「メキシコ湾の名称をアメリカ湾に変更する」(資料3)や「カナダを米国の51番目の州に」(資料4)などと一方的に言いまくる。まるで、彼はやんちゃ坊主的な「裸の王様」だ。そのトランプ氏が「またトラ」として復活する2025年1月20日が迫ってきた。そこで、トランプ氏のスローガンである「MAGA;Make America Great Again」にちなんで、まだトラ(「MADA;Make America Democratic Again」トラ)を改めて提唱したい。というのは、彼とイエスマンで固めた彼の取り巻きが少しでも民主的になってくれることをひそかに期待せざるをえないからである。以上の観点から、気になる最近のトランプ・リスクを追ってみた。
資料1
トランプ氏、グリーンランド購入に再び意欲 自治政府は「売り物ではない」と反発
(英語記事 Greenland again tells Trump it is not for sale)
2024/12/24
https://www.bbc.com/japanese/articles/c3904v92zl1o
資料2
トランプ氏が記者会見、グリーンランドやパナマ運河の獲得に軍事力行使の可能性排除せず
2025/01/08
https://www.cnn.co.jp/usa/35228004.html
資料3
トランプ氏 グリーンランドめぐり“デンマークに高い関税も”
2025/01/8
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250108/k10014687361000.html
資料4
トランプ氏の「カナダを米国の51番目の州に」は関税の影響から関心そらすため カナダ首相
2025/01/10
https://www.cnn.co.jp/world/35228126.html
2) 最近気になるトランプ・リスク
A) グリーンランド購入問題
写真1 (左)気になるトランプ・リスク(NHK)と(右)トランプ氏がグリーンランドの購入を望む背景(CNN)
いくつかあるトランプ・リスク(写真1の左)でグリーンランドに関してトランプ氏は次のように記している(資料5)。「I am hearing that the people of Greenland are MAGA. My son, Don Jr. and various representatives, will be traveling there to visit some of the most magnificent areas and sights. Greenland is an incredible place, and the people will benefit tremendously if, and when, it becomes part of our nation. We will protect it, and cherish it, from a very vicious outside world. Make Greenland Great Again.(グーグルBardの訳)グリーンランドの人々がMAGA(トランプ大統領のスローガンである「Make America Great Again」)だという話を聞いています。私の息子、ドン・ジュニアと数名の代表者が、最も壮大な地域や名所を訪問するためにそこへ行く予定です。グリーンランドは素晴らしい場所であり、もし、そしていつか、それが我が国の一部となれば、人々は非常に大きな恩恵を受けるでしょう。私たちは非常に凶悪な外の世界からグリーンランドを保護し、大切にします。MAKE GREENLAND GREAT AGAIN(グリーンランドを再び偉大に)」(写真1の右)と彼の息子がグリーンランドを訪問(写真2の左)することを報告しながら、彼のスローガン「Make America Great Again」を模して「Make Greenland Great Again」を唱えている。はたして、トランプ氏が指摘する「非常に凶悪な外の世界」とは暗にロシアと中国を指しているようだが、さまざまなリスクを作り出す彼自身以外の誰のこと指すのだろうか、また歴としたG7メンバーのカナダに対しても「Make Canada Great Again」とでも思って、獲得を画策しているのだろうか。
資料5
デンマーク高官、トランプ氏は1期目よりも「はるかに本気」 グリーンランド購入めぐり
2025/01/09
https://www.cnn.co.jp/world/35228068.html
写真2 (左)グリーンランドを訪問したトランプ氏の長男ドナルド・トランプ・ジュニア氏(左から3人目;CNN)と(右)トランプ氏に反対するデンマークのフレデリクセン首相(NHK)
グリーンランド購入を画策したアメリカ大統領はトランプ氏が初めてではない。1867年、当時のジョンソン大統領はアラスカを購入した際、グリーンランドの購入も検討していた。第2次世界大戦末期にはトルーマン政権がデンマークに対し、1億ドル(現在のレートで約158億円)でのグリーンランド購入を申し出ている。いずれの場合も購入が実現することはなかったが、1951年のデンマークとの防衛協定に基づき、米国はグリーンランド北西部にチューレ空軍基地を建設した。現在ピツフィク宇宙軍基地と呼ばれるこの基地は、モスクワとニューヨークの間に位置する。米軍の拠点としては最北にあり、ミサイル警報システムが設置されている。アメリカとしては敵対的な大国がグリーンランドを管理下におけば、グリーンランドを足掛かりに米国への攻撃が可能になるから、その事態は避けたいはずだ。
また、国防の観点とともに、アメリカにとって魅力的と思われるのは、グリーンランドに眠る豊富な天然資源である。石油や天然ガスの他に、レアアースに分類される非鉄金属があり、レアアースは電気自動車や風力タービンの素材として需要が高い。世界のレアアース生産を支配する中国は、トランプ政権2期目を前にして既に輸出規制などの措置をちらつかせているので、トランプ氏と彼の顧問らがその点を懸念しているようだ。
以上のようなアメリカのトランプ次期大統領がデンマークの自治領、グリーンランドをアメリカが所有すべきだと主張したことを巡り、デンマークのフレデリクセン首相は「アメリカはわれわれの最も緊密な同盟国であり防衛と安全保障のあらゆる問題で緊密に協力したい」としながらも「グリーンランドの住民を尊重してほしい(写真2の右)。自治政府の首相が言ったとおり、グリーンランドは売り物ではない」と強調し、グリーンランドのムテ・エーエデ自治政府首相は、「グリーンランドはグリーンランドの人々のものだ」(資料6)と強く反論している。
写真3 (左)トランプ次期アメリカ大統領と(右)ドイツのショルツ首相(NHK)
アメリカのトランプ次期大統領がデンマークの自治領、グリーンランドをアメリカが所有すべきだと主張した(写真3の左)ことをめぐり、ドイツのショルツ首相は「国境の不可侵の原則はすべての国に適用される」(資料7;写真3の右))と強調しました。地元メディアは、「トランプ氏に対する警告を発した」などと伝えています。アメリカのトランプ次期大統領は1月7日、デンマークの自治領、グリーンランドについて「国家の安全保障上、必要だ」と述べ、アメリカが所有すべきだという考えを改めて示しました。こうした中、ドイツのショルツ首相は、1月8日、記者会見を開き、ヨーロッパ各国の首脳らと意見を交わしたと明らかにした上で、「最近のアメリカからの発言についてわれわれは理解しきれていない」と述べました。そして、「国境の不可侵の原則はすべての国に適用される。小国であっても、とても強力な国家であろうと従わなければならない」と強調しました。ドイツのメディアは、トランプ氏のグリーンランドやパナマ運河などを巡る発言を受けたものだとして「ショルツ氏がトランプ氏に対する警告を発した」などと伝えています。
トランプ次期大統領がデンマークの自治領、グリーンランドをアメリカが所有すべきだと主張したことについて、ブリンケン国務長官は1月8日、訪問先のフランスでの記者会見で「われわれは、同盟国を遠ざけるような言動をするのではなく緊密に協力することで、よりよい結果を得ることができる。その点で、グリーンランドをめぐる考えはよいことではない」と述べました。そのうえで「明らかに実現しないことなので、その議論に時間を費やすべきではないだろう」と批判しました。
資料6
トランプ氏、グリーンランド購入に再び意欲 自治政府は「売り物ではない」と反発
2024/12/24
https://www.bbc.com/japanese/articles/c3904v92zl1o
資料7
独首相 トランプ氏のグリーンランド発言で“国境は不可侵”
2025/01/09
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250109/k10014688491000.html
B) パナマ運河の管理問題
写真4 (左)パナマ運河の返還要求をするトランプ氏と(右)反対するパナマのムリノ大統領(YouTube)
パナマ運河は、中米にあるパナマ共和国のパナマ地峡を開削し、太平洋と大西洋側のカリブ海を結ぶ閘門式運河である。全長82キロメートル、最小幅91メートル、最大幅200メートル、深さは一番浅い場所で12.5メートルである。マゼラン海峡やドレーク海峡を回り込まず、アメリカ大陸東海岸と西海岸を海運で往来可能である。スエズ運河を拓いたレセップスが開発に着手するが、難工事とマラリアが蔓延して放棄した後、アメリカ合衆国が建設を進め、10年かけて1914年に開通した。長らくアメリカが管理したが、1999年12月31日に当時のカーター大統領の民主的な決断でパナマへ完全返還している。そのカーター氏はノーベル平和賞受賞につながった紛争解決への貢献や人権擁護の取り組みで知られ、大統領時代の環境問題への取り組みも再評価されていた。ところが、トランプ氏はパナマ運河の管理権をパナマに返還したカーター元大統領を改めて批判するとともに、パナマが法外な通航料を請求していると非難し、アメリカの管理下に戻すように主張したのである。さらに、パナマ運河の管理権の獲得(写真4の左)に向け、軍事力の行使をも排除しないという非民主的きわまる方針をも明らかにした。それに対し、パナマのホセ・ラウル・ムリノ大統領は、パナマ運河とその周辺地域はすべて自国のものだと反発し、マルティネス・アチャ外相は「運河の主権に交渉の余地はない。運河を管理するのはパナマ人のみであり、これからもそうあり続ける」(資料8;写真4の右))と述べている。
トランプ氏は中国軍の兵士がパナマ運河を稼働させていると主張するとともに、パナマが運河を通航する米国の艦船から搾取しているとの批判を繰り返し、クリスマスのメッセージの中で「皆さんにメリークリスマス。素晴らしい中国の兵士たちにも。彼らは愛情を込め、法を犯しつつパナマ運河を稼働させている(この運河は我が国が3万8000人の犠牲を出して110年前に建設したものだ)。米国はいつも『修復』の費用として数十億ドルを確実に払わせられるが、運河に関しては『一切』発言権がない」(資料8)と中国の兵士たちにも不満たらたらの苦情を述べている。
資料8
トランプ氏、駐パナマ大使にカブレラ氏 パナマ運河の管理示唆した後で選出
2024/12/26
https://www.cnn.co.jp/usa/35227713.html
C) 気になる非民主的なその他のリスク
C-1) マスク氏の政治介入
写真5 (左)イーロン・マスク氏=ロイターと(右)マスク氏の「政治介入」を巡る動き(読売)
欧州の極右や急進右派への支持を相次いで表明する米実業家イーロン・マスク氏の「政治介入」(資料9;写真5)の動きに対し、欧州各国が警戒を強めている。マスク氏は1月9日には、自身が所有するX(旧ツイッター)で、2月に総選挙を控えるドイツの急進右派政党の共同党首と対談し、全面支援を打ち出した。英首相の交代を画策しているとも伝えられている。 「ドイツ国民は、『ドイツのための選択肢(AfD)』を支持する必要がある。さもなければドイツの状況は悪化する」。マスク氏はAfDのアリス・ワイデル共同党首との対談で、同党への投票を呼びかけた。
世界一の富豪であるマスク氏は、トランプ次期米大統領に近く、移民排斥などの思想で欧州右派と気脈を通じる。独総選挙では、急進右派のポピュリスト政党AfDが、世論調査の支持率で2位につけている。マスク氏はワイデル氏を「非常に合理的で常識的」だと持ち上げた。昨年末、ドイツのショルツ首相を「無能なばか」とXで批判し、辞任を要求したのとは対照的だ。 英国でも、次期総選挙前に右派ポピュリスト政党への支持を前面に出し、党への献金も示唆している。英フィナンシャル・タイムズ紙は9日、「マスク氏がスターマー英首相の交代を画策している」と報じた。
トランプ次期米大統領の元側近のスティーブ・バノン元首席戦略官が、第2次トランプ政権で規制緩和などに取り組む大富豪のイーロン・マスク氏を「本物の悪党だ」と非難(資料10)し、マスク氏の出身国の南アフリカが過去にアパルトヘイト(人種隔離)政策をとっていたことを念頭に「南アフリカの白人は地球上で最も人種差別的な人々だ。どうして彼らが米国のことに口出しするのか」と不満を表明しつつ、「マスク氏は(大統領選でトランプ陣営に)お金を投じていたから、我慢しようと思っていたが、もう我慢ならない。南アフリカに帰るべきだ」と述べた。
資料9
マスク氏、ドイツ首相を「無能なばか」呼ばわりし欧州極右支持を次々表明…EUはX監視強化
2025/01/12
https://www.yomiuri.co.jp/world/20250111-OYT1T50018/
資料10
トランプ氏元側近がマスク氏を「本物の悪党」 外国人材巡り内紛
2025/01/14
https://mainichi.jp/articles/20250114/k00/00m/030/009000c
C-2) マスク氏のXの右傾化
写真6 ドイツの大学など一斉にXの利用停止(NHK)
イーロン・マスク氏が所有するSNSのXについて、60を超えるドイツの大学や研究機関などが10日、「公正かつ民主的な議論を促す責任を果たしていない」(資料11;写真6)と批判し、一斉に利用を停止すると発表した。Xの利用を停止すると発表したのは、60を超えるドイツ各地の大学や研究機関、それにオーストリアの一部の大学だ。発表では、Xについて「右翼ポピュリストの情報が拡散されている」などと指摘している。そして、「Xのあり方は、科学的な公正さや民主的な議論といった関係機関の基本的な価値観と相いれない」としたうえで、「公正で民主的な議論を促進する責任を果たしていない」と批判しています。Xの利用を停止すると発表した大学などのうち、ドイツのゲーテ大学フランクフルトは、個別の声明で「イーロン・マスク氏によるXの買収以降、オーナーの世界観に一致する情報が優先されるようになり、Xは建設的な意見交換の場から偽情報のための道具に変わった」とコメントしている。また、マスク氏はXを通じて、来月議会選挙を控えるドイツで移民や難民に対して排他的な主張を掲げる右派政党への投票を呼びかけ、選挙に干渉しているとの批判も上がっていて、波紋を広げている。
資料11
ドイツの大学など一斉にXの利用停止へ「価値観 相いれない」
2025/01/12
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250112/k10014691291000.html
C-3) ザッカーバーグのメタのファクトチェック廃止
メタのザッカーバーグCEOは1月7日、メタが運営するSNSのフェイスブックやインスタグラムなどで行っている第三者による投稿内容の事実確認、ファクトチェックを廃止するとした決定について、バイデン大統領は1月10日、記者団に対し、「アメリカの正義に反している。本当に恥ずべきことだと思う」(資料12;写真7の左)と述べて批判した。バイデン政権ではヘイトスピーチや偽情報の拡散を防ぐためにSNSの運営企業に対応を求めている。しかし、トランプ次期大統領はSNSでの投稿の管理などに批判的な考えで、アメリカのメディアはメタの今回の措置はトランプ氏の大統領就任を踏まえた動きだと伝えている。アメリカのIT大手メタがファクトチェックを廃止すると発表する中、OHCHR=国連人権高等弁務官事務所のターク人権高等弁務官は1月10日、SNSへの投稿で「ヘイトスピーチや有害なコンテンツをオンラインで容認すると、現実世界に影響を及ぼす。そのようなコンテンツを規制することは検閲ではない。OHCHRは、人権に沿ってデジタル空間における説明責任とガバナンスを求める」と指摘しています。
資料12
“米メタ ファクトチェック廃止 恥ずべきこと”バイデン大統領
2025/01/11
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250111/k10014690771000.html
C-4) DEIに対する反発
写真7 (左)多様性方針を廃止するメタと(右)アメリカの企業で広がる多様性(DEI)の実現を見直す動き(NHK)
DEIは「多様性(Diversity)」「公平性(Equality)」「包摂性(Inclusivity)」を意味する英語の頭文字をとったことばで、数値目標などを設けて多様な人材を集め、イノベーションなどにいかす取り組みとして注目されてきたが、このところアメリカでは見直しの動き(資料13;写真7の右)が相次いでいる。このうち、IT大手の「メタ」が多様性に配慮した採用活動などを廃止する計画だとアメリカの複数のメディアが報じ、DEIを取り巻く法律や政策の状況が変化したことが要因だとしている。また、「アマゾン」も多様性に配慮した取り組みの一部を取りやめるということだ。大手ハンバーガーチェーンの「マクドナルド」や小売大手の「ウォルマート」などもDEIについての方針を見直したことが明らかになっているが、大手IT企業にもこうした動きが波及した形だ。DEIに対しては保守層から反発の声が出ていて、アメリカのメディアは今月20日にトランプ氏が大統領に就任するのを前に、DEIに対しては保守層の反発もあり、政治的な配慮から見直しの動きが進んでいると指摘している。
資料13
米企業 多様性など実現見直す動き 大統領就任前に政治的配慮か
2025/01/12
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250112/k10014690981000.ht
3) まとめー「Make America Democratic Again」実現のためにー
写真8 (左)TOP RISKS 2025と(右)10大リスク2025年(NHK)
国際政治学者のイアン・ブレマー氏が率いるアメリカの調査会社「ユーラシア・グループ」は、恒例となっている「ことしの10大リスク」(資料14;写真8)を1月6日に発表し、最大のリスクとして「深まるGゼロ世界の混迷」をあげた。「Gゼロ」はブレマー氏が国際秩序を主導する国家が存在しない状態をさして使ってきた用語で、ブレマー氏はオンラインでの会見で、「アメリカは世界で圧倒的な強国だが、きたるトランプ政権が単独主義を志向するなか、外交政策はより取引的になり、多国間主義や国際機関、法の支配などへの支持を放棄するようになるだろう」と指摘するとともに、「ことしは冷戦初期、さらには1930年代に匹敵する地政学的に最も危険な一年になる」(資料13)と述べリーダーシップの不在による混迷に警鐘を鳴らした。一方、中国についても「より内向きになっている」と述べ、経済問題や国内の課題に専念せざるをえないという見方を示した。また2番目以降のリスクも、「トランプの支配」や「米中決裂」などトランプ氏の返り咲きに伴うものが多くを占め、それ以外ではロシアやイランの動向のほかAI=人工知能が制御できなくなることへの懸念などが10大リスクとしてあげている。トランプ氏の返り咲きに伴うものというのは、要するに、周辺の非アメリカなるものをアメリカ化し、それに囲まれていたい「裸の王様」の一人よがりの願望だろう。率直に言わせていただくと、(次期大統領に対しては失礼になるかもしれないが)、周辺諸国を怒鳴り散らし続けているトランプ氏はやんちゃ坊主的な「餓鬼(ガキ)大将」のようだ。超ワンマン体質で自分の周囲をイエスマンだけで固めようとする独裁者は、いずれ馬脚を現すだろう。道理に外れることをするその彼が「またトラ」に復活する2025年1月20日からの4年間に世界中にどのような影響をあたえるかが大いに気にかかるのである。なにせ、トランプ語録の中で「辞書の中で最も美しい言葉は『関税(Tarif)』だ。愛よりも美しい。何よりも美しい」(資料15)と「タリフ(関税)マン」を自称したトランプ氏は語っているとともに、1月14日、「関税などによって外国からもたらされるすべての歳入を徴収するために外国歳入庁を大統領に就任する1月20日に創設し、アメリカとの貿易でもうけている外国への課税を開始する」(資料16)として関税の引き上げを実行する方針を改めて強調しているので、大統領に復活後のトランプ氏、「Tarif Man」が世界各国と貿易戦争を仕かけてくるのは必定だろう。
最近表立って現れているトランプ氏が引き起こしているリスクとしては、第2章で述べた「最近気になるトランプ・リスク」で指摘しているように、グリーンランド購入問題、パナマ運河の管理問題、マスク氏の政治介入とXの右傾化、メタのファクトチェック廃止やDEIに対する反発などがあるが、1月20日にトランプ氏の第2次政権が発足してからそれらの諸問題がどのように展開するかを刮目している。パナマ運河の管理権をパナマに返還したカーター元大統領を批判しているトランプ氏であるが、彼こそカーター元大統領の民主的な政治手法を見習って、「Make America Democratic Again」政策を進めてほしいものだが、はたして、それはかなわぬ希望であろうか。
ドイツのアンゲラ・メルケル前首相が「Freiheit」(自由)と題した回顧録を出版し、そのなかで、トランプ氏の人物評について「あらゆることを不動産事業家の視点から考え、国と国も競争関係にあると考えていた。協力が多くの人に繁栄をもたらすとは信じていなかった」(資料17)と述べ、彼とは価値観が異なるので、関係構築に苦慮したことを指摘している。メルケル氏は、2005年から16年にわたってドイツの首相を務め、ギリシャを発端とするユーロ危機で強い指導力を発揮したほか、人道主義を重んじて、中東シリアからの難民危機などへの対応にもあたったヨーロッパを代表する民主的な政治家である彼女の指摘は、まさに「正鵠を射る」の諺のごとしだ。メルケル前首相が指摘する相互の協力が多くの人に繁栄をもたらす、まさに「Make America Democratic Again」になることをトランプ氏に納得してもらうとともに、「またトラ」と地球環境(資料18)で述べたように、「南太平洋の島国ツバル」や「ネパールの環境難民」などの世界中の人々に被害が発生している不条理な状況を正すことを目的として、すでに逮捕状がだされているロシアのプーチン氏やイスラエルのネタニヤフ氏、そしてミャンマーのミン・アウン・フライン司令官のケースと同様に、地球温暖化をいとわずに貿易戦争に邁進し、環境弱者に深刻な影響をさらにあたえる可能性が高いトランプ氏の「裸の王様」的な強者の論理の不当性を国際刑事裁判所などに訴える局面に来ていることを再確認するとともに、「またトラ」から「まだトラ」になることを希望したい。
資料14
「ことしの10大リスク」を発表 トランプ氏の影響も 米調査会社
2025年1月7日 17時24分
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250107/k10014686531000.html
資料15
トランプ氏語録「最も美しい言葉は関税」 経済で中国揺さぶる
2024/12/27
https://mainichi.jp/articles/20241219/k00/00m/030/037000c
資料16
トランプ次期大統領「関税徴収で外国歳入庁を創設」SNSに投稿
2025/01/15
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250115/k10014693661000.html
資料17
独メルケル前首相回顧録出版 プーチン大統領 トランプ氏を語る
2024/11/27
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241127/k10014650431000.html
資料18
「またトラ」と地球環境
https://glacierworld.net/home/trump-and-global-environment/